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イスラム教って大変? 「豚肉は食べられないけど豚は好き」な人もいます!
キャリアアドバイザー伊能ゆりなの事件簿Vol.10

生活関連

2024.12.20

これから外国人材の雇用を予定している人もそうでない人も!!

異なる人種、文化、価値観に触れる時
― 外国人って、どんな人たちなんだろう
― どんなことに気をつけたらいいんだろう
― 日本人や日本の文化をどう思ってるんだろう
などなど、不安や疑問に思うこと、ありますよね。

この記事は、実際に起きた珍事を元に、外国人雇用の現場に携わる人々の戸惑いを描き

「外国人材の皆さんと、どんなふうにコミュニケートしたらよいの?」

のヒントが隠れる、異文化理解の橋渡しを目的としたノンフィクションストーリーです。

キャリアアドバイザー伊能ゆりなの事件ファイルVol.10
イスラム教って大変?
「豚肉は食べられないけど豚は好き」な人もいます!

私、伊能ゆりなは外国人材を雇用する企業や雇用される側の外国人が抱える課題を解決、サポートする業務に携わる、いわゆるキャリアアドバイザー。日本で働きたいと願うひとりでも多くの海外の方に、負担のないクリーンな就職環境を提供できるよう日々、さまざまな業務にあたっている。

実はこれまでもメンバーとともに珍事の解明に取り組み、全国を走り回っている(これまでの珍事はこちら)からどうぞ)。

ひとえに
「外国人雇用の現場は予想だにせぬ出来事の連続である」
今日はそうした珍事をつまびらかにしながら私たちの仕事を紹介していきたいと思う。

豚なんだけど、食べる?

茨城の食品製造工場に勤務するインドネシア出身のリドさんは、敬虔(けいけん)なイスラム教徒。昼休みには会社で準備してもらった礼拝スペースで、お祈りを欠かさない。もちろん、お酒や豚肉を口にすることもない徹底ぶりだ。

今回は、そんなリドさんと企業担当者さんのほっこりエピソードからスタートしたい。



こちらの企業さんは、大手スーパーやコンビニ向けにケーキの製造も行っている。季節ものからキャラクターものまで、さまざまな種類のケーキを手掛けており、昼休憩には余ったものの中から1人1個ケーキがもらえる、文字通りおいしいシステムが用意されている。

リドさんは漏れなく甘いものが大好きで、毎日、必ず何かしらのケーキを食後のデザートにいただいているらしい。

ある日、担当者さんと同じ製造工程のメンバーで休憩に入った折、冷蔵庫の中に「くまのプーさん」「ティガー」「ピグレット」などキャラクターの形をしたケーキが並んでいたことがあった。すると、リドさんは奥の方から一目散にピンク色をしたケーキを手に取り

「キャラクターのケーキ、かわいいです。見てください!ピグレットです。ピグレット人気ないですか?いっぱい余ってますね」

目をキラキラさせるリドさんの手には、豚をモチーフにしたキャラクター「ピグレット」のケーキが…。イスラム教徒のリドさんは、外で食事をする際にも豚肉や豚のエキス(コラーゲン)が入った料理は明確に避ける。豚そのものがNGと思っていたが、キャラクターとして昇華していたら大丈夫ということなのか?


※こちらはイメージです(何のキャラクターでもございません)


「あら、リドさん。宗教で豚はダメなのに(笑)?」

「豚を食べるのはダメです。見た目が豚なのはOKです。ピグレット、かわいいんじゃないですかー!私はアニメや漫画が好きですから、クレヨンしんちゃんが好きです。『ぶりぶりざえもん』わかりますか?あの豚は、とてもパンクスタイルですね。ははは」

屈託なく笑うリドさんと、手元で小刻みにゆれる「ピグレット」のケーキ。
なるほど、そういわれてみればそのはずと合点がいく話だ。後で、ちょうどリドさんのサポート担当の宮下さんが来社されるので話してみよう。


こうして、プーさんの親友で豚のぬいぐるみの「ピグレット」は、リドさんの胃袋に収まったのだった。

イスラム教って大変そうだよね…?

なんとなく知っている気がしていたムスリムの宗教上の決まり。人によっては、意識が薄く豚骨ラーメンを楽しむシーンも見かけるが、やはり折に触れて知っておきたい互いの価値観やルール。

担当者さんの話を聞いて、イスラム教徒と豚肉(ハラムフード)について、改めて調べてみることにした。



まず、基本となるのが以下の考え方だ。
・神に許された食品、飲料、製品、物質=ハラル
・神に禁じられた食品、飲料、製品、物質=ハラム
・出どころ・由来がわからず疑わしいもの=シュブハ


イスラム教徒の聖典コーランで食べることを禁じられているものは、死肉、血、豚肉、アッラー以外の名で供えられたものとされている。よって、豚のエキス、コラーゲンが入った加工食品、調味料の類、例えばブイヨン、ゼラチン、ラードなどもNG。あわせて、お酒(アルコール)も口にしてはならず、これらは単に飲食しなければ良いというわけではなくそうした食材に触れることすらも禁止されているため、ハラムとされる食材を扱った調理器具の使用も禁忌の対象となる。そのため、信心深いムスリムはシュブハフードも避けるほか、料理の原材料だけでなく食卓に届くまでの過程も注意しているといわれている。

ところで、ムスリムが万が一、豚肉や豚由来のものを食べてしまった場合はどんな罰が与えられるのだろうか。

結論、弊社のインドネシア人スタッフに聞いてみたところ、わざとでなければ罪にはならないそうだ。

そもそもイスラム教ではこの世で唯一、アッラーだけが完全な存在であり、人間は弱く、不完全なものとされている。そのため、禁忌を破ってしまった場合「貧しい人に寄付せよ」といった対処法がコーランに記されているらしい。お酒(アルコール)も同様に、万一、飲酒をしてしまった場合はしっかりとお祈りをしたり、貧しい人に施しをしたりすることで挽回すれば良いのだそうだ。



また、ムスリムには、ラマダンという日中の飲食を絶つ月があるが、病気療養中の人や高齢者、妊婦、授乳中や月経期の女性、子ども、旅行者は断食の対象外とされている。ハラムフードのほかに食べ物がなければ、餓死するよりも禁止された食べ物を食べるほうが良いといわれることからも、信仰を深めることが生命として何らかの不都合を無理強いするものではないことがわかる。

さらに、ラマダン中は断食だけでなく、争いごとや悪口、噂話、喫煙などが禁じられている。ラマダンの目的は「富める者も貧しき者も等しく空腹や渇きの辛さを味わうことで、恵まれない人々を思いやり、日々の安寧に感謝する心を養うこと」「家族や友人、仕事仲間と辛さを共有することで一体感を持つこと」だ。部外者からみれば、一見怪しげな“信仰”も、日本人の私たちが八百万(やおよろず)の神に手を合わせ、平穏な日常への感謝(祈り)を捧げることと大差ないことがわかる。

人間は知らないからこそ不安や怯えを抱く生き物だ。異文化理解の第一歩も、相手を知ることから始まる。



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