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タイの宗教|仏教とその文化や信仰・生活の関わりや日本との違いなどを解説

「微笑みの国」として知られるタイ。その穏やかな国民性の背景には、深く根付いた宗教観があります。
国民の9割以上が信仰する仏教は、日本の大乗仏教とは異なる上座部仏教であり、人々の生活や文化に独特の影響を与えています。
本記事では、タイにおける宗教の全体像、特に仏教の教えや特徴、寺院や僧侶の役割、そして精霊信仰やヒンドゥー教との関わり、さらにはタイ王室と宗教の密接な関係について、分かりやすく解説します。
タイの文化と精神性を理解する上で欠かせない宗教の世界を探求しましょう。

CONTENTS

タイの宗教の概要

1. タイにおける仏教の位置づけ

タイ基礎データ|外務省によれば国民の約94%が仏教徒とされている。
タイ憲法では国王が仏教徒であることが定められており、国王が「仏教の擁護者」としての役割を担い、国民の精神的・文化的支柱であることを象徴している。
タイ憲法は信教の自由を保障し、誰もが自由に宗教を信仰できると規定している(例:憲法第27条など)が、実質的には仏教が「国教に準ずる」強い影響力を持っている。仏教的価値観や儀式は日常生活のあらゆる場面に浸透しており、教育、祭事、法律や倫理観にまで反映されている。
ただし、国王は仏教の擁護者であると同時に、全ての宗教の保護者としての役割も果たしている。そのため、仏教以外の宗教とも共存し、相互尊重の精神を国家として推進している。

2. 仏教以外の宗教の存在

  •   ● イスラム教
        国内のイスラム教徒は約5%程度とされ、主に南部のヤラー県、パッタニー県、ナラティワート県などに集中して居住している。
        彼らはタイ社会の中で独自の文化と宗教生活を維持している。

  •   ● キリスト教
        キリスト教徒は少数派で、割合は数パーセント程度。
        主にプロテスタントとカトリックの教派が存在し、主に都市部や教育水準の高い層に多い。

  •   ● ヒンドゥー教とバラモン教の影響
        タイ文化に深く根付いているバラモン教の儀式やヒンドゥー教の神々の崇拝は、特に王室の儀式や伝統芸能に取り込まれている。
        仏教と混合しながらタイ独自の宗教文化を形成している。

  •   ● その他の少数宗教
        少数のユダヤ教、シーク教、原始宗教的信仰、さらには新興宗教も存在するが、人口比はごくわずかである。

3. 多宗教共存と相互尊重

タイ社会は多宗教が共存しており、国民レベルで宗教間の調和と尊重が重視されており、政府や宗教指導者は宗教対話や相互理解の促進に努め、社会の安定と調和を維持しています。また、宗教は政治や社会秩序に大きな影響を与えており、宗教儀式や祝祭日が国民生活に密接に結びついています。

タイ仏教の核心:上座部仏教の教えと日本仏教との相違点

上座部仏教(テーラワーダ仏教)の基本理念

  •   ● 個人の努力による悟りと解脱(ニルヴァーナ)を最重要視
        上座部仏教は、自らの修行と実践によって悟りを得て解脱することを重んじる。

  •   ● 仏陀(ゴータマ・シッダールタ)を偉大な人間・覚者として尊敬
        仏陀は超自然的存在ではなく、偉大な人間であり、模範的な覚者と見なされる。

  •   ● 戒律(シーラ)、瞑想(サマーディ)、智慧(パンニャー)の三学を重視
        道徳的な戒律の遵守、心の統一と集中(瞑想)、智慧の開発が修行の柱となる。

  •   ● 出家修行を解脱への最も直接的な道と考える
        出家は修行の中心であり、多くの男性が一時的に出家することも一般的。

日本の大乗仏教との主な違い

  •   ● 自利(自己の解脱)を優先 vs 利他(他者救済)を重視
        上座部仏教は自己の悟りを最優先するのに対し、大乗仏教は多くの衆生を救うことを強調する。

  •   ● 仏陀像の扱いの違い
        上座部仏教は歴史上の釈迦(ゴータマ・シッダールタ)を中心に据えるが、大乗仏教には多様な仏や菩薩が存在する。

  •   ● 実践の姿勢の違い
        日本仏教は葬式仏教の側面が強調されることが多いが、タイの仏教は日常生活に密着し、実践的である。

  •   ● 出家の意味合いの違い
        日本では僧侶が専門職であるのに対し、タイでは若者が一時的に出家修行を経験することが広く行われている。

「タンブン」の実践

「タンブン」とは善行や功徳を積む行為であり、現世や来世の幸福、さらには解脱への助けを目的としています。具体的な行為としては

  •   ● 僧侶への食事の提供

  •   ● 寺院への寄進

  •   ● 貧者への施し

  •   ● 生き物の解放(放生)

などが有名です。タンブンは日常生活の様々な場面で意識されており、個人の精神的充足や社会の安定に大きく寄与しています。

輪廻転生観と現世での善行

  •   ● 輪廻転生(サンサーラ)の思想
        死後に再び生まれ変わるという考えがタイ社会に深く根付く。

  •   ● カルマ(業)と来世の関係
        現世の行い(善悪の行動)が来世の運命を決定づける。

  •   ● 善行の重要性
        良い来世を迎えるために、現世で功徳(タンブン)を積むことが不可欠とされる。

  •   ● 死生観・倫理観への影響
        輪廻転生観はタイ人の人生観や倫理観、価値観に強い影響を与えている。

寺院(ワット)と僧侶

ここで、タイの寺院(ワット)と僧侶について、解説します。

寺院(ワット)の役割と機能

  •   ● 全国に約3万ある寺院は、多様な建築様式を持ち、信仰の場だけでなく地域社会の中心的施設として機能。

  •   ● 冠婚葬祭や年中行事、祭りの儀礼の場となるほか、教育施設(学校)、医療施設(伝統医療)、宿泊施設、集会場、市場などが併設されることもある。

  •   ● 仏教の重要な祝祭日(万仏節、仏誕節、三宝節、入安居、出安居など)の儀式や、個人の誕生・結婚・葬儀など人生儀礼の中心地である。

  •   ● 宗教美術(寺院建築、仏像、壁画など)が豊かで、地域文化の核としての役割も担う。

  •   ● 地域住民の集会や相談の場、災害時の避難場所・支援拠点としても機能し、地方社会での影響力が大きい。

僧侶の数と社会的役割

タイには約30万人の僧侶が存在し、社会的地位は非常に高いです。男子は一生に一度、短期間の出家が推奨されており、これは社会的かつ精神的な通過儀礼として広く行われています。僧侶の日常生活は戒律の遵守、読経、瞑想、托鉢、学習に費やされ、在家信者から尊敬され精神的な指導者としての役割を担っています。近年では僧侶の役割や社会との関わり方に変化も見られますが、基本的には信者との相互扶助の関係が続いています。

托鉢とタンブン(喜捨)

早朝に行われる托鉢は、僧侶が信者から食事や日用品の布施を受ける重要な儀式であり、僧侶はこれによって修行生活の糧を得ています。信者はタンブンを通じて功徳を積み、精神的な充足や社会の安定に貢献します。托鉢の際には厳格な作法や注意点が守られ、その宗教的な意味合いは非常に深いもののようです。

僧侶の冠婚葬祭や儀式における役割

僧侶は結婚式、新築祝い、開店祝い、葬儀など人生の節目に招かれ、読経や説法を通じて祝福・清め・祈願を行います。企業や商店でも繁栄や安全祈願のために僧侶が招かれ、これらの儀式は社会の安定と人々の精神的支えとなっています。

このように、寺院と僧侶はタイ社会の宗教的・文化的・社会的な中心として、多面的な役割を担っています。

仏教と融合するタイの民間信仰:精霊信仰(ピー信仰)とヒンドゥー教の影響

ここで、精霊信仰(ピー信仰)とヒンドゥー教の影響について解説します。

1. 精霊(ピー)信仰の概要

タイの土着的なアニミズム信仰であるピー信仰では、あらゆる場所に精霊(ピーまたはチャオ)が宿るとされ、人々の生活に大きな影響を及ぼすと考えられています。精霊を適切に祀り、供物を捧げることで恩恵を受ける一方、怒らせると災いが起こると信じられているため、日常生活では特定の場所での行動制限や祠への供物など、さまざまな形でピー信仰が表れています。

2. 「サーン・プラプーム」(土地の祠)に見る精霊信仰の日常化

家庭や店舗、ビルの敷地内には「サーン・プラプーム」と呼ばれる土地の守護神の祠が設置される習慣があり、そこでは土地の守護神(プラプームチャオティー)を祀って日々の平穏や繁栄を祈願します。祠の設置場所や方角、供物の種類には伝統的な慣習が存在し、新築や重要な行事の際には祠で儀式が行われることが一般的です。

3. 日常生活における供物と儀礼

サーン・プラプームやその他の精霊には、花や線香、ロウソク、飲食物などの供物が日常的に捧げられており、特定の曜日や行事に合わせて特別な供物や儀式が行われることも多いようです。これらの慣習はタイ人の生活習慣や意思決定に大きな影響を与えています。

4. 仏教儀礼と精霊信仰の共存・融合

仏教の儀礼と精霊信仰の儀礼は日常的に共存し融合しており、タイ社会には仏教の教えと土着のアニミズムが相互に補完し合う独特の宗教的景観が根付いています。

5. ヒンドゥー教の影響

古代インドから伝来したヒンドゥー教(バラモン教)は、タイの王権や文化に大きな影響を与え、ブラフマー(梵天)、ヴィシュヌ、シヴァなどのヒンドゥー教の神々はタイでも信仰されています。これは、王室儀礼や伝統舞踊、文学、美術にはヒンドゥー教的な要素が多く見られることからもわかります。有名なヒンドゥー教由来の祠(ほこら)としてエラワン廟のプラ・プロムがあり、その信仰は広く浸透しているようです。

6. タイ独自の宗教的景観

タイの宗教的景観は、仏教、ヒンドゥー教、そして土着の精霊信仰(ピー信仰)が複雑に混ざり合い、多層的で豊かな特色を持っています。仏教は日常生活や社会制度の基盤となっている一方で、精霊信仰のアニミズム的要素が生活の細部に根付き、人々の精神生活や意思決定に影響を与えています。
さらに、古代インドから伝来したヒンドゥー教の神々や儀礼は、王室儀礼や伝統芸能、美術など文化面に深く浸透しており、仏教と土着信仰と融合することで独自の宗教文化を形作っています。
このように三者が相互に補完し合うことで、タイ独特の宗教的景観が形成されているのです。

タイ王室と宗教

国王の仏教徒としての役割と国民からの信頼

タイ国王は憲法上、仏教徒として規定されており、仏教の最高帰依者(保護者)としての地位を持っています。国王は国民の精神的支柱とされ、多くの国民から篤い尊敬と信頼を集めています。王室が執り行う宗教儀礼は国民生活に深い影響を与え、国王自身が仏教の教えを体現し、国民の模範となることが期待されています。

歴代国王による仏教保護と寺院建立の歴史

スコータイ王朝以来、歴代のタイ王朝は仏教を熱心に保護し、多くの寺院の建立や修復に尽力してきました。王室寺院は特別な地位を持ち、仏典の編纂や翻訳、仏教教育の振興などを通じて、仏教文化の発展にも大きく貢献しています。近現代ではプミポン前国王(ラーマ9世)が仏教振興に尽力した例が知られています。

王室プロジェクトに見る仏教的価値観の実践

プミポン前国王が主導した王立プロジェクト(ロイヤルプロジェクト)は、貧困削減、農村開発、環境保全、医療福祉など、国民生活の向上を目的とした多岐にわたる活動です。これらの取り組みの根底には、仏教の慈悲(メッター)や利他の精神が流れており、国王が国民と共に苦楽を分かち合う姿勢を示した重要な事例となっています。

国民生活における王室への敬意と宗教的行事

国王や王室メンバーの誕生日は国民の祝日として盛大に祝われ、映画館での国歌や国王賛歌の起立斉唱など、日常生活の様々な場面で王室への敬意が表されています。多くの家庭や店舗には国王や王妃の写真が飾られ、王室関連の宗教行事には国民の高い関心と参加が見られます。

タイの宗教観が育んだ文化と生活習慣

「ワイ」に見る敬意と仏教的礼節


タイ式の合掌挨拶「ワイ」は、手の高さや角度で相手や状況に応じた使い分けがされます。ワイには敬意や感謝、謝罪などの意味が込められており、特に目上の人や僧侶、仏像に対しては重要な礼節として行われます。このワイはタイ人の礼儀正しさや謙虚さを象徴し、日常のコミュニケーションに深く根付いています。

穏やかな国民性と「微笑み」の背景にある仏教的価値観

タイが「微笑みの国」と呼ばれるのは、仏教の教えにある慈悲や寛容、執着しない心が国民性に影響を与えているためです。「マイペンライ」(気にしない、大丈夫)という精神は、感情を抑え調和を尊ぶコミュニケーションスタイルに表れています。このため争いを避け、穏やかで親しみやすい国民性が形成されています。

祝祭日・年中行事と宗教的儀礼の結びつき

タイの主要な祝祭日は多くが仏教に由来しています。例えばソンクラーン(タイ正月)では仏像に水をかけたり、年長者に敬意を示す儀式が行われます。ウィサカブーチャやマカブーチャ、アサラハブーチャなどの祝祭日には寺院でのタンブン(施し)や説法、パレードなどの宗教儀礼が盛大に行われ、これらの行事がタイ人の共同体意識やアイデンティティ形成に大きく寄与しています。

ニックネーム文化と本名に込める願い

タイ人は本名とは別にニックネーム(チューレン)を持ち、日常的に使います。本名は長く複雑な場合が多く、良い運気を呼び込むために親がニックネームを付ける習慣があります。ニックネームは動物や果物、形容詞、外国語由来など多様で、職場や学校でも一般的に使われています。本名には仏教的・サンスクリット的な良い意味を持つ言葉が選ばれることが多いです。

国花「ラーチャプルック」と黄色が象徴する宗教的意味

タイの国花ラーチャプルック(ゴールデンシャワー)は鮮やかな黄色い花を咲かせ、その色は仏教と栄光を象徴します。黄色は月曜日(プミポン前国王の誕生曜日)のシンボルカラーであり、「クーン(増える、倍になる)」という言葉が縁起の良さを表します。重要な行事や式典で黄色が多用されるのは、この宗教的・文化的意味に由来しています。

タイの宗教を理解することがタイ文化理解の鍵となる

タイの宗教を理解することは、タイ文化を深く理解するための重要な鍵となるでしょう。特に上座部仏教は、タイ国民の生活や文化、価値観のあらゆる側面に強く影響を与えています。また、タンブン(布施)や土着の精霊信仰など、仏教と融合したタイ独自の信仰形態を理解することも不可欠です。さらに、王室と宗教の密接な関係は、タイ社会の安定や国民統合に大きな役割を果たしてきました。

こうした宗教的背景を踏まえることで、タイの人々とのコミュニケーションやビジネスがより円滑に進む可能性が高まります。

タイ文化の多様性と奥深さを理解するためには、宗教への敬意と関心が欠かせないものと言えるでしょう。

 

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