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暗黙の了解の意味とは?外国人材が分からない理由と明文化の進め方

日本企業では、会議や報連相といった日々の業務の中に「暗黙の了解」が多く存在します。「言わなくても分かるはず」「常識の範囲内で動く」といった慣習は、日本人同士のコミュニケーションにおいては有効な手段です。しかし外国人材が増える現代では、思わぬトラブルや離職、法的リスクの原因にもなりかねません。

本記事では「暗黙の了解」の意味や類義語との違い、日本特有のハイコンテクスト文化との関係を分かりやすく解説します。さらに、外国人材が困惑しやすい具体例や経営への影響、暗黙のルールを明文化する手順までまとめました。多様な人材が活躍できる組織作りのポイントとして、ぜひ参考にしてください。

CONTENTS

1. 「暗黙の了解」の意味と定義

日本社会において「暗黙の了解」は、長年にわたり円滑なコミュニケーションを支えてきました。特に、同質性の高い組織文化や長期雇用を前提とした企業では、言葉にしなくても意思疎通が成立することが多く、業務効率や心理的安全性の確保に役立ってきたのです。しかし、ビジネスのグローバル化や外国人材の採用が進む現代では、この「暗黙の了解」がかえって組織運営の阻害要因になるケースも増えています。ここでは、まず「暗黙の了解」という言葉の定義と、ビジネスシーンでの正確な意味合いを整理します。

1.1 辞書的な意味とビジネスシーンでの解釈

「暗黙の了解」とは、言語による明示的な合意形成を経ず、当事者間の共通認識として成立しているルールや合意事項を指します。ビジネスシーンにおいては「言わなくても分かるはず」や「常識の範囲内で行動する」といった、組織特有の行動規範として機能することが多いです。
これは、新卒一括採用や終身雇用など、同質性の高いメンバーで構成された日本的組織でのみ通用する、高度にコンテキストに依存したコミュニケーションスタイルです。言い換えれば、言語化されていない共通理解に強く依存しているため、文化や経験が異なる人材にとっては理解が難しい場合があります。

1.2 類義語「不文律」「阿吽の呼吸」「忖度」との違い

「暗黙の了解」に似た概念として「不文律」「阿吽の呼吸」「忖度」がありますが、それぞれニュアンスが異なります。

  •   ● 不文律:文章化されていないが守らなければならない掟や決まり。破った場合のペナルティを想定する、強制力の強い言葉です。

  •   ● 阿吽の呼吸:長年の信頼関係に基づき、言葉を交わさなくても行動のタイミングが一致する肯定的な状態を指します。

  •   ● 忖度:上の立場の者の意図を下の者が推し量り、先回りして行動すること。上下関係のニュアンスが強く含まれます。

これらと比較すると、「暗黙の了解」は組織全体に漂う空気のようなもので、善悪の判断基準も曖昧なまま共有されている点に特徴があります。言い換えれば、組織文化や社風に深く根ざした、形式知に依存しない暗黙知の一種と言えます。

1.3 英語ではどう表現されるか:日本との違い

英語では「暗黙の了解」は、Unspoken rule(話されないルール) や Tacit understanding(無言の了解) と表現されます。欧米のビジネスシーンでは、これらは例外的な事象として扱われることが多く、組織運営の基盤としてはほとんど依存されません。
一方、日本では日常的な運用基盤として機能する点が大きな違いです。グローバルな視点では、契約やマニュアルといった形式知が優先され、暗黙知への依存度は極めて低いのです。この違いが、外国人材とのトラブルの一因となることがあります。

2. なぜ日本企業には「暗黙の了解」が多いのか

日本企業で外国人材とのトラブルが絶えない理由は、日本が世界的に見て特殊なコミュニケーション文化を持つことにあります。この文化的な差を感覚ではなく指標として理解することが、マネジメント改善には欠かせません。

2.1 エドワード・T・ホールが提唱する「ハイコンテクスト文化」

文化人類学者のエドワード・T・ホールは、コミュニケーションにおける言語依存度の違いに基づき、世界の文化を「ハイコンテクスト(高文脈)」と「ローコンテクスト(低文脈)」に分類しました。

  •   ● ハイコンテクスト文化:言葉そのものよりも、文脈や背景、行間に情報の重きが置かれる文化。

  •   ● ローコンテクスト文化:すべての情報が言葉で明示され、文脈に依存せず意思疎通が行われる文化。

詳しくはこちらをご参照ください。
ハイコンテクスト文化とは?ローコンテクストとの違いやデメリットを解説

2.2 日本はハイコンテクスト文化の代表例

ホールの研究によれば、日本はハイコンテクスト文化の傾向が非常に強い国です。アメリカ、オーストラリア、ドイツなどはローコンテクスト文化の代表であり、中国や韓国、ベトナムなども比較的ハイコンテクストですが、日本ほど「沈黙」や「察し」を重視する国は稀です。そのため、日本で外国人材を受け入れることは、世界的に見ても言葉による説明を重視しない文化に、他文化の人間が飛び込むことにほかなりません。これは本質的な難しさを伴う課題です。

2.3 「空気を読む」スキルが外国人材にとって難しい理由

日本語能力試験(JLPT)で最高レベルのN1を取得している外国人材であっても、日本企業の「暗黙の了解」に対応できないことがあります。言語としての日本語は習得できても、背景にある膨大な文化的文脈(歴史、慣習、社風)は共有されていないからです。
例えば、「普通に考えて」や「良きに計らえ」といった指示は、日本人同士であれば通じますが、文脈を共有していない外国人材には解読不能な暗号と同じです。

詳細はこちらからご確認ください。
日本語能力試験(JLPT)N1・N2とは?レベル別の難易度を解説

3. 外国人材が理解できない「暗黙の了解」の具体例

日本企業における「暗黙の了解」は、日本人にとっては当たり前の慣習であっても、外国人材にとっては理解が難しく、業務上の障壁になることがあります。ここでは具体例を挙げ、どのような場面で問題が生じやすいかを整理します。

3.1 勤怠・休憩:始業15分前の着席や有給休暇取得への遠慮

契約上の始業時間が9時であっても、日本企業では8時45分にはデスクに着き、パソコンを立ち上げていることが「やる気」の指標とされる風潮があります。また、定時退社が可能であっても、上司や先輩が残業していると帰りづらい「付き合い残業」の文化も根強く残っています。
有給休暇についても、労働者の権利であるにもかかわらず、「繁忙期は避ける」「私用での連休は控える」といった不文律が優先されるケースがあります。このような空気があるため、外国人材は権利として認められた制度を利用することに罪悪感を抱く場合があります。

3.2 報連相:「状況を見て」「適当に」という曖昧な指示

報告・連絡・相談(報連相)の場面でも、外国人材は戸惑うことがあります。「状況を見て報告して」といった指示は、「いつ」「どの基準で判断すべきか」が不明瞭であり、行動の指針が定まりません。また、「適当にやっておいて」という表現は、日本人には「程よく」という意味で理解されますが、外国人材には「無責任にやってよい」と誤解されたり、逆に過剰な品質管理で時間を浪費したりするリスクがあります。
欧米や中国などローコンテクスト文化圏では、業務指示には期限や完了条件が明確にセットされるのが常識であり、日本の曖昧な指示は理解のハードルとなります。

3.3 会議・意思決定:会議中の「沈黙」は合意か否定か

日本の会議では、異論がない場合に沈黙を貫くことがあります。これは消極的な合意とみなされることが多いですが、多くの国では「沈黙=理解していない」「意見がない(興味がない)」と解釈されることがあります。また、沈黙自体が不安要素になる場合もあります。
さらに、日本の意思決定プロセスは、会議中には何も決まらず、会議後の根回しや飲み会で実質的に決まることが多く、透明性の低さが外国人材の不信感を招きやすいのです。

3.4 コミュニケーション:業務外の交流や社交辞令

日本企業では、業務外の飲食をともなう交流が職場の人間関係や評価に影響することがあります。「今度飲みに行きましょう」という言葉も、外国人材には社交辞令なのか本気の誘いなのか判断がつかず、戸惑うことがあります。また、「検討します」が事実上の「No」を意味するなど、ハイコンテクスト文化特有の表現は、意思疎通のスピードを鈍化させる原因となります。

4. 「暗黙の了解」が経営に与える影響

外国人材に対して日本の慣行への一方的な適応を求めることは、現代の経営環境において重大なリスクとなります。「暗黙の了解」を放置することは、採用コストの無駄遣いだけでなく、法的リスクにも直結します。

4.1 離職リスク:評価基準が不明瞭であることによるモチベーション低下

外国人材は、成果を上げても「協調性がない」「空気が読めない」といった定性的な理由で評価されると、不当な扱いを受けたと感じやすいです。評価基準と実際の評価軸が一致しない組織では、優秀な人材ほど早期に離職する傾向があります。採用や教育にかけたコストが回収されないまま人材が辞めることは、経営上大きな損失です。

4.2 生産性リスク:業務の属人化と教育コストの増大

「背中を見て覚える」「仕事は盗むもの」といったOJTスタイルは、教育の標準化を妨げ、業務の属人化を招きます。マニュアルがなく、指導役の社員によって教え方が異なる場合、新人が自立するまでの期間が長期化します。また、言語化されていないノウハウは共有されず、担当者が休職・退職した瞬間に業務が停止するリスクも生じます。

4.3 法的リスク:社内独自の「常識」がハラスメント認定される可能性

社内独自の「暗黙の了解」を強要することは、パワーハラスメントやモラルハラスメントとして認定される可能性があります。特に「みんなやっているから」という同調圧力によるサービス残業や、有給取得の妨害は労働基準法違反です。外国人材は契約内容に敏感であり、契約外の業務や不当な慣習に対して訴訟や労働基準監督署への通報といった法的手段を取るハードルが、日本人より低いことを認識する必要があります。

5. 暗黙のルールを「ローコンテクスト化(明文化)」するための進め方

外国人材が定着し、かつ日本人にとっても働きやすい職場環境を整えるためには、組織の「ローコンテクスト化」、つまり暗黙のルールを明文化することが不可欠です。ハイコンテクスト文化に慣れた日本人にとっては当たり前のことでも、外国人材には理解しにくく、混乱や不満の原因になりやすいためです。ここでは、すぐに取り組める具体的な手順を整理します。

5.1 業務フローの棚卸しと不文律の洗い出し

まず、特定の業務における一連の流れをすべて書き出し、そこに付随する「書かれていないルール」を洗い出します。たとえば、申請や承認の順序、上司への報告タイミング、作業完了の判断基準などです。「なぜこの手順が必要か」「誰に確認を取るのか」「完了の基準は何か」を言語化して整理していくことが重要です。
この際、日本人だけで進めると、暗黙の了解や社内常識が見過ごされがちです。そこで、入社間もない社員や外国人材へのヒアリングを組み込み、実務上のギャップや疑問点を抽出します。こうすることで、従来の常識に頼らず、誰でも理解できる業務フローを構築できます。

5.2 定性表現を廃止し数値で定義する

マニュアルやルールを作る際に最も注意すべき点は、解釈の余地が生まれる定性的表現(形容詞や副詞)を排除することです。「なるべく早く」「丁寧に」といった表現は、人によって解釈が大きく異なります。外国人材にとっては、業務の意味や完成基準が曖昧になり、ミスやストレスの原因になります。
たとえば、「なるべく早く報告する」という指示は、「受信から3時間以内」や「当日17時まで」といった期限で明確にします。「丁寧に対応する」という指示も、行動レベルで具体化します。たとえば「電話を切る前に注文内容を復唱する」「メール送信前に宛名と内容を2回確認する」といった具合です。こうした定量化・具体化により、誰が読んでも同じ行動が取れるようになります。

5.3 外国人材を含むチームでの運用とフィードバック

作成したマニュアルやルールは、一度作って終わりではなく、実際に外国人材を含むチームで運用し、運用上の不明点や解釈に違いがないかをテストします。質問が出る箇所は、まだ「暗黙の了解」や曖昧さが残っているサインですので、随時修正します。また、組織や業務内容の変更に応じてマニュアルを定期的に更新する仕組みを作ることが重要です。

6. 外国人材と協働するうえで押さえるべきポイント

ルールを明文化するだけでは、外国人材が定着するとは限りません。受け入れる側の日本人が、自分たちの文化的前提や価値観を自覚し、異文化を前提とした関わり方に視点を切り替えることが必要です。ここでは、現場で摩擦を生みにくくするためのポイントを整理します。

6.1 日本の社員が異文化への理解を深める

外国人材に日本文化を教えるだけでなく、日本人社員自身が「日本文化が世界のスタンダードではない」ことを客観視する研修が有効です。自国の文化的前提を知ることで、外国人材の行動に対する許容範囲が広がり、感情的な対立を防ぐことができます。
特に、ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化の違いを理解しておくと、曖昧な指示や沈黙、報連相の遅れに対するストレスが大幅に軽減されます。これは、異文化マネジメントの基本的かつ重要なステップです。

6.2 質問しやすい環境を作る

「質問すると怒られるのではないか」といった心理的安全性の欠如は、報連相の遅れやミスの隠蔽につながります。質問を「理解しようとする意欲の表れ」としてポジティブに評価する文化を作ることが重要です。
具体的には、業務指示の後に「不明点はありますか?」と尋ねるのではなく、「理解した内容を私に説明してみてください」と確認するなど、双方向で理解をチェックするプロセスを導入します。これにより、外国人材が安心して疑問を解消できる環境を整えられます。

6.3 外部の視点で組織の前提を見直す

長年同じ組織にいると、非合理な暗黙の了解も「伝統」として正当化されがちです。自社だけで完全な明文化や意識改革を行うには限界があります。そのため、外国人材受け入れの専門コンサルタントや外部の第三者の視点を取り入れることが有効です。
第三者の視点を活用することで、社内のしがらみに囚われず、合理的で生産性の高いルールに改善できます。さらに、外部の専門家から客観的なアドバイスを得ることで、組織全体の異文化対応力も向上します。

7. まとめ:暗黙の了解を減らし、外国人材が活躍できる組織へ

日本独自の「暗黙の了解」は、同質性の高い集団においては効率的で、円滑なコミュニケーションを支えてきました。しかし、多様化する現代のビジネス環境では、外国人材との摩擦や誤解を生む要因となり、組織の成長を妨げることもあります。外国人材の受け入れは、単なる労働力確保ではなく、自社の業務プロセスを棚卸し、暗黙のルールを言語化・明文化するきっかけとして活用できます。業務手順や評価基準、報連相のルールを数値や具体的な行動に落とし込み、誰もが理解できる仕組みを作ることで、外国人材が安心して働ける環境が整います。
また、この取り組みは日本人社員にとっても働きやすさや生産性の向上につながります。暗黙の了解に依存しない職場では、指示の解釈ミスや属人化が減り、業務の標準化や効率化が進むためです。

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