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1日数千人。数十秒の対面で何を見ているのか ―空港入国審査室にて
キャリアアドバイザー伊能あやめの事件簿Vol.41

生活関連

2025.08.15

これから外国人材の雇用を予定している人もそうでない人も!!

異なる人種、文化、価値観に触れる時
― 外国人って、どんな人たちなんだろう
― どんなことに気をつけたらいいんだろう
― 日本人や日本の文化をどう思ってるんだろう
などなど、不安や疑問に思うこと、ありますよね。

この記事は、実際に起きた珍事を元に、外国人雇用の現場に携わる人々の戸惑いを描き

「外国人材の皆さんと、どんなふうにコミュニケートしたらよいの?」

のヒントが隠れる、異文化理解の橋渡しを目的としたノンフィクションストーリーです。

キャリアアドバイザー伊能あやめの事件ファイルVol.41
1日数千人。数十秒の対面で何を見ているのか ―空港入国審査室にて

今日は元入管職員であるB氏から聞いたおはなし。



とある空港に勤務していた当時、B氏(以降、私)たちは毎日数千人の入国希望者と向き合っていた。

1人にかけられる時間は、10秒から長くても30秒。だがその数十秒の間に、私たち入国審査官は以下を瞬時に見抜く必要がある。

  ● パスポートやビザの真正性

  ● 顔写真との一致と表情のわずかな違和感

  ● 受け答えの内容と口調の整合性

  ● 手荷物と申告内容の矛盾


判断を誤れば、制度の信頼を揺るがす結果となる。だからこそ、審査官は常に緊張感を持って対応しなければならないのだ。

現場は時に修羅場と化す

その日、私はいつも通り、空港の入国審査ブースに立っていた。

午後2時。中国からの便が到着し、入国希望者たちが次々と列に並ぶ中で、30代半ばと思しき中国人男性が現れた。パスポートを差し出しながら「観光です」と淡々と答えている。

装いはラフな私服。手荷物は割とコンパクトにまとめられている。だが、彼の瞳はどこか違和感があった。視線が合うたびに、一瞬だけ目が泳ぐこの感じ…。

私は彼のパスポートに目を落とした。

……!?

入国と出国の履歴が、あまりに整いすぎている。

「観光」と告げたこの男は、3ヶ月未満の滞在を繰り返しているではないか!いわゆる“ビザラン”――観光ビザを繰り返して日本に滞在し続ける手法の典型だ。

彼をこのまま通すわけにはいかない。

私は、通訳を介して詳細を確認することにした。


「ちょっと、すみません。今回の滞在では、どこに宿泊予定ですか?」

男性は驚いたように私を見つめ、何か言いたげだが返事はない。

「観光とおっしゃっていましたが、過去の来日時も観光目的でしたか?」

「今回の滞在期間と、帰国予定日はいつですか?」

私の立て続けに投げかけた質問を、通訳が柔らかく重ねて問いかけていく。その間、男性の表情はみるみるうちに険しくなっていった。



そうして私の質問が4つ目に入った時、突然、男性が声を荒げた。

「なんでお前はそんなに聞いてくるんだ!俺は観光と言ってるだろう!わからないのか!」

さらに、通訳の女性に向かって言い放った。

「黙れ、バカ女!」

その場の空気が一気に凍りついた。女性通訳は毅然とした態度で相対しているが、この男が彼女に暴力をふるう可能性もないとは言い切れない。

慌てて私がインターホンで応援を呼ぼうとすると、男性は怒りの矛先を変え、手にしていた煙草の箱を力任せにこちらに投げつけた。

目標ははっきりしていなかったのかもしれない。だが、その箱は私の隣にいた上司に直撃し、そのままぽとりと足元に転がった。

なんて横暴なヤツ…!でも……。

きっとここにいる全ての職員が同じ感情を抱いているはずだ。カッと怒りの感情が込み上げつつも、同時にこういう場面こそ冷静に対処せねばならないという職責に対する思考が交錯する。

「お、おい!火がついてるぞ!!」

ふと見上げると、上司の前髪の一部が縮れ、細い煙を上げ焼け焦げていた。どうやら、彼は吸っていた煙草ごと上司目掛けて投げつけたようだ。

列に並んでいた他の旅行者たちも動揺し、その場は一時騒然となったが、すぐに警備と空港警察が走り込んできて、その男性は取り押さえられた。

「痛い!何するんだ!!おい、バカ女。逃げるな、こっちに来い!…おいっ……」

地面に押さえつけられてもなお、暴言を吐く男性。しかし、誰がどう見ても、法に照らし合わせても、この男性に落ち度があることは明白だ。

こうして騒動にはなったものの、私たちは不法入国、滞在を未然に防ぐことができたのだった。

入国審査が厳格である理由

さて、これまでのストーリーからもわかるように、入国審査は厳格に行われている。

これほどまでに厳しい理由は、一つの判断が誰かの人生や国の行く末に大きく関わるからだ。

入国審査では、観光と偽って就労目的で入国する者もいれば、過去の強制退去歴を隠して入国しようとする者もいる。性善説だけでは制度は守れない。私たちは「疑い」ではなく「事実の確認」を徹底し、制度の信頼性を担保する必要がある



また、入国審査官は、単なる受付係ではない。私たちは“国境の番人”として、国家の安全と信頼を守る最後の砦なのだ。その判断は、時に入国希望者の人生を左右し、企業活動、そして国の治安にも直結する。感情や印象に流されることなく、事実だけを見て、必要な時には毅然と「NO」を突きつけなければならない。これこそが審査官の使命であり、誇りなのである。

多文化共生が叫ばれて久しい昨今、私たちは何を守り、どう共生するのか。自分ごととして捉え、日本の未来、子どもたちのために正しい判断を下していかねばならない。






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