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特定技能「介護」とは?制度の概要から受入れ企業の注意点まで解説

介護現場の人手不足解決に、特定技能「介護」での外国人材活用が期待されています。一方で「制度の詳細は?」「受け入れの注意点は?」など不明な点も多いはず。本記事は、特定技能「介護」の基本から業務範囲、要件、メリット・留意点、手続き、必須の支援体制まで、全体像が掴めるよう分かりやすく解説します。適切な外国人材受け入れの準備にご活用ください。

CONTENTS

1. 特定技能「介護」の基本を理解しよう

特定技能「介護」制度の概要と目的

特定技能「介護」は、国内における深刻な人手不足に直面する介護分野で、一定の専門性と技能を持つ外国人材を即戦力として受け入れる在留資格です。介護分野は「特定技能1号」のみが対象で、訪問系を除く施設等での業務に従事可能。在留期間は通算5年までで、1年・6ヶ月・4ヶ月ごとに更新。期間満了後は原則帰国が必要ですが、介護福祉士資格を取得すれば「介護」在留資格への移行が可能です。

対象となる事業者(受け入れ機関)の要件

特定技能「介護」で外国人を受け入れるには、訪問系を除く介護施設・事業所であることが前提です。受け入れ機関は、日本人と同等以上の労働条件による雇用契約を締結・履行し、支援責任者や支援担当者の選任、支援計画の作成・実施など適切な支援体制を整備する必要があります。また、労働関係法令や社会保険・税制度の遵守に加え、「介護分野における特定技能協議会」への加入・協力も義務づけられています。

雇用形態に関するルール(直接雇用が原則)

外国人材は受け入れ機関による「直接雇用」が原則とされており、人材派遣などの間接雇用は認められていません。雇用にあたっては、日本人と同等以上の給与、労働時間、休暇などの労働条件を確保する必要があります。これにより、不当な待遇差を防ぎ、安定した雇用環境の整備が求められています。

受け入れ可能な人数の上限について

外国人材の受け入れ人数には、事業所ごとに上限が定められています。この上限は、原則として「日本人等の常勤介護職員の総数」を超えない範囲とされています。「日本人等」には、日本人のほか、在留資格「介護」を有する外国人、永住者、定住者、特別永住者なども含まれます。これは、外国人材の過度な依存を防ぎ、適切な指導・支援体制を維持するための措置です。

2. 特定技能「介護」で外国人が担当できる業務範囲

主な業務内容(身体介護、生活援助など)

特定技能「介護」で就労する外国人は、利用者の心身の状況に応じた「身体介護」が主な業務となります。具体的には、食事、入浴、排泄の介助など日常生活の支援が中心です。加えて、身体介護に付随するレクリエーションの実施、機能訓練の補助、介護記録の作成といった支援業務も担当可能です。さらに、医療行為を伴わない範囲であれば看護助手としての業務にも従事できます。

担当できない業務(訪問系サービスなど)

利用者の自宅を訪問して行う「訪問系サービス」(訪問介護、訪問入浴など)の業務は原則として認められていません。これは、訪問介護が単独での対応を伴うことが多く、十分な日本語能力や緊急対応の難しさなどが背景にあります。ただし、政府は制度の見直しを進めており、2025年度以降を目途に、一定の条件下で訪問系サービスも可能とする方針が示されています。

3. 外国人が特定技能「介護」の資格を得るための条件

特定技能「介護」の在留資格を取得するには、介護業務を適切に行うために必要な日本語能力を有していることを証明する必要があります。そのため、基礎的な日常会話力と、介護現場での業務遂行に必要な専門的な日本語力の両方について、以下の2つの試験に合格することが求められます。

  ● 基礎的な日本語能力:「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」 または 「日本
  語能力試験(JLPT) N4以上」

  ● 介護現場の日本語能力:「介護日本語評価試験」

求められる介護技能(技能試験の合格)

介護に関する専門知識と技術を証明する「介護技能評価試験」にも合格することが求められます。この試験は、介護業務に必要な基本的な知識や技能を問う筆記試験で構成されており、実技試験はありません。試験内容は介護現場での実務に直結した項目が中心で、受験者は業務を安全かつ適切に遂行できる能力を示す必要があります。

特定技能評価試験の概要(介護分野)

資格取得の基本ルートは、介護技能評価試験と日本語能力試験2種の合格が求められます。しかし、以下に該当する場合は試験が免除される移行ルートも設けられています。

  ● 介護分野の「技能実習2号」を良好に修了(※介護日本語評価試験は必要)

  ● 日本の「介護福祉士養成施設」を修了

  ● 「EPA介護福祉士候補者」として4年間の就労・研修を適切に修了

これにより、一定の技能と経験を持つ人材のスムーズな資格取得が可能です。

4. 介護分野で就労可能な他の在留資格との違い

ここで、在留資格「技能実習」との違いをまとめます。

目的の違い

技能実習は、開発途上国への技能移転を通じた国際協力を目的とした制度であり、日本側の人手不足の解消はあくまで副次的な効果にとどまります。一方、特定技能は日本国内の介護現場における深刻な人手不足に対応するために創設された制度で、即戦力となる外国人材の受け入れを目的としています。

業務範囲

技能実習では、利用者の食事や排せつ、入浴など基本的な介護業務に限定されます。それに対して特定技能では、レクリエーションの補助や介護記録の作成など、より幅広い業務に従事することが可能です。ただし、どちらの制度でも訪問介護や訪問入浴などの「訪問系サービス」は従事不可となっています。

育成方針

技能実習は、入国後に段階的に技術を習得していく「育成型」の制度であるのに対し、特定技能は試験を通じて一定のスキルと日本語力を確認した上で受け入れる「即戦力型」の制度です。

人員配置基準への算入時期

介護施設での人員配置基準に関しても違いがあります。技能実習生は入職から6ヶ月が経過しないと配置基準に含めることができませんが、特定技能人材は就労初日から配置基準に算入できます。

夜勤の可否

技能実習生は、夜勤に従事する際に原則2名以上の体制をとる必要があり、一定の制限があります。特定技能の場合は、施設の体制や経験年数など条件を満たせば1人夜勤も可能とされており、より実践的な配置が可能です。

転職の自由度

転職に関しては、技能実習では原則として転職が認められておらず、受け入れ機関の変更には厳格な制限があります。一方、特定技能では同一分野内であれば転職が認められており、外国人労働者にとっても柔軟な働き方が可能です。

このように、各制度にはそれぞれの特徴と制約があり、受け入れ機関としては目的や運用ルールを正しく理解したうえで、制度選択や運用を行うことが重要です。

在留資格「特定活動(EPA介護福祉士候補者)」との比較

根拠法の違い

EPA介護福祉士候補者制度は、日本と特定国との間で締結された経済連携協定(EPA)に基づいて運用されており、政府間の合意が制度の根拠となっています。これに対して特定技能制度は、出入国管理法に基づく制度であり、特定の国籍に限定されることなく、法令で定められた条件を満たすことで幅広く受け入れが可能です。

対象国の違い

EPA制度の対象国は、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国に限定されています。一方で特定技能制度では、現在12カ国と協定を締結しており、今後もさらに拡大する可能性があります。対象国の広さという点で、特定技能の方が柔軟性に優れているといえます。

主目的

EPA介護福祉士候補者は、来日後に日本の国家試験に合格し、介護福祉士となることを目指す「育成型」の制度です。一方で特定技能は、あらかじめ一定の技能と日本語能力を有している人材を、「介護職員」として即戦力として受け入れる「就労型」の制度です。つまり、来日後の役割や期待値が大きく異なる点が特徴です。

在留期間

EPA候補者は原則として4年間の在留が認められており、その間に国家試験に合格すれば「介護」在留資格への移行が可能です。合格できなければ帰国することになります。対して特定技能では、通算で最大5年間の就労が認められており、その期間中に介護福祉士の資格を取得することで、やはり「介護」在留資格への移行が可能になります。

EPAと特定技能は、制度の成り立ち・対象国・受け入れ目的・在留期間に至るまで多くの点で異なるため、受け入れ機関は自施設のニーズや方針に応じて適切な制度を選択することが重要です。

在留資格「介護」との比較

取得要件

「介護」の在留資格を得るためには、日本国内で介護福祉士国家試験に合格していることが絶対条件です。つまり、日本の国家資格を有していることが前提となります。これに対し、特定技能では、介護分野の技能試験および日本語試験に合格するか、あるいは技能実習の修了など所定の移行要件を満たすことで、資格取得が可能です。

在留期間

在留資格「介護」には更新回数の制限がなく、条件を満たせば長期にわたる就労や、将来的な永住申請も可能です。一方、特定技能は通算5年までの在留が上限となっており、5年を超える在留はできません。ただし、特定技能の期間中に介護福祉士資格を取得すれば、「介護」在留資格への移行によって長期在留が可能になります。

業務範囲

「介護」の資格を持つ人材は、訪問介護を含むすべての介護業務に従事することが可能で、業務範囲に制限はありません。対して特定技能は、訪問介護・訪問入浴などの訪問系サービスには従事できず、施設系や通所系のサービスが主な就業先となります。

家族帯同

在留資格「介護」では、配偶者や子どもを帯同することが認められており、在留資格「家族滞在」を取得することができます。これにより、外国人介護職員が家族と共に安定した生活を築くことが可能です。反対に特定技能は、原則として家族帯同が認められておらず、特定技能2号では一部帯同が可能ですが、介護分野はその対象外となっています。

人材確保の難易度

「介護」在留資格の取得には国家資格の合格が必要なため、人材確保には高いハードルがあり、採用までに時間とコストがかかります。これに対し、特定技能は制度的な要件が比較的緩やかで、試験合格や技能実習からの移行により、即戦力となる人材をスムーズに確保しやすいというメリットがあります。

両制度は、在留期間、業務範囲、家族帯同の可否など、実務運用に直結する点で大きな違いがあります。長期的な雇用を見据えるのか、即戦力を重視するのかといった施設側の方針に応じて、適切な制度選択が求められます。

5. 特定技能「介護」人材を受け入れる企業のメリットと留意点

人手不足解消への貢献(メリット)

特定技能「介護」制度を活用することで、介護現場の慢性的な人手不足に対する直接的な解決策となります。受け入れる外国人材は、あらかじめ介護技能や日本語能力の試験に合格しており、一定のスキルを有した即戦力として現場で活躍が期待できます。また、特定技能人材は就労開始直後から人員配置基準に算入されるため、早期に戦力化でき、既存職員の業務負担軽減にもつながります。

即戦力としての期待(メリット)

外国人材は、来日前に介護技能評価試験や日本語試験に合格しており、基礎的な知識とスキルを備えた即戦力です。技能実習制度と比較すると、入職後の育成期間や教育コストを大幅に削減できる点が大きな利点です。また、日本人職員と同様に柔軟なシフト配置が可能であり、一定の条件を満たせば1人夜勤にも対応できるため、現場の運営効率の向上にも貢献します。

受け入れ体制構築の必要性(留意点)

外国人材の安定した生活と就労を支えるためには、支援体制の構築が不可欠です。受け入れ機関には、住居の確保、各種行政手続きの補助、相談対応などを含む「法定支援」を計画的に実施する義務があります。これらの支援には、支援責任者や担当者の選任、人件費や運用コストの発生、さらには言語・文化の違いに対応するノウハウの習得など、企業側に一定の負担が伴う点に留意が必要です。

コミュニケーションや文化の違いへの配慮(留意点)

言語の壁による意思疎通の困難さや、生活習慣・宗教観など文化的背景の違いに配慮することは、当然ながら重要です。誤解やトラブルを防ぐためには、やさしい日本語の使用や多言語対応ツールの活用、文化理解を深める研修の実施などの工夫が求められます。また、困りごとを安心して相談できる、心理的安全性の高い職場環境を整えることも円滑な関係づくりの鍵となります。

6. 特定技能「介護」人材を受け入れる際の重要な手続きと義務

出入国在留管理庁への各種届出

特定技能「介護」人材の受け入れにあたっては、出入国在留管理庁への適切な届出が義務付けられています。受け入れ前には在留資格の認定申請や変更申請が必要となり、受け入れ後は四半期ごとに受入れ状況や支援実施状況に関する定期届出を行います。さらに、契約内容の変更や支援計画の変更、受け入れが困難になった場合などは、随時届出が必要です。届出義務を怠った場合、指導や罰則の対象となる可能性があります。

介護分野の特定技能協議会への加入と協力

受け入れ企業は、法令に基づき「介護分野特定技能協議会」への加入が義務付けられています。原則として、初めて外国人材を受け入れてから4ヶ月以内に加入する必要があり、制度の変更等により加入時期の確認も重要です。また、協議会が行う受け入れ状況の調査や改善指導などの活動に対して、適切に協力する義務があります。加入・協力を怠ると、受け入れ資格の継続に影響する場合もあります。

外国人材に対する支援計画の策定と実施義務

外国人材に対しては職業生活だけでなく、日常生活や社会生活に関する支援を行う法的義務があります。そのため、受け入れ前に住居確保や行政手続き支援、相談対応、生活オリエンテーションなどの内容を盛り込んだ「支援計画」を作成し、出入国在留管理庁へ提出する必要があります。計画策定後は、その内容に沿って継続的かつ適切な支援を実施することが求められます。

支援計画に含めるべき内容としては以下の通りです。

下記10項目の具体的な支援内容と実施方法

  1. 事前ガイダンス
  2. 出入国時の送迎
  3. 住居確保・生活における契約まわりの支援
  4. 生活オリエンテーション
  5. 公的手続き同行
  6. 日本語学習機会の提供
  7. 相談・苦情対応
  8. 日本人との交流促進
  9. 転職支援(会社都合時)
  10. 定期面談・行政機関への通報

支援責任者・支援担当者の選任

外国人材を適切に支援するため、受け入れ機関は「支援責任者」と「支援担当者」の選任が義務付けられています。支援責任者は支援計画全体を統括する立場で、制度への理解と管理能力が求められます。支援担当者は、実際に支援を行う役割で、事業所ごとに1名以上の配置が必要です。両者とも、受け入れ機関と適切な関係にあり、中立的かつ安定的に業務を遂行できることが要件とされています。

7. 外国人材への支援体制:登録支援機関への委託も可能

登録支援機関とは?

登録支援機関とは、受け入れ機関に代わって、特定技能外国人に対する支援計画の全部または一部を実施することができる、出入国在留管理庁に登録された専門機関です。言語対応や生活支援のノウハウを有する機関が多く、支援体制を自前で整えることが難しい事業所にとって有効な選択肢となります。ただし、支援業務を委託した場合でも、最終的な責任は受け入れ機関側にある点に留意が必要です。

委託できる支援内容

登録支援機関には、特定技能制度で定められた法定支援10項目すべて、または一部を委託することが可能です。法定支援には、住居確保、生活オリエンテーション、行政手続きの同行、相談対応、日本語学習の機会提供などが含まれます。委託にあたっては、どの支援項目を委託するのか、費用負担の内容や範囲などを明記した契約を締結する必要があります。適切な契約管理により、支援の質と責任の明確化が求められます。

登録支援機関へ委託するメリット

登録支援機関に支援業務を委託することで、受け入れ機関は自社で支援体制を一から構築する手間やコスト、ノウハウ不足といった負担を大きく軽減できます。登録支援機関は言語・文化対応に精通しており、法定支援項目を高い専門性で遂行できるため、質の高い支援が期待できます。また、受け入れ機関は本来の介護業務に専念でき、業務効率の向上にもつながります。ただし、支援内容に応じた委託費用が発生する点には留意が必要です。

8. まとめ:特定技能「介護」のスムーズな受け入れに向けて

特定技能「介護」は、介護現場の深刻な人手不足を補う有効な手段として注目されています。そのメリットを十分に活かすためには、制度の正確な理解と支援体制・手続きの事前準備が不可欠です。また、技能実習やEPA、在留資格「介護」など他制度との比較を行い、自社に最適な受け入れ方法を検討することも重要です。支援体制については、自社での対応と登録支援機関への委託の両面を検討しましょう。将来的な制度改正(訪問系への拡大等)にも注目しつつ、不明点は行政書士や専門機関に相談することを推奨します。

 

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