強制送還とは?退去強制と出国命令の違い・再入国の条件を解説
2026.02.17
強制送還とは、日本に在留する外国人が入管法違反などを理由に、日本から退去させられる行政処分です。在留期限切れや就労ルール違反といった身近な違反をきっかけに発生することもあり、外国人材を雇用する企業にとっては、企業側の法的リスクにつながる点にも注意が必要です。
本記事では、制度の違いと主な原因、手続きの流れを整理し、企業が押さえておくべき在留資格管理のポイントを解説します。
CONTENTS
- 1. 強制送還とは?退去強制と出国命令の違い・再入国の条件
- 2. 強制送還の対象となる3つの理由
- 3. 強制送還の具体的な流れ
- 4. 強制送還にかかる費用は誰が負担するのか
- 5. 強制送還を回避し日本にとどまる「在留特別許可」とは
- 6. 外国人材を採用する企業が知っておくべき強制送還の防止策
- 7. 強制送還に関するよくある質問(Q&A)
- 8.まとめ:強制送還のリスクを正しく理解し適切な対応を
1. 強制送還とは?退去強制と出国命令の違い・再入国の条件
「強制送還」という言葉は、一般的には広く使われますが、法律用語としての定義はありません。出入国管理及び難民認定法(入管法)上では、主に 「退去強制」 と 「出国命令」 の2つの制度があり、これらをまとめて「強制送還」と呼ぶことが多いのです。
基本的に、在留資格がある外国人が入管法違反を犯した場合は 退去強制 が適用されますが、一定の条件を満たすと 出国命令 が適用され、処分の軽減が図られる仕組みです。
この違いは、再入国の可否や期間(上陸拒否期間)に大きく影響するため、外国人材を雇用する企業にとっても理解しておくべき重要なポイントです。
1.1 退去強制:原則5年〜10年は再入国不可
退去強制は、入管法違反に対する原則的な行政処分です。
不法滞在や不法就労、犯罪などが発覚すると、入国者収容所や地方出入国在留管理局の施設に収容され、国外へ強制退去させられます。
再入国の禁止期間(上陸拒否期間)は、原則 5年 ですが、過去に退去強制を受けたことがある場合は 10年 に延長されます。
また、薬物事犯や懲役1年以上の実刑判決を受けた場合などは、上陸拒否期間が 無期限 となるケースもあります。
1.2 出国命令:身柄拘束なし・1年後に再入国が可能
出国命令は、退去強制の例外的な措置であり、違反者が 自発的に申告し、速やかに出国する意思がある と認められる場合に適用されます。この制度の特徴は、入管施設への収容が行われず、比較的軽い処分である点です。上陸拒否期間は 1年 で、期間経過後は通常の査証申請が可能になります。
ただし、出国命令の適用には以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。
- ● 速やかに出国する意思を持って自ら入管に出頭したこと
- ● 不法残留以外の退去強制事由(不法入国や薬物犯罪など)に該当しないこと
- ● 日本に入国後に懲役や拘禁刑(執行猶予含む)を受けていないこと
- ● 過去に強制送還(退去強制・出国命令)の履歴がないこと
- ● 速やかに日本から出国することが確実と見込まれること(航空券の確保など)
出国命令は、違反の深刻度や状況により適用が決まるため、企業側が安易に判断できるものではありません。

2. 強制送還の対象となる3つの理由
入管法第24条には20以上の退去強制事由が定められています。ここでは、特に企業の採用現場で問題になりやすい代表的な理由を3つ解説します。一度でも対象行為を行えば、在留資格の有効期限内であっても処分の対象になります。
2.1 不法滞在・不法入国(オーバーステイなど)
在留期限を過ぎて滞在し続ける「オーバーステイ」は、退去強制の代表的な理由です。
偽造パスポートの使用や密入国など、正規の上陸許可を受けずに入国する「不法入国・不法上陸」も即座に退去強制の対象になります。
在留資格の更新申請を忘れてしまった場合でも、法的には不法滞在として扱われるため注意が必要です。
オーバーステイについてはこちらの記事をご参照ください。
オーバーステイとは? 罰則や再入国の条件、在留特別許可を解説
2.2 不法就労・資格外活動違反(偽造カード・制限超過)
就労が認められていない在留資格(短期滞在など)で働くことや、許可された範囲を超えて働くことは違法です。留学生が「週28時間」の上限を超えてアルバイトをした場合も、資格外活動許可違反となり強制送還の対象になります。
また、在留カードを偽造して就労する行為は、不法就労だけでなく公文書偽造などの刑事罰も加算される重罪です。
不法就労についてはこちらの記事をご参照ください。
不法就労とは?不法就労助長罪から会社を守る3つの対策を解説
2.3 刑罰法令違反(薬物・売春・懲役1年以上の実刑など)
薬物取締法違反(覚醒剤、大麻など)で有罪判決を受けた場合は、執行猶予の有無に関わらず退去強制の対象となります。
売春防止法違反に関しては、有罪判決が確定していなくても「売春に直接関係する業務に従事した」事実だけで強制送還されることがあります。
また、窃盗や傷害などで「懲役1年以上の実刑判決」を受けた場合も、刑期終了後に日本から退去させられる可能性が高いようです。
このように強制送還は、在留資格の有無に関わらず、外国人材の雇用や管理に重大な影響を及ぼします。特に、不法就労やオーバーステイ、犯罪行為は企業側にもコンプライアンスリスクが波及するため、採用・管理体制の整備が必要です。

3. 強制送還の具体的な流れ
強制送還のプロセスは、対象となる外国人が 出国命令の要件を満たすかどうか によって、大きく流れや期間が変わります。退去強制の場合は原則として収容が伴い、手続きが長期化することが多い一方、出国命令の場合は収容されずに帰国準備を進めることが可能です。
どちらのルートになるか不明な場合でも、まずは 入管業務に詳しい弁護士や行政書士に相談のうえで入管に出頭する ことが重要です。
早期の対応が、結果として不利益な処分を避ける鍵となります。
3.1 退去強制の流れ
退去強制の対象となった場合、違反の疑いがある外国人は原則として 処分が決定するまで入管施設に収容 されます。
その後、行政上の適正な処分を保障するため、3段階の審査制度が設けられています。
- 1. 入国審査官による審査
- 2. 本人が不服の場合は 特別審理官による口頭審理
- 3. さらに不服がある場合は 法務大臣への異議申出
本人が違反を認めた場合は、その段階で審査が終了し退去強制が決定します。
最終的に法務大臣の決裁により 退去強制令書 が発付されると、速やかに日本国外へ送還されます。このプロセスは、期間が長期化しやすく、企業側の人材計画にも大きな影響を与えます。
3.2 出国命令の流れ
出国命令は、退去強制の例外的な制度であり、違反者が 自ら入管に出頭し、出国命令制度の利用を申告 することから始まります。
その後、入国警備官と入国審査官による違反調査・審査が行われますが、逃亡の恐れがない限り 身柄は拘束されません。
審査により要件を満たすと認定されれば、15日以内の出国期限 が定められた出国命令書が交付されます。
出国命令書は即日交付される場合もあれば、後日交付される場合もあります。
指定された期限内に、自費で確保した航空券などを利用し、空港から通常の出国審査を経て帰国します。

4. 強制送還にかかる費用は誰が負担するのか
強制送還にかかる航空券代などの費用は、誰が負担するのか法律で優先順位が決められています。費用負担の解決が長引けば、その分だけ収容期間が長期化するリスクがあるため、迅速な対応が求められます。
4.1 原則は本人負担(自費出国)
強制送還に要する費用は、原則として 本人(外国人自身)が負担 しなければなりません。
本人の所持金が不足している場合は、親族や知人などが費用を立て替えることが一般的です。ただし、資金不足のまま放置すると、出国が遅れ収容期間が長引くリスクがあります。
4.2 雇用主や運送業者が負担するケース
不法就労をさせていた事業主や、不法就労のあっせんを行ったブローカーに対して、送還費用の負担が命じられる場合があります。また、上陸拒否事由があることを知りながら日本へ輸送した航空会社や船会社も、送り返す義務と費用負担を負う可能性があります。
企業がコンプライアンス違反を犯していた場合、社会的制裁に加えて 経済的なペナルティ が発生し得るため、採用・管理体制の整備が不可欠です。
4.3 国費送還(税金負担)となる条件とリスク
本人に資金力がなく、関係者や雇用主などの負担も期待できない場合に限り、国費(税金)での送還 が行われます。しかし、国費で送還となった場合は、将来もし再入国が可能になったとしても、過去の送還費用を完済するまで入国は許可されないというリスクがあります。国費負担はあくまで例外的な措置であり、基本的には本人負担が原則です。

5. 強制送還を回避し日本にとどまる「在留特別許可」とは
退去強制事由に該当していても、法務大臣の裁量により例外的に日本への在留が認められる制度が 在留特別許可 です。これは、申請して取得するものではなく、退去強制手続きの中で異議を申し立てた結果として与えられるもので、希望する場合は早急に弁護士や行政書士へ相談する必要があります。
在留特別許可が認められる可能性があるのは、例えば以下のような事情がある場合です。
- ● 日本人との婚姻関係がある
- ● 日本で育った実子の養育が必要である
- ● 人道的な配慮が必要と認められる特別な事情がある
ただし、在留特別許可は例外措置であり、必ず認められるものではありません。
手続きや証拠の準備に専門的な知識が必要なため、早期に専門家へ相談することが重要です。

6. 外国人材を採用する企業が知っておくべき強制送還の防止策
強制送還の原因となるルール違反は、「知らなかった」では済まされません。
企業が外国人材を雇用する場合、日頃からの 在留資格管理(コンプライアンス) が必要です。もし雇用した外国人が不法就労で強制送還されると、企業側も 不法就労助長罪 に問われるリスクがあります。
そのため、採用後も含めた厳格なチェック体制を整えることが、企業に求められています。
不法就労助長罪について詳しくはこちらの記事をご参照ください。
不法就労助長罪で初犯ならどうなる?罰則と対応策を解説
6.1 在留カードの有効期限と就労制限の確認徹底
まず、企業が最低限守るべきことは、在留カードの原本確認です。
在留カード表面の「在留期間(満了日)」を定期的に確認し、更新手続きを 3カ月前から準備 することが重要です。
更新申請をせずに期限を1日でも過ぎてしまうと、不法残留(オーバーステイ) となり、即座に退去強制の対象となります。
また、在留カード表面の「就労制限の有無」欄も必ず確認し、就労不可のビザで働かせたり、許可された範囲外の業務に従事させたりしないようにする必要があります。
企業は雇用時だけでなく、定期的に在留カードの原本確認を行うフローを確立すべきです。
参考:在留カードとは?番号確認・偽造対策・見方をわかりやすく
外国人の在留資格とは?種類一覧・ビザとの違い・就労可否を解説
6.2 資格外活動許可(週28時間以内の就労)の厳守
留学生や家族滞在の外国人を雇用する場合、在留カード裏面の「資格外活動許可欄」に許可の記載があるかを必ず確認する必要があります。許可がないまま働かせると、不法就労(資格外活動許可違反)として退去強制の対象になります。また、資格外活動許可を得ていても、働ける時間には上限があり、原則として 「週28時間以内」 が法定上限です。この時間は、複数のアルバイトを含めた合算時間であり、超過すれば不法就労となります。
不法就労は退去強制やビザ更新不許可の原因になるため、企業は従業員の勤務時間を把握し、適切に管理する必要があります。
家族滞在ビザについてはこちらの記事をご参照ください。
家族滞在ビザで就労は可能?取得条件や申請方法や注意点などを解説
6.3 住所変更届出の徹底と現住所の確認
在留カードを持つ従業員が引越しをした場合、住居地の変更届出は法律で 「14日以内」 と定められています。遅れると罰金の対象となり、さらに正当な理由なく 90日以上届出を放置すると、在留資格そのものが取り消され、退去強制の対象となる可能性があります。
また、虚偽の住所を届け出た場合も即座に在留資格取り消しの対象となるため、企業は従業員の住所地が実際の居住地と合っているかを定期的に確認する必要があります。

7. 強制送還に関するよくある質問(Q&A)
強制送還については、法律や手続きの仕組みだけでは理解しにくい疑問が多くあります。
ここでは、日本人配偶者の有無や上陸拒否期間、収容中の扱い、難民申請中の送還など、強制送還に関してよくある疑問をQ&A形式で整理して解説します。
7.1 Q1. 日本人の配偶者がいれば強制送還されませんか?
日本人と結婚していても、退去強制事由に該当すれば強制送還の対象となります。ただし、婚姻の実態(同居、生計維持など)が認められれば、在留特別許可によって救済される可能性は残されています。結婚していれば自動的に許されるわけではなく、厳格な審査を経て許可を得る必要があります。
7.2 Q2. 上陸拒否期間が過ぎれば、確実に日本に入国できますか?
上陸拒否期間が経過しても、自動的に入国が許可されるわけではありません。過去に強制送還された記録は永久に残るため、通常のビザ審査よりも厳格にチェックされることが多いようです。「拒否期間の終了」はあくまで「申請ができるようになる」だけであり、許可のハードルは依然として高い点に注意が必要です。
7.3 Q3. 入管への収容中に一時的に外に出ることはできますか?
健康上の理由や人道的な配慮が必要な場合、収容を一時的に解く「仮放免」という制度があります。仮放免が認められても、就労は一切禁止され、移動範囲の制限や定期的な出頭義務が課されます。仮放免はあくまで一時的な措置であり、強制送還の処分自体が消えるわけではありません。
7.4 Q4. 難民申請中でも強制送還されますか?
これまでは難民申請中は一律に送還が停止されていましたが、令和5年の入管法改正(令和6年施行)によりルールが変更されました。3回目以降の難民申請者や、3年以上の実刑を受けた者などは、難民申請中であっても送還が可能となっています。
7.5 Q5.「不法滞在者ゼロプラン」とは何ですか?
出入国在留管理庁が掲げる、不法滞在者を撲滅するための方針と施策のことです。摘発の強化、入国審査の厳格化、送還忌避者への対応強化などが盛り込まれています。今後さらに取り締まりが厳しくなるため、違反状態にある外国人は一刻も早い自主的な出頭が推奨されます。
8.まとめ:強制送還のリスクを正しく理解し適切な対応を
強制送還は、原則として5年〜10年の上陸拒否が課される、極めて重い処分です。退去強制になるか、出国命令で済むかは、摘発される前に本人が自発的に行動できるかどうかで大きく変わります。特に不法滞在や不法就労は、在留資格が有効であっても一度でも違反すれば対象となり、企業側も不法就労助長罪などのリスクを負うため、対策が不可欠です。
外国人材を採用する企業は、本人任せにせず、在留カードの有効期限や就労制限の確認、資格外活動の遵守、住所変更届出などを定期的にチェックする体制を整えることが重要です。これにより、強制送還のリスクを未然に防ぎ、企業と外国人材双方にとって安心できる雇用環境を構築できます。
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