ベトナム人が日本で働く理由とは?採用のメリットと注意点を解説
2025.07.29
近年、日本の街中や職場でベトナム人の方々を見かける機会が急速に増えました。厚生労働省の統計でも、日本で働く外国人労働者の国籍別でベトナムはトップクラスの人数を誇ります。なぜこれほど多くのベトナム人が、働き先として日本を選ぶのでしょうか?この記事では、ベトナム人が日本で働く理由を、経済的背景、文化的親近感、キャリア志向など多角的な視点から深掘りします。また、企業がベトナム人材を採用するメリットや、知っておくべき国民性、コミュニケーションの注意点、最新の在留資格制度(育成就労・特定技能)の動向についても解説。ベトナム人材の採用を成功させ、共に成長していくためのヒントを提供します。
CONTENTS
1. データで見る:なぜ今、日本で働くベトナム人が多いのか?
「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)によれば、日本国内で働く外国人労働者の中で、ベトナム人は最も多い国籍となっています。

前述したように、国籍別の在留者数では、ベトナム人が最も多く、518,364人で全体の25.3%を占めています。続いて中国人が397,918人(19.4%)、フィリピン人が226,846人(11.1%)となっています。在留資格別の前年同期比増加率を見ると、「専門的・技術的分野の在留資格」が24.2%増加し、「技能実習」も20.2%増加しています。また、「資格外活動」も6.5%増加、「身分に基づく在留資格」も3.5%増加しています。一方で、「特定活動」は2.3%減少しました。
かつて日本で最も多かった外国人労働者の国籍は中国でしたが、2020年以降、ベトナムが毎年トップの座を更新しており、ベトナム人労働者のうち約40%は技能実習の在留資格で日本に滞在しています。また、ベトナム国内では製造業に従事する外国人労働者が最も多く、全体の38.8%を占めています。
このような増加の背景には、ベトナム政府の積極的な送出政策や、日本の受け入れ拡大、特定技能制度の導入などが挙げられます。
2. ベトナム人が日本を目指す「5つの動機」を徹底分析
ここで、ベトナム人が日本で働くことを選択する多様な理由を以下にまとめます。
動機①:経済的魅力(より高い収入を求めて)
日本とベトナムの間には明確な賃金格差があり、日本で働くことで大幅に高い収入が得られます。特に「家族に仕送りをする」という文化的背景が強く、収入の差が大きな動機となっています。ただし、近年のベトナム経済成長に伴い国内賃金が上昇し、また円安も影響して、日本で働く魅力に変化が生じています。
動機②:キャリア形成とスキル習得
日本の製造業や建設、IT、介護など高度な技術や専門知識を学びたいという強い意欲があります。日本での就労経験を通じてスキルを磨き、帰国後はそれを活かしてキャリアアップやベトナム国内の日系企業就職を目指すケースも多く見られます。
動機③:日本へのポジティブなイメージ
歴史的な経済協力や文化交流を背景に、親日感情が根強く存在します。また、日本製品(バイクや家電など)への信頼感が高く、アニメや漫画などのポップカルチャーも日本への関心を高める要因です。
動機④:安全で快適な生活環境
日本の治安の良さや社会インフラの整備(交通、医療)が高く評価されています。特に家族帯同を考える層にとって、教育環境や社会保障制度への期待も大きな魅力となっています。
動機⑤:地理的・情報的アクセス
欧米諸国と比べて地理的に近いことが利点です。また、すでに日本で働く知人・友人の口コミや、留学・技能実習を経験した人々の情報が、現地での理解や信頼を促進し、日本を目指す動機を後押ししています。

3. ベトナム人材の強み:国民性と仕事への姿勢
ここでは、ベトナム人の一般的な気質や仕事観を示し、採用やマネジメントに生かすヒントを解説します。
国民性・特徴
ベトナム人は勤勉で真面目な性格が多く、困難にも忍耐強く対応します。手先が器用で細かい作業を得意とし、精密な作業に強みがあります。学習意欲が高く、自己成長やスキル向上に積極的に取り組む傾向が強いです。また、家族や仲間を非常に大切にする文化が根付いており、協調性や助け合いの精神を重んじます。
プライドと感情面
自尊心が強く、人前での叱責や批判を嫌う傾向があるため、指導やフィードバックは配慮を持って行うことが望ましいでしょう。
仕事に対する価値観
キャリアアップを強く志向し、長期的な成長を目指す姿勢が見られます。チームワークを重視し、協力して仕事を進めることを好みます。指示は具体的で明確な方が理解しやすく、曖昧な指示は混乱の原因となることがあります。
コミュニケーションの特徴
ベトナム人は比較的直接的な表現を用いることが多く、日本の報告・連絡・相談(報連相)の文化とは異なる場合があります。コミュニケーションの際にはこの違いを理解し、丁寧かつ明確な伝え方を心がけることが大切です。
仕事に対する価値観
ベトナム人の仕事に対する価値観としては、キャリアアップへの強い意欲が挙げられます。多くは自身の成長やスキル向上を重視し、長期的な視点で職務に取り組む姿勢が特徴です。また、チームワークを大切にし、仲間と協力して目標達成を目指す傾向が強いようです。そのため、職場での連携や支援体制を整えることがモチベーション維持に効果的です。指示に関しては、漠然としたものよりも具体的で明確な指示を好むため、期待される業務内容や目標をはっきり伝えるようにしましょう。
コミュニケーション上の留意点
コミュニケーション面では、ベトナム人は比較的直接的な言い方をすることが多く、日本の「報連相」(報告・連絡・相談)の文化とは異なる側面があります。彼らは必要と感じた時に情報を伝える傾向が強いため、細かい報告や事前相談を求める場合は、その理由や重要性を丁寧に説明し、習慣として根付かせる支援が必要です。これにより誤解やすれ違いを減らし、円滑なコミュニケーションが促進されます。

4. 企業にとってのベトナム人採用メリット
ここでは、企業がベトナム人材を受け入れるメリットについて解説します。
メリット1:若く意欲的な労働力の確保
日本では少子高齢化により若年労働力が不足している中、ベトナムからの若くて意欲的な人材を採用することで、企業は活力ある労働力を確保できます。彼らは成長意欲が高く、長期的な戦力として期待できます。
メリット2:特定分野での高い適性
ベトナム人は、製造業における細かい作業の正確さや、IT分野での高い学習能力、さらには介護分野におけるホスピタリティ精神が評価されることが多く、特定分野での即戦力として活躍する可能性があります。
メリット3:組織の多様化と活性化
多国籍の人材が加わることで、組織内に新しい視点や発想がもたらされ、業務の効率化やイノベーション促進につながるなど、組織全体の活性化が期待できます。
メリット4:比較的スムーズな適応への期待
ベトナム人は親日的な感情を持ち、勤勉で責任感が強い傾向があるため、日本の職場文化や生活環境に比較的早く馴染むことが期待されます。これにより、定着率の向上や早期戦力化が見込まれます。
メリット5:将来的なベトナム市場展開への布石
ベトナム語を話す人材を確保することで、将来的なベトナム進出や現地ビジネス展開において大きな強みとなります。現地の文化や商習慣の理解促進にもつながり、海外事業の成功確率を高めます。

5. 採用・受け入れ成功の鍵:企業が注意すべき7つのポイント
続いて、ベトナム人材の受け入れを成功させ、定着・活躍を促すための具体的な注意点と対策について解説します。
ポイント1:明確で具体的なコミュニケーション
日本の「察する文化」は通用しづらいため、指示は曖昧にせず具体的に伝えましょう。また、報告・連絡・相談(報連相)を丁寧に促すことで、誤解やトラブルを防止できます。
ポイント2:日本語学習のサポート
入社後も継続的に日本語を学べる環境を整備することが重要です。研修の実施や教材提供、学習費用の補助などが効果的です。また、職場でやさしい日本語を使う工夫も、コミュニケーション円滑化に役立ちます。
ポイント3:文化・習慣への理解と配慮
ベトナム人の家族優先の価値観や人前での指導に対する感受性、食事の嗜好や宗教的背景(少数派の場合もある)などに配慮することで、安心して働ける環境が整います。
ポイント4:公正な待遇と福利厚生
「同一労働同一賃金」を徹底し、日本人社員と公平な待遇を提供することが基本です。加えて、家賃補助や寮の提供など充実した福利厚生は、採用の魅力アップや定着率向上につながります。
ポイント5:明確なキャリアパスの提示
向上心の強いベトナム人材には、資格取得支援や昇進制度など具体的なキャリアアップの道筋を示すことが重要です。目標設定を支援し、成長意欲を後押ししましょう。
ポイント6:丁寧な指導と精神的サポート
入社初期のOJTを充実させ、わからないことを相談しやすい環境を整えることが大切です。メンター制度の導入など、精神的な支えを提供する体制も効果的です。
ポイント7:適切な在留資格の管理
採用するベトナム人材の在留資格に応じた活動範囲を厳守し、更新手続きや変更申請を適切にサポートすることで、法令遵守と安定した雇用関係を維持できます。

6. 在留資格と最新制度:育成就労・特定技能はどう影響する?
続いて、ベトナム人が多く利用する主要な在留資格と、最新の制度改正が与える影響について解説します。
ベトナム人労働者の多くは以下の在留資格で日本に滞在しています。
- ● 技能実習(育成就労へ移行中):技能実習制度は育成就労制度へ段階的に移行しています。
- ● 特定技能:人手不足分野での受け入れが進み、ベトナム人の利用も増加しています。
- ● 技術・人文知識・国際業務:専門性や語学力を活かした高度人材が利用。
- ● 留学(資格外活動):学生が一定時間の就労を許可されている形態。
育成就労制度への移行の影響
- ● 転籍が可能になるため、人材の流動性が高まり、企業は優秀な人材を維持・獲得するために柔軟な対応が求められます。
- ● 企業の費用負担増の可能性:育成就労制度では管理・教育体制の強化が必要となり、費用面での負担増加が懸念されます。
- ● 入国時の日本語要件(N5レベル):日本語能力の最低基準が設けられ、一定の日本語力を持つ人材の受け入れが前提となります。
特定技能制度の現状と活用
- ● ベトナム人は特定技能制度の中でも多数を占めており、特に製造業や介護、建設など幅広い分野で活躍しています。
- ● 特定技能での受け入れにはDOLAB(在留資格認定証明書の申請)などの手続きが必要で、企業の準備が求められます。
- ● 技能実習(育成就労)から特定技能へのスムーズな移行は、人材の定着と能力向上に有効です。
どの在留資格で受け入れるべきか:企業ニーズに応じた選択
企業がベトナム人材を採用する際には、求めるスキルレベルや就労期間、業務内容を踏まえて、最適な在留資格を選択することが重要です。
- ● 短期間かつ特定分野での即戦力を求める場合
→「特定技能」が適しています。人手不足が深刻な分野で、一定の日本語能力や技能を持つ人材を迅速に受け入れたい場合に最適です。 - ● 長期的な育成や技術継承を目指す場合
→「育成就労(旧技能実習)」が向いています。段階的な技能習得を通じて人材を育て、長期的に活躍してもらうことが可能です。 - ● 高度な専門知識や国際業務を期待する場合
→「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が適切です。専門的な知識やスキル、語学力を活かして、企画・管理、技術開発、通訳・翻訳など幅広い業務に対応できます。
これらの選択肢を理解し、企業のニーズとマッチする在留資格を選ぶことで、ベトナム人材の受け入れ効果を最大化し、定着と活躍を促進できます。

7. 今後の動向と採用戦略:ベトナム以外の国も視野に
最後に、ベトナム人材市場の変化と、今後の外国人採用戦略について考察してみます。
ベトナム国内の経済成長や賃金上昇による日本で働く魅力の変化
ベトナムの経済成長に伴い、平均賃金が上昇しています。これにより、日本での労働に対する金銭的な魅力が相対的に低下し、優秀な人材の確保が難しくなる傾向があります。
技能実習(育成就労)における費用負担と他国との人材獲得競争の激化
育成就労制度の導入により、企業側の負担が増加しています。また、インドネシアやミャンマー、ネパールなどの国々でも日本での就労を希望する人材が増え、人材獲得競争は激化しています。
ベトナム人技能実習生の割合減少傾向とその背景
これらの経済的変化と競争の影響を受け、ベトナム人技能実習生の割合は減少傾向にあります。多様な国からの受け入れ拡大がその背景にあります。
ベトナムの次に注目される国々の特徴と可能性
インドネシア、ミャンマー、ネパールなどは労働力が豊富で勤勉な人材が多く、今後の日本の人材ニーズに応える可能性が高い国々です。それぞれの文化や言語の違いを理解し活用することが鍵となります。
国籍に偏らない、多様な人材を受け入れる採用戦略の重要性
単一国籍への依存を避け、多様な国籍からの人材を積極的に受け入れることはリスク分散となり、組織の柔軟性や創造力の向上にもつながります。今後の外国人材採用戦略では、多国籍かつ多様性を重視したアプローチが不可欠です。
8. まとめ:理由を深く理解し、共生を目指すベトナム人雇用
ベトナム人が日本で働く主な理由は経済的な側面が大きいものの、キャリア形成や文化交流、生活環境の改善など多様な動機も存在します。企業はこれらのメリットを最大限に生かすために、ベトナム人の国民性や文化背景を深く理解し、明確で具体的なコミュニケーションや充実したサポート体制を構築することが成功の鍵となります。また、育成就労制度をはじめとする最新の法制度の動向を把握し、それに応じた適切な採用戦略を立てることが重要です。
採用や受け入れに関する具体的な課題や戦略については、専門家への相談を活用することをおすすめします。
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