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領事館と大使館の違い|それぞれの役割や業務内容、活用の仕方を解説

外国人社員を雇用する企業や、国際的な事業展開を検討する担当者にとって、大使館と領事館の違いに迷うケースは少なくありません。ビザや在留資格、緊急時の対応など、実務の場では正確な窓口判断が求められます。

本記事では、大使館と領事館の役割や業務範囲、管轄地域を分かりやすく解説します。本記事を読めば、外国人雇用で直面する課題に対して、どの公館にどのような目的で連絡すべきかが明確になります。

CONTENTS

1.領事館と大使館の違いは外交交渉権の有無

外国人雇用や海外業務に関わる企業担当者にとって、領事館と大使館の違いを理解することは不可欠です。両者の役割や業務の性質を誤解すると、ビザ取得や在留資格申請、緊急時対応などで混乱を招く可能性があります。本記事では両者の基本的な違いから、具体的な活用方法までを詳しく解説します。

まず、大使館と領事館の最大の違いは「外交交渉権の有無」にあります。大使館は国家間の利害調整や政治・経済に関する交渉を行う権限を持つのに対し、領事館にはその権限がありません。参考:外交関係に関するウィ-ン条約|外務省

1-1. 大使館

大使館の長は特命全権大使であり、受け入れ国政府との外交交渉を行う最高責任者です。具体的には、二国間条約の交渉・締結、通商や安全保障などの政策への影響力行使が主な業務です。外交関係に関するウィーン条約に基づき、大使館はその国家を代表する公的機関としての法的地位を持ちます。

1-2. 領事館

一方、領事館の業務は自国民や外国人に対する行政的・実務的な支援に限られます。ビザ発給、パスポート更新、証明書発行などの手続きを行いますが、外交交渉や政治的意思決定には関与できません。この違いを理解することが、外国人雇用において手続き上の混乱を避ける第一歩となります。

2. 在外公館について

大使館・総領事館・領事館などを総称して「在外公館」と呼びます。在外公館は自国の利益保護と外交活動のため、外国に設置される外交拠点であり、外務省の管轄下に置かれています。

2-1. 駐日外国公館の定義と種類

在外公館には、大使館、総領事館、領事館、政府代表部などがあり、設置地域や役割に応じて階級が異なります。大使館は原則として首都に設置され、国家間外交の中心として活動します。総領事館や領事館は主要都市に設置され、在留邦人や外国人に対する行政サービスを提供します。ビザ発給手続きなどは、原則として在外公館で行われるため、企業にとっても重要な拠点です。

2-2. 公館の不可侵と治外法権

ウィーン条約に基づき、公館の敷地内には接受国の官憲が館長の同意なしに立ち入れない権利があります(第22条、第31条)。外交官は逮捕や拘禁の対象にならず、外交特権が認められますが、領事館員には職務行為に限定した特権しかありません。なお、「治外法権」は、外交使節が所在する場所は本国領土の延長であるという古い考え方に基づく概念で、現在は条約上の不可侵権によって法的に保護されています。
参考:外交関係に関するウィ-ン条約|外務省
国際法あれこれ|外務省

3. 大使館の役割と業務

大使館は外交交渉の中心であり、政治・経済・文化・広報など多岐にわたる役割を担います。

3-1. 大使館の役割

大使館の長である特命全権大使は、国家元首を代表して受入国政府と交渉します。二国間条約の締結や通商問題の調整、安全保障に関する協議などが主な業務です。大使館の権限は領事館よりも法的に高い階級であり、外交の最前線に立つ機関として機能します。

3-2. 大使館の業務内容

大使館では自国製品の輸入促進や文化イベントの開催など、国のイメージ向上を目的とした広報業務も行います。ビザ発給やパスポート更新などの行政サービスも提供しますが、首都にしか設置されていないため、日常的な利便性は領事館が担う場合が多くなります。

3-3. 大使館の管轄地域

大使館は受入国全土を管轄するのが原則です。領事館が存在しない地域では、大使館が行政サービスも含めた全業務を行います。これにより、大使館は外交活動の中核、領事館は地域に密着した行政支援の拠点という位置づけが明確になります。

4. 領事館の役割と業務

領事館は行政的・実務的支援を中心に活動し、外交交渉には関与しません。

4-1. 領事館の役割

領事館の長は領事であり、在留邦人や一時滞在者の生活・法律・行政上の問題解決をサポートします。役割は明確に行政支援に限定され、外交交渉は行いません。

4-2. 領事館の業務内容

領事館では、ビザ発給や証明書発行が主な業務です。企業が外国人社員の身分証明や資格証明を取得する場合、領事館が代理申請窓口となることもあります。

4-3. 領事館の管轄地域

領事館は、大使館が管轄する国の中で特定の州や都市を担当します。人口や経済的重要性に応じて複数設置されることがあり、米国大使館は東京、領事館は大阪・名古屋・札幌などに設置されています。参考:在日米国大使館と領事館|USEmbassy.gov

5. 領事館と大使館の活用フローと判断基準

外国人社員の在留資格申請や緊急トラブル対応では、両者の役割を理解したうえで適切に活用することが重要です。

5-1. 在留資格申請・更新

外国人が日本で働く場合、まず企業が入管に在留資格認定証明書を申請します。交付後、外国人本人は母国の在外公館(主に領事館)でビザを発給申請します。日本入国後の在留資格延長・変更は、日本の入管が管轄します。
参考:査証(ビザ)|外務省
出入国管理関係法令等>入管法|ISA

5-2. 外国人社員の緊急トラブル

事故や逮捕などの緊急事態では、領事館が初期対応窓口となり、所在確認・医療機関紹介・家族連絡・弁護士紹介リストの提供などを行います。ただし、法律相談や警察捜査への介入はできません。参考:大使館・総領事館ができること・できないこと|外務省

5-3. 家族呼び寄せ

外国人社員の家族が日本で生活するための在留資格申請は入管が担当します。入国前のビザ発給申請は母国の在外公館(領事館)が担当し、必要書類や申請時期を事前に確認することが重要です。参考:在外公館長及び在外公館ホームページ|外務省

6. 領事館と大使館以外の在外公館

大使館・領事館以外にも、総領事館、名誉領事館、政府代表部などがあります。

6-1. 総領事館

総領事館は領事館の中で最高位の館長が運営し、管轄地域が広い場合があります。業務内容は通常の領事館とほぼ同じですが、設置数は少なめです。

6-2. 名誉領事館

名誉領事館は、正式な外交官ではない現地在住民が任命され、自国民支援や文化交流を行う機関です。旅券やビザの発給権限はなく、報酬も基本的にありません。

6-3. 政府代表部

政府代表部は国連やEUなど国際機関に対して日本政府を代表して外交活動を行います。大使館が「国と国」の関係を担当するのに対し、政府代表部は「国と国際機関」の関係を担当します。

7. 領事館と大使館の違いに関するQ&A

Q1. 大使館に逃げ込む行為は可能ですか?

原則として公館の不可侵により、受入国の官憲は館内に立ち入れません。一時的な安全確保は可能ですが、犯罪者の隠匿場所としての利用はできず、最終的には現地当局に引き渡す協力義務があります。

Q2. ビザ発行は必ず大使館経由ですか?

ほとんどの手続きは領事館(総領事館)で行われます。領事館は主要都市に設置され、自国民への行政サービスを実務的に担当しているためです。

Q3. 名誉領事館とは何ですか?

現地在住の民間人が任命され、文化交流や自国民支援を行いますが、旅券やビザの発給はできません。正規の領事館は外交官が運営し、全ての領事サービスを提供できます。

Q4. 大使館と領事館はどちらが地位が高いですか?

外交権限を持つ大使館の方が高い地位にあります。一方で、行政サービスの迅速性や利便性は領事館の方が高い場合があります。

Q5. 特定技能外国人の採用時、領事館は関与しますか?

在留資格認定証明書取得後、自国の領事館または大使館でビザを発給してもらう必要があります。参考:【最新版】特定技能に関する様式一覧|書き方・注意点などを解説

8. まとめ:領事館・大使館の違いを理解して外国人雇用を成功させるために

大使館は外交、領事館は行政サービスという役割の違いを正しく理解することが、外国人雇用担当者にとって不可欠です。ビザ発給や在留資格申請は、各国領事館・大使館の独自ルールと日本の入管法が絡み合い複雑ですが、正確な情報と手順を把握すれば円滑な手続きが可能となります。

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