いつもどこかに神様の気配を感じる、日本の祈りのカタチ
インドネシア人留学生アプリリアのニッポン見聞録Vol.44
2025.10.08
私、伊能あやめは、日本で働きたいと願うひとりでも多くの海外の方に、負担のないクリーンな就職環境を提供できるよう日々、さまざまな業務にあたっている。今回は、我が事業部にやってきたインドネシア人留学生による見聞録をお届けしたい。
インドネシア人留学生アプリリアのニッポン見聞録
いつもどこかに神様の気配を感じる、日本の祈りのカタチ

弊社では、インドネシアの名門校であり最も歴史ある日本語教育機関でもある国立パジャジャラン大学日本語学科より、インターン生を受け入れることとなった。学生らは将来、日本での就職を希望している。一方で、企業が海外の優秀な大学生を新卒で採用するメリットは、将来有望なASEAN市場に精通した人材を早期に確保できる点にある。彼、彼女らは高い学習意欲と多言語対応力を持ち、日本文化への理解も深く、異文化環境にも柔軟に対応できるため、グローバル展開を目指す企業にとっては、コストパフォーマンスに優れた戦略的な人材となる。
また、弊社で新たに開発した外国人材採用プラットフォームMintoku messeでは、そうした優秀な新卒の外国人材を求人を出すだけで現地に出向かず採用できる。
Mintoku messeは、ベトナム・インドネシアを中心としたアジアのトップ大学と提携し、
企業と海外人材をつなぐ採用プラットフォームです。日本語力や専門性を備えた理系・文系の学生と、現地に行かずに出会える仕組みを構築。提携大学内での就職相談会やマッチングイベントをMintokuが代行し、企業は求人情報を提供するだけで優秀な人材の確保が可能です。さらに、採用後の住居手配や生活サポートも一貫して対応。
“採って終わり”ではなく、定着と活躍まで見据えたグローバル採用を実現します。
部署間を越え、既にSNSマーケティング部門にて即戦力として活躍中の2人。改めて、今日はアプリリア ヌルマウリさん(以下、アプリリアさん)の見聞録をお届けする。
祠のある街
オフィスを出ると、ふと肌にあたる風が涼しくなったように感じた。夏の終わり。日差しの中に、かすかな秋の匂いが混じり始めている。

しばらく歩いているとパタパタと足音がして私を呼ぶ声がする。
「あやめさんー!お疲れ様です。今から外出ですか?」
振り向くとインドネシアからのインターン生、アプリリアさんがいた。
「そうそう。お昼を食べてからそのまま打ち合わせで。どうしたの?」
「私はちょっとそこの100均にいました。こちら側には古い建物もいっぱいありますね。ちょっと散策してしまいました」
「そうね。その先、曲がったらお墓だもんね」
私は立ち止まり、歩道の端で彼女と並んだ。そこには小さな祠があった。
「あ!これは祠というものですか?実は、前から気になっていました。小さいけど、ちゃんと花や水、塩など供えてあって……こういうの、日本でよく見ます」
「うん。神道の祠ね。土地の神様とかをおまつりしているの。あまり適切な言葉じゃないかもしれないけれど…神社のミニチュア版、みたいな感じかな」
アプリリアさんはうなずきながら、何かを思い出すように視線を遠くにやった。
「日本は、いろんな場所に神様がいるんですね。道の角とか、ビルの入口とか、公園のすみとか……初めて見たとき、ちょっとびっくりしました」
「そうかもね。あまりに日常の風景すぎて、私は気にしたことなかったけど……外国から見たら、不思議かも」
「はい。でも、不思議ですが、日本らしいと思います。魅力的という方が近いですね!この前、出かけたときに、これ撮りました。近くに住んでいる人はいませんが、山の奥にも祠がありますね」

そう言って、アプリリアさんは写真を見せてくれた。
「ふふふ。そうね。どなたかが管理されているんでしょうね。さすがに暑いからお花は枯れかかってるけど…。
そういえば、アプリリアさんはもうお昼ご飯食べた?まだなら一緒にどう?」
「あ、はい。ちょうどそう思っていましたから、行きます!」
私たちは、斜向かいにあるカフェに入った。
祈りのカタチ
店内は割と空いていた。
私はサラダとサンドイッチのセットにコーヒー、ムスリムであるアプリリアさんはシンプルなサラダとパスタを注文し、店の奥の静かな席に着座した。
彼女は誰にも強要はしないが、自分の中でしっかりと筋を通している。使われている食材や調理法に気をつけているようで、日頃はお弁当を作ってくるか、ハラルフードのあるお店に行くことが多い。一緒に仕事をしていて支障を来すこと、大きな違いを感じることはないが、自分と違う習慣があればやはりなんとなく観察してしまう。

「実は……」
アプリリアさんがふと切り出した。
「祠とか、神棚とか、日本に来て色々な神様の居場所を見ました。最初は驚きましたが、だんだん親しみを感じるようになりました」
「親しみ…か、なるほど。たとえば?」
「バリ島にも似たような風景があります。お店の前に花を供えていたり、家の敷地に小さな祠があってお香をたいていたり。ヒンドゥーの習慣です」
「うんうん、聞いたことあるよ。バリ島はそうだよね?」
「はい。でも、私の育った島はイスラム教が中心です。だから偶像や祠はありません。でも、モスクがありますし、祈る時間はみんなが自然と手を止めますから、感じることはあります」
「“神様の気配”ってことだね」
「そうです!神様の形は違っても、“ここに何かがある”って感じる場所?空間?がありますね。私は、そこにとても興味があります」
彼女は少しだけ照れたように微笑んだ。

お腹を満たして駅に向かう道すがら、私たちは神社の前を通りかかった。石造の鳥居と木のぬくもりを残す社殿が見える。公園へとつながるその神社には数名の人影があり、通りすがりと思しきサラリーマンが手を合わせていた。
「あやめさん。日本の神様って、何人いるんですか?」
突然の質問に、私は笑ってしまった。
「八百万って言うものね。でもそれって神様の数、というより“どこにでも神様はいる”っていう考え方の話だからね」
「木とか、川とか、山とか……?」
「そうそう。よく知ってるね!それぞれに神様が宿ってるって考えるの。自然に感謝したり、畏れたりして、昔から…ずっとそうやって共に生きてきたんだと思う」
アプリリアさんは深くうなずいた。
「インドネシアも、そうだったと思います。今は宗教が分かれています。信じる神様も違いますが、“祈る”心はあります。“目に見えないものを敬う心”もあると思います」

文化は、見えないルールや習慣の積み重ね。
だけど、そこには人の心がある。
祠の前で静かに手を合わせる人も、モスクに向かって頭を垂れる人も、そこにあるのはたぶん同じように神や自然への敬意なのだ。
「じゃ、私はあっちだから」
「はい、あやめさん。気をつけて行ってください。無事に帰るように祈ってます」
「アプリリアさんも、そこから先は車も多いし気をつけて会社に戻ってね。私も無事を祈ってますよ
終
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