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海外人材Times

「衛生(実利)」か「礼節(見た目)か?鼻かみのルールの違いは民族性の違いである

生活関連

2026.03.09

みなさん、こんにちは。
教えてタイムスくんのコーナーです。

「異文化理解」という一見きれいな言葉は、現場では何の役にも立たない。私たちが向き合うのは、ガイドラインには載っていない、もっと泥臭く厄介な問題ばかりだ。

今日のテーマは花粉症のこの季節にピッタリ。ぜひ、鼻水を拭き拭き……読んでみてください。

登場人物
キャリアアドバイザー「伊能あやめ」:外国人雇用に取り組む企業や雇用される側の外国人人材が抱える課題を解決・サポートする業務に携わる弊社のキャリアアドバイザー。過去に青山智香と共に解決してきた事件はこちらから。

アディさん:インドネシア出身の特定技能生

花粉症

「あやめさん…私、仕事を辞めた方がいいですか」

麗らかな春の陽気とは裏腹に、絞り出すようなその声は、重く、沈んでいた。
アディさんは特定技能の在留資格を持ち、茨城県のとある製造工場に配属されてもうすぐ3ヶ月になろうとしている。今日は月に1回の面談でアディさんの職場での仕事ぶりや寮生活の様子を確認しに来たところである。
彼は極めて優秀な人材で、何よりその誠実で明るい人柄は、配属当初、チームの雰囲気を一変させるほどの好影響を与えていたはずだった。

「どうしたのアディさん。先月の定期巡回では、あれほど『仕事も仲間も大好きで楽しい!』って言ってたじゃない。担当の黒木さんからは『アディさんは仕事覚えがいいし、ムードメーカーで助かってる』としか聞いてないわよ?」

私は努めて冷静に、かつ確信を持って問いかけた。

「うーん……?職場のみなさんが、昼休み、私を避けているように感じます。ご飯を食べている人は急いで食べて、隣の部屋に行きます。だから、私は食堂で1人になります」

ふうっとため息をつき、目をこするアディさん。

「で、アディさん自身は何か心当たりはないの?」

「うーん……。2週間ぐらい前からそういう感じあります」

「2週間前?アディさんは、そのとき何かしたの?」

「いえ、なにも。だからわからないです。リーダーの黒木さんに相談してみようと思っていましたが、あやめさんの面談でしたから一緒に黒木さんに相談したいです」

「そっか、わかった。ところで、アディさん。さっきからすごく目を擦ってるようだけど、どうしたの?」

「あ、はい。目がかゆいです。今月に入って。それで、病院に行きました。病院の先生は『花粉症だね』と言いました。初めてです、花粉症!目薬をもらいました」

「あらあら、それは大変!」

「はい、大変!そして鼻もかゆいこと、気づきました。奥がムズムズします。かゆいのは耳鼻咽喉科です。明後日、仕事休みだから行きます。鼻水が出ますね。ティッシュを持っているようにしています。呼吸が難しい!」

アディさんはおもむろにポケットからティッシュを取り出すと、思い切り鼻をかんだ。

「ふぁ……。鼻水が拭いても出てきます。あやめさん、これは薬で治るでしょうか」

「どうりで鼻先が赤いと思った!典型的な花粉症のパターンね。目がかゆい、鼻水が出る……実は、私は花粉症になったことがないから、その辛さがあまりわからないのよ」

「いいですね、あやめさん!花粉症は、花粉症になってまったら来年も、その次もずっと花粉症と聞いて絶望しました。あ、お昼ですね。目薬します!」

そう言って目薬をさし、目頭をティッシュで抑えると、そのティッシュで再び鼻をかんだ。

「絶望って(笑)ところで、アディさん。目薬はいいとして、普段からそうやって所構わず鼻水をかんでるの?」

「え?鼻?鼻水……。あ、はい、そうです。1日にティッシュがたくさん必要です。ポケットにストックいっぱいです。準備は大事!不潔ですから」

「ふーん、それはいいんだけどさ。ちょっと日本人の私たちからすると、行儀が悪いわね」

「『行儀』ですか?行儀って……何ですか」

礼節(見た目)を重んじる日本独自の鼻かみルール

私は慌てて思考を巡らせた。
“行儀”は礼節、つまりマナー。あれ?でも、私たちって『人前で鼻をかんじゃダメ』って、どこかで習ったかしら。

目の前で再び豪快に鼻をかむアディさんを見つめながら、私は確信に近い予感を得た。

そう、これはルールではない。親の躾や大人になる過程で“恥じらいの一種”として体得していった、まさに“行儀”、美しい(または下品)とされる所作の一つなのだ。

「行儀っていうのはね、マナーのこと。ルールが外側から決められた規制、守らないといけないことだとしたら、行儀はマナー、つまり内からの配慮なの。マナー違反って、規則じゃないからわかりづらいわよね」

「はい……でも、このティッシュはきちんと捨てますよ。何が行儀が悪いですか?」

「ううん、ティッシュはいいの。そうじゃなくて、アディさんは休憩室でご飯を食べている時も、今みたいに思い切り鼻をかんでいるんじゃないの?」

「はい、もちろんです。鼻水が出るのは汚いです!不潔はいけません。あと、ご飯のときはご飯の味がしませんから」

アディさんは至極真っ当な、そして彼なりの正義を口にした。

「なるほどね。アディさん、それが原因だわ」

アディさんの表情が固まる。

「えっ?鼻水ですか!?鼻をかむの、みなさんがいなくなる理由ですか?……どうして。 鼻水をグスグスすすって汚い音がするの、ずっと悪いですね」

「日本では、人前で大きな音を立てて鼻をかむ行為は、良くないことなのよ。行儀が悪い、つまりマナー違反ってこと」

「マ、マナー違反?」

「極論をいえば、日本人にとって、鼻をかむ音は排泄音のカテゴリーなのね。たとえば、人前でおならをしてるようなものかな」

「おならですか!?」

「極論よ?特に食事中や、たくさんの人がいる場所でズズズーッって大きな音を立てるのは、周りの人に不快感を与える、無作法なことだとされてるの」

私は、アディさんの前に積まれたティッシュを指差した。

「アディさんは清潔にしようとして鼻をかんでるし、鼻水が出ると呼吸もしづらいから、その行為の正当性はわかるわ。でも、そのシーンを目の前で見せられた日本人は、『汚いものを見せられた』『デリカシーがない人だ』と感じてしまうのよ。
休憩室のみんなが席を立ったのは、アディさんが嫌いとかイヤだからじゃない。あなたの鼻をかむ音が、どうしても耐えられなかったのよ」

「そんな……。僕は、少しでも清潔にしないといけないと思ってた」

アディさんはショックを隠しきれない様子で、肩を落とした。

「知らなかったです。インドネシアでは、鼻水をグスグスと鳴らしていると、死ぬほど嫌がられます。だから、なるべく鼻水は出たら拭きます」

「そうよね。たしかに、鼻水の拭き方までは私も言ってなかった。ごめんなさいね。
日本では、鼻をかみたくなったらトイレに行くのがベスト。でも、どうしても行けないこともあるから、そういう時は後ろを向いて音を立てずに拭き取る、もしくは極力音を立てないようにして鼻をかむ」

「わ、わかりました。そうか……。だから最近、電車でもみなさんが私を見るんですね。ときどき、嫌な顔をしている人がいました。謎が解けました…」

「食事中は特に厳禁よ?きっとこれで、みなさん食堂からいなくなったりしなくなると思うわ」

多くの国では、鼻をすする音(体内に留めること)こそが不潔で失礼だとされる。整理すると

海外:「汚いものはすぐに出して、きれいにするのが衛生的でマナーが良い」
日本:「汚いものを出す瞬間を人に見せるのは、相手に失礼で下品である」

という真逆のルールなのだ。“衛生(実利)”を取るか“礼節(見た目)”を取るかの違いが、日本独自の「人前での鼻かみ禁止」という風習を作り上げたのだろう。

感性の違いは正反対の結果を生む。不思議でもあり、おもしろさでもあり、トラブルの種にもなる。つまり、多文化共生は常にトラブルがつきものなのである。

#鼻かみのルール



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ストーリー中のキャリアアドバイザー青山智香がおこなう、寮の巡回を含むさまざまなサポートは【LifeSupport(外国人生活支援サービス)】によるもの。

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