【最新】建設業のおける人手不足の理由と解決策を解説
2025.08.25
日本の社会インフラを支える建設業は、今、深刻な人手不足という大きな課題に直面しています。就業者の高齢化と若年層の入職者減少が進む一方で、災害復旧やインフラ老朽化対策など建設需要は依然として高く、このギャップは拡大する一方です。この記事では、最新のデータを基に建設業の人手不足の現状とその多岐にわたる原因を深掘りし、2024年問題の影響にも触れながら、国や企業が進める具体的な対策、そして将来に向けた展望を分かりやすく解説します。
CONTENTS
- 1.建設業における人手不足の深刻な現状と構造的課題
- 2. 建設業の人手不足を加速させる複合的な要因
- 3. 建設業界を取り巻く制度変更と人手不足への影響
- 4.制度改革が人手不足に与える複雑な影響
- 5. 国土交通省および業界団体が進める人手不足対策
- 6. 制度的・技術的アプローチの融合による担い手確保
- 7. 建設企業が実践すべき人手不足解消への具体的な取り組み
- 8. 建設業におけるICT・デジタル技術活用の最前線
- 9. 結論:ICTの活用は“人手不足時代の解決策”
- 10. 人手不足の建設業界で働くということ
- 11. 今、建設業界は「成長できる業界」
- 12. 建設業の人手不足解消に向けた企業の成功事例
- 13. 未来志向の取り組みで持続可能な産業へ
建設業における人手不足の深刻な現状と構造的課題
1. 就業者数の推移と高齢化の実態
国土交通省の統計によれば、1997年に約685万人いた建設業就業者は、2022年には約479万人へと200万人以上減少しました。この約30年間での大幅な減少は、建設業界における構造的な課題を浮き彫りにしています。

この就業者数の急減には、バブル崩壊後の建設投資の落ち込みが大きく影響しています。特に公共事業の削減により、建設需要は長期的に低迷。これにより、多くの建設企業が倒産や事業縮小を余儀なくされ、業界の雇用規模も縮小しました。さらに深刻なのは今後の動向です。団塊の世代が75歳を迎える2025年以降、建設業界では大量退職の時期が本格化すると予測されています。
国土交通省の試算では、新規入職者が増えなければ、2030年には就業者数が約400万人、2040年には300万人を下回る可能性があるとされています。
こうした人手不足は、インフラの老朽化対策、防災・減災工事、都市再開発など、建設需要がむしろ増加傾向にある中で発生しており、業界全体に深刻な影響を及ぼしています。人材の確保と育成は、建設業の持続可能性を支える喫緊の課題となっています。
就業者数の減少は、インフラ整備や防災・減災工事、都市開発など、建設需要が高まる中で起きているだけに、業界全体にとって大きな課題です。
2. 建設投資額の推移と就業者数のバランス
建設投資額は、インフラの老朽化対策や災害復興需要の影響を受け、近年は横ばいから微増傾向にあります。しかし一方で、建設業の就業者数は年々減少しており、現場では一人当たりの生産性向上が強く求められる状況にあります。
こうした人手不足は賃金上昇の圧力を高めており、結果として建設市場全体のコスト構造にも影響を及ぼしています。労働力の確保が難しくなる中、従来の労務集約型の体制からの脱却と、生産性向上に向けた技術導入や業務効率化が急務となっています。
3. 建設技能労働者の年齢構成
近年、建設業界では深刻な世代間の人材ギャップが顕在化しています。

国土交通省の資料によれば、建設業就業者の約3分の1が55歳以上を占める一方で、34歳以下の若年層は全体の約2割に過ぎないのが現状です。このように高齢化が進む中で、若手人材の確保と育成が急務となっています。
4. 若年入職者の減少傾向と「2025年問題」
団塊の世代(1947〜1949年生まれ)の大量退職が、2025年前後に集中すると見込まれています。このいわゆる「2025年問題」により、建設業界では技能労働者の急激な減少が避けられない状況です。さらに、若年層の入職者数は減少傾向が続いており、技能の継承が困難になるという深刻な懸念も高まっています。
5. 「3Kイメージ」と若者の職業選択
建設業は「3K(きつい・汚い・危険)」といわれる労働環境のイメージが根強く残っています。屋外や高所での作業、重量物の運搬など、体力的な負担が大きい仕事が多く、さらに粉塵や騒音、悪天候といった厳しい作業環境も少なくありません。また、事故やケガへの不安もあり、こうした環境が若者から敬遠される要因となっています。
一方で、IT産業やサービス業は、働きやすさや成長性といった魅力が評価され、若年層の人気を集めているのが現状です。
6. 建設業の魅力向上の課題と情報発信
建設業が持つ社会的意義――たとえばインフラ整備や防災・減災への貢献、さらにはドローンやICTなど最新技術の活用――といったポジティブな側面は、十分に発信されていないのが実情です。また、SNSや動画といった若者に身近なメディアでの情報発信も遅れており、建設業の魅力が届きにくい状況にあります。
さらに、業界内の多様な職種やキャリアパスに関する情報も乏しく、若者にとって将来像を描きにくい点が課題です。一部では業界団体によるイメージアップの取り組みも見られますが、業界全体としては依然として改善の余地が大きいと言えます。
7. 建設需要と人材供給のギャップ
高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化対策や、防災・減災工事、都市再開発などにより、建設需要は今後も安定的に見込まれています。しかしその一方で、技能労働者や技術者の供給が追いついておらず、特に地方では人材不足が深刻な課題となっています。
この人材の需給ギャップは、工期の遅延や賃金の高騰、さらには受注機会の損失といった問題を引き起こし、業界全体の対応力に影響を及ぼしています。結果として、こうした状況は建設業の持続可能性を大きく脅かす要因となっています。
8. 今後の展望
今後も建設業の就業者数は減少傾向が続き、高齢化の進行が避けられないと見られています。こうした中で、「3K」のイメージを払拭し、最新技術の導入や労働環境の改善を進めることで、若年層の参入を促すことが不可欠です。さらに、インフラの老朽化対策や大型プロジェクトなど、建設需要はむしろ増加傾向にあり、労働力不足の解消は業界全体にとって喫緊の課題となっています。
そのため、情報発信力の強化や職業イメージの刷新、そして多様なキャリアパスを示すなど、若者の価値観やニーズに即した取り組みが急務です。

建設業の人手不足を加速させる複合的な要因
労働時間の長さと休日の少なさ
- ● 長時間労働の常態化
建設業の年間総実労働時間は全産業平均よりも約300時間長い(例:全産業約1,600時間/年に対し、建設業は約1,900時間/年)。
週末や祝日も稼働することが多く、長時間労働が日常化している。 - ● 週休2日制の導入率の低さ
工期の厳守、天候の影響、長年の業界慣習などにより、他産業に比べて週休2日制の導入が進んでいない。
労働時間の調整が困難な現場も多く、若年層が敬遠する要因となっている。 - ● 働き方改革関連法の影響
2024年から時間外労働の上限規制が建設業にも適用されたが、現場では人手不足により工期とのバランスに苦慮している。
法改正による労働環境の改善は期待されるものの、運用面での課題も多い。
2. 給与水準と評価制度の課題
- ● 賃金カーブの早期ピークアウト
建設技能労働者の賃金は40代後半で頭打ちになる傾向があり、製造業などの50代前半にピークを迎える職種と比べて早い。長く働いても収入が伸びにくく、将来展望に乏しい。 - ● 若年層の給与水準の相対的低さ
高所作業・重労働などリスクの高い業務にもかかわらず、初任給や若手層の収入が他産業に比べて必ずしも高くない。技能や経験が正当に評価されにくい体質も影響。 - ● 日給制・日給月給制の不安定さ
雨天や資材遅延、工程の空きなどで突発的に収入が減少するケースもあり、生活の安定性に欠ける。
3. 社会保険未加入とその影響
- ● 社会保険の未整備な企業・個人事業主の存在
特に下請け・一人親方を中心に、健康保険や厚生年金、雇用保険の未加入状態が過去には蔓延していた。現在は国や業界団体の取り組みにより一定の改善は見られるが、依然として加入率に差がある。 - ● 将来設計に対する不安
社会保険未加入のまま働き続けると、老後の年金や傷病・失業時の保障が乏しく、生活設計が困難になる。この不安が、若者の建設業離れを助長。
4. 技術継承の困難とキャリアパスの不透明性
- ● 熟練労働者の高齢化と退職
団塊世代を中心に60代以上の職人が大量に退職期を迎え、高度な技術や暗黙知の継承が急務となっている。 - ● OJT中心の技能伝承の限界
現場任せの教育体制では系統的なスキル育成が困難。若手の育成計画や訓練プログラムの整備が遅れている。 - ● キャリアパスが不透明
「経験年数=評価」になりがちな業界では、能力や成果が昇進・昇給に直結しにくい。若手が中長期的なビジョンを描きにくい構造。 - ● 多能工化の遅れ
一人が複数の作業を担う「多能工」の育成が進まず、専門職間の壁が人材配置の柔軟性を妨げている。
5. 外国人労働者確保の難航
- ● 円安の影響による日本の魅力低下
円安の進行により、外国人にとっての日本での収入の価値が相対的に低下。韓国・台湾・中東諸国など、他国の方が収入水準が高い場合もある。 - ● 母国の経済成長と就業機会の増加
ベトナムやフィリピンなどの新興国では、自国での仕事が安定しつつあり、国外出稼ぎのインセンティブが減少。 - ● 国際的な人材獲得競争の激化
高齢化が進む他国(韓国・ドイツなど)でも建設人材を求める動きが加速しており、日本は競争上の優位性を失いつつある。
6.まとめ
以上のように、建設業の人手不足は、単に「きつい・汚い・危険(3K)」という印象だけではなく、構造的な労働環境・待遇・制度の歪みが複合的に影響しています。特に、若年層と外国人労働者という将来の担い手候補が定着しにくい仕組みは早急な見直しが必要であり、業界全体の意識転換と制度的な変革が求められていることがわかります。

建設業界を取り巻く制度変更と人手不足への影響
以下に、建設業界を取り巻く近年の制度変更と、それが人手不足に与える影響について体系的に整理・解説します。これらの制度改革は、働き方の是正や労働環境の改善を目的とする一方で、現場では対応コストや柔軟性の低下が懸念されており、人手不足をさらに深刻化させる可能性もあります。
1. 「建設業の2024年問題」:労働基準法改正の全面適用
背景と概要
- ● 2019年4月、労働基準法改正により、時間外労働の上限規制が導入。
- ● 建設業は5年間の猶予措置を受けていたが、2024年4月1日から全面適用された。
上限規制の内容
- ● 原則:月45時間・年360時間まで。
- ● 特別条項付き36協定を結ぶ場合:
- ○ 年720時間以内
- ○ 単月100時間未満
- ○ 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
- ○ 年720時間以内
影響と課題
昨今、長時間労働に頼ってきた現場体制の刷新が避けられない状態であることが課題となっています。このような中、人員の増強や工程の再調整が求められていますが、慢性的な人手不足のために進展が困難であり、また勤怠管理システムの導入など労務管理の高度化が必要で中小企業にとっては対応の負担が一層重くなっている現状があります。
2. 36協定の重要性と労働時間管理の厳格化
- ● 時間外労働には36協定の締結と労基署への届出が必要。
- ● 違反すれば、法的制裁や公共工事への入札制限の対象となる。
- ● 適切な運用には、システム化された勤怠管理や現場マネジメントの高度化が必須。
3. 特例措置(災害復旧等)とその限定的な適用
- ● 災害対応等に限って時間外労働規制の緩和措置あり。
例:地震・台風などによる緊急復旧工事など。
※ただし、特例が認められても、労働者の健康確保措置(健康診断、面接指導など)は義務。
4. 建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及とその意義
CCUSの概要
- ● 建設技能者一人ひとりの資格、就業履歴、研修受講歴を登録し、業界共通で「見える化」。
※国交省主導で普及促進中。
目的と期待される効果
- ● 技能や経験を客観的に評価することで、適切な賃金や待遇へつなげる。
- ● キャリアパスの明確化により、若年層の定着やモチベーション向上に寄与。
- ● 企業側には、現場管理の効率化、申請事務の簡素化などの利点。
現状の課題
登録作業や運用に現場負担がかかるとして、中小企業を中心に普及が鈍いこと、さらに公共工事での加点評価制度導入により、今後は事実上の義務化が進行する可能性があることが課題となっています。
5. インボイス制度導入による一人親方への影響
制度概要
- ● 2023年10月、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始。
※消費税の仕入税額控除を受けるためには、請求書の発行者が「課税事業者」である必要がある。
建設業界への具体的影響
一人親方などの免税事業者がインボイス未登録の場合、元請企業が消費税控除を受けられません。結果として仕事を受けにくくなる、元請から値引き要求を受ける、課税事業者への転換(負担増)から、廃業や法人化を迫られるケースもあります。
人手不足への波及
特に高齢の一人親方などが制度対応を負担に感じ、業界からの離脱・廃業が加速し、若手人材の獲得と並行して、熟練労働者の「制度による脱落」が深刻な課題となっています。
制度改革が人手不足に与える複雑な影響
近年の制度改革(労働時間規制、CCUS、インボイス制度など)は、建設業の近代化や健全化を目指すものですが、現場レベルでは対応の難しさが顕在化しており、人手不足の深刻化につながるリスクを孕んでいます。
- ● 時間外労働規制 ⇒ 人手不足現場では工期遅延・追加人員確保の困難化
- ● CCUS ⇒ 評価の透明化・若手育成の希望と同時に、運用負担の重さ
- ● インボイス制度 ⇒ 一人親方の離職加速と、下請け構造の再編圧力
制度は改革であり、方向性は正しい一方で、移行期の支援措置や現場の実態に即した柔軟性が求められます。業界内外の関係者による、多角的かつ実行力のある対応が不可欠です。

国土交通省および業界団体が進める人手不足対策
続いて、国土交通省および建設業界団体が進める人手不足対策について、主な取り組み別に整理していきます。これらの施策は、労働者の処遇改善、生産性向上、働き方改革など多面的に展開されており、建設業の持続的発展に向けた構造改革の一環となっています。
1. 労働者の処遇改善に向けた取り組み
社会保険への加入徹底と建設国保の活用
- ● 法定福利費の明示:見積書における法定福利費の内訳明示を徹底し、発注者が正当な費用を認識・支払う仕組みを整備。
- ● 社会保険未加入企業への指導強化:公共工事の入札要件と連動し、未加入企業の排除と加入促進を図る。
- ● 建設国保の役割:小規模事業所や一人親方が加入できる建設業専用の国民健康保険組合。業界特有の事情に即した保障や福利厚生を提供し、安心して働ける環境づくりに貢献。
安全衛生経費の適正な確保
- ● 安全衛生経費の明示と支払い:工事費において適切な安全衛生経費を明示し、元請から下請へ確実に支払う体制を整備。
- ● 安全な現場環境の構築:事故や疾病を防ぐことで、働きやすさと定着率の向上を図る。
設計労務単価の引き上げ
- ● 公共工事における単価引き上げ:設計労務単価を継続的に引き上げることで、技能労働者の賃金改善を図る。
- ● 波及効果と課題:公共工事では効果が見られるが、民間工事への反映が不十分で、全体への効果は限定的。
2. 「新・担い手3法」に基づく働き方改革の推進
適正な工期設定の推進
- ● ガイドライン策定と遵守:無理な短工期による工事契約(工期ダンピング)を防止。
- ● 発注者・受注者双方の責任:適切な工期設定とスケジュール調整が義務付けられ、労働負荷軽減と品質確保が狙い。
週休2日の推進
- ● モデル工事の拡大:国交省直轄工事における週休2日モデル工事を拡大し、民間工事へも波及を促進。
- ● ロードマップの策定:週休2日達成に向けた業界全体の目標と実施指針を提示。
働きやすい職場環境の整備
- ● 女性活躍支援:女性専用のトイレ・更衣室の整備、育児・介護との両立支援など、多様な人材が働ける職場環境づくり。
- ● 若年層への支援:入職支援奨学金、技能研修の充実、キャリアパスの提示によって、若者の定着を図る。
3. 生産性向上と現場の省力化
ICT施工の全面活用
- ● 測量・設計・施工・検査にICT導入:ドローン測量、3Dスキャナ、ICT建機、遠隔検査などの活用により省力化と正確性を向上。
- ● プレキャスト・ユニット化:部材の工場製作によって現場作業の軽減と工期短縮を実現。
BIM/CIMの推進とデータ基盤整備
- ● 3次元モデルの導入:建築・土木におけるBIM/CIM活用で設計から施工、維持管理までの効率化。
- ● 情報共有の高度化:関係者間でのリアルタイムなデータ連携を可能にするプラットフォーム構築が進行。
遠隔監視・管理技術の導入
- ● ウェアラブルカメラやセンサーの活用:遠隔地からの施工確認、安全指示が可能となり、熟練者の広域的支援も実現。
- ● 移動時間の削減:専門技術者の効率的な活用による人手不足対応とコスト削減を図る。
制度的・技術的アプローチの融合による担い手確保
国土交通省と業界団体は、人手不足への対応として、処遇改善、働き方改革、生産性向上の三本柱で包括的な対策を展開しています。これにより、従来の「3K」イメージの払拭と、建設業の職業魅力の向上を目指しています。ただし、これらの対策が現場で実効性を持つためには、中小企業への支援拡充や制度運用の柔軟性、そして発注者(特に民間)の理解と協力が不可欠です。

建設企業が実践すべき人手不足解消への具体的な取り組み
ここでは、建設企業が実践すべき人手不足解消への具体的な取り組みを体系的にまとめています。現場では、職業的魅力の向上、労働環境の改善、生産性向上、多様な人材の受け入れと育成といった複数の観点からの戦略的アプローチが求められています。
1. 魅力ある労働環境の整備と業界イメージの刷新
休日確保と残業削減、有給取得の促進
- ● 年間休日の目標設定と、工程・人員の見直しによる実現
- ● 残業時間の上限設定と業務の効率化による実労働時間の短縮
- ● 有給休暇の計画的付与制度導入と、取得を促す職場文化の醸成
給与体系の見直しと福利厚生の充実
- ● 経験・技能・貢献度に応じた透明性ある賃金・評価制度
- ● 資格手当・住宅手当・家族手当の支給
- ● 社員寮・借上社宅制度で遠方人材の受け入れを支援
- ● 資格取得支援制度や合格祝い金の導入
安全で快適な作業環境の実現
- ● 最新の安全装備と定期的な安全教育
- ● 夏季の熱中症対策(空調服・休憩所・水分塩分補給)
- ● 機械化・アシストスーツによる重量物作業の負担軽減
- ● 仮設トイレや更衣室の衛生管理と快適性の向上
2. テクノロジー活用による省人化・省力化の推進
建設ロボットの導入
- ● 危険・反復作業を代替するロボットの導入による負担軽減と生産性向上
- ● 具体例:溶接・塗装・鉄筋結束ロボットなど
ドローン・3Dスキャナの活用
- ● 測量・点検業務の効率化による省力化と安全性向上
- ● 危険箇所への立ち入りを減らし、労災リスクを低減
施工管理アプリ・クラウドサービスの活用
- ● 図面、日報、写真などを一元管理するアプリ導入
- ● 現場と事務所間のリアルタイムな情報共有による業務効率化
- ● ペーパーレス化による事務負担の軽減
3. 多様な人材の採用・育成・定着支援
若年層へのアプローチ強化
- ● 高校・専門学校・大学との連携によるインターンシップや職場体験の提供
→学生が建設業の現場を実際に体験できる機会を設け、業界への理解と関心を高める。 - ● SNSや動画を活用した若年層向けの採用広報活動
→若者に親しみやすいメディアを通じて、現場の雰囲気や働く魅力をわかりやすく発信。 - ● 奨学金制度や充実した研修制度による入職への経済的・教育的支援
→学費負担の軽減や入職後の成長支援を通じて、若年層の入職促進と定着を図る。
女性の採用・活躍促進
- ● 女性専用の更衣室やトイレの設置による職場環境の整備
→女性が安心して働ける快適な現場環境の構築を推進。 - ● 育児休業後の円滑な復職支援と柔軟な勤務制度の導入
→子育てと両立しやすい働き方を整え、長期的な就業継続を支援。 - ● 女性のキャリア形成を支えるロールモデルの育成とメンター制度の導入
→身近な成功事例の提示と個別のサポート体制により、活躍の場を広げる。 - ● ハラスメント防止の徹底と安心して相談できる体制の整備
→誰もが働きやすい職場づくりに向けた意識改革と仕組みづくりを強化。
多能工化と人材育成の強化
- ● ジョブローテーションの実施による多様な技能の習得支援
→複数の業務を経験させることで、柔軟に対応できる人材の育成を図る。 - ● OJTとOff-JTを組み合わせた体系的な人材育成プログラムの整備
→実務と座学をバランス良く取り入れ、計画的なスキル向上を促進。 - ● 資格取得支援と明確なキャリアパスの提示による定着率の向上
→成長の道筋を示すことで、将来への安心感と働きがいを高める。
4. 外国人材の戦略的活用と共生支援
特定技能外国人の受け入れ強化
- ● 即戦力人材としての特定技能外国人の活用
- ● 企業に求められる支援:
- ○ 生活オリエンテーション
- ○ 日本語教育
- ○ 相談窓口の設置
- ○ 生活オリエンテーション
- ● JAC(特定技能受入事業実施法人)との連携
技能実習制度から育成就労制度への移行対応
- ● 2027年導入予定の「育成就労制度」への円滑な移行に向けた体制整備
→制度変更を見据え、受け入れ企業としての準備を着実に進める。 - ● 労働力の確保にとどまらず、人材育成と国際貢献を重視した受け入れ方針の強化
→技能移転を通じた持続的な国際協力と、育成型の雇用環境の構築を目指す。
外国人への生活・文化支援
- ● 入国前・入国後の段階的日本語教育プログラム
- ● 住居、銀行口座、行政手続きなどの生活サポート
- ● 日本文化・職場ルールのオリエンテーション
- ● 日本人社員への異文化理解研修による職場の円滑な協働促進
このように、企業一社ごとの取り組みが、業界全体の魅力向上・持続可能性確保に直結することがわかります。

建設業におけるICT・デジタル技術活用の最前線
続いて「建設業におけるICT・デジタル技術活用の最前線」を要点ごとに整理してまとめます。
1. ICTがもたらす建設現場の変革
建設業では、調査・設計から施工・維持管理までの全プロセスにおいて、ICTの導入が進んでいます。これにより、生産性の向上、品質の確保、安全性の強化、働き方の改善が実現されつつあります。
各段階でのICT活用例
- ● 調査・測量:ドローン、3Dレーザースキャナ、GPS測量で、広範囲かつ高精度な地形情報を迅速に取得
- ● 設計・計画:BIM/CIM、3D-CAD、シミュレーション技術により、設計の高度化と干渉チェックが可能に
- ● 施工:ICT建機(マシンコントロール・ガイダンス)、施工管理アプリ、遠隔臨場で現場作業の効率化と省人化
- ● 維持管理:点検ロボットやIoTセンサーによる設備状態の常時監視と、予防保全による長寿命化
2. データ連携による業務の高度化
- ● 各工程で得られた情報を一元管理し、データを連携・活用することで、業務全体の効率と精度が向上
- ● AIによる分析で、最適な工法の選定やリスク予測が可能に
- ● 工程のトレーサビリティ確保により、品質管理・検査の高度化が進む
3. BIM/CIMによるフロントローディングと合意形成支援
- ● 3次元モデルを活用した設計・施工計画により、初期段階で干渉や課題を可視化し、早期に対処(フロントローディング)
- ● 発注者・協力会社との情報共有がスムーズになり、合意形成や設計変更対応の迅速化が可能
- ● 設計変更の影響(コスト・工期)も定量的に把握できるため、意思決定が明確に
4. プレファブ化・ユニット化による現場作業の削減
- ● 現場での手作業を減らすため、工場であらかじめ製作する部材の活用(プレキャスト・ユニット化)が進展
- ● 天候や人手に左右されにくくなり、品質の均一化と工期短縮に寄与
5. 先進技術の活用事例
ドローン測量・レーザースキャナ
- ● 高精度な3D地形データを短時間で取得
- ● 危険箇所への立ち入り不要による安全性向上
- ● 出来形測量・進捗管理への活用
AI技術
- ● 映像解析による不安全行動の検知・リスク予知
- ● 過去データからの最適な工程計画の自動生成
- ● 図面・文書からの情報抽出による事務作業の効率化
IoTセンサー・遠隔監視
- ● 作業員、機械、構造物にセンサーを装着し、位置・状態をリアルタイム監視
- ● 温湿度・騒音・振動など現場環境を常時モニタリング
- ● 重機の遠隔操作、遠隔地からの進捗確認が可能に
結論:ICTの活用は“人手不足時代の解決策”
建設業界におけるICT・デジタル技術の導入は、人手不足への対応、現場の安全性・効率性の向上、若年層の関心喚起といった面で大きな可能性を秘めています。今後は、現場への実装スピードと、技術を使いこなす人材育成が、デジタル化推進の鍵となるでしょう。
人手不足の建設業界で働くということ
~今こそチャンス、成長と活躍のフィールド~
人手不足だからこその“入りやすさ”
建設業界は慢性的な人手不足が続いており、有効求人倍率は他産業と比べても高水準にあります。そのため、未経験者や異業種からの転職者にも門戸が広がっており、就職・転職しやすい状況です。
- ● 採用基準の柔軟化や、研修制度の充実に取り組む企業も増加
- ● ポテンシャルや意欲を重視した採用が進む
今後の成長に期待される人材には、年齢や経験を問わずチャンスがあるのが特徴です。
多様な業務経験とスキルアップのチャンス
現場では人手が足りない分、若手にも早い段階から多様な業務が任される傾向があります。
現場作業だけでなく、以下のような幅広いスキルが身に付きます。例えば
- ● 施工管理、設計、積算、工程管理など多様な職域
- ● 資格取得支援制度を整備する企業も多く、成長しやすい環境が整っている
このように、実務を通じてスキルを高めながら、将来的には一級建築士や施工管理技士などの国家資格取得も目指せます。
実力主義で早期キャリアアップも可能
近年の建設業界では、年功序列よりも成果や実力を重視する企業が増加しています。
- ● 若くして現場責任者やチームリーダーに抜擢されるケースも
- ● 意欲次第で昇進・昇給のスピードが速い可能性あり
- ● 将来的に独立・起業を目指す人にとっても、現場経験と人脈が大きな財産に
着実にキャリアを積みながら、自分の理想の働き方を実現する道も開けます。
企業選びで押さえるべきポイント
建設業界には多くの企業が存在し、職場環境や労働条件はさまざまです。転職・就職を考える際には、以下の点をしっかり確認することが重要です。
- ● 休日数や残業時間、給与、福利厚生など基本的な労働条件
- ● 未経験者向けの教育・研修制度(OJTや資格取得支援など)の有無
- ● 企業の将来性や安定性(経営状況・受注実績・業界での評価など)
- ● 職場の安全管理体制、雰囲気、人間関係も見逃せない要素
事前に情報収集を行って、安心して長く働ける職場を選びましょう。
今、建設業界は「成長できる業界」
人手不足という課題はあるものの、それは若手や未経験者にとっては“チャンス”でもあります。しっかりとした環境を選べば、実力を発揮し、キャリアアップを実現しやすい業界です。技術や資格を身につけながら、社会に必要とされるインフラを支える――建設業界は「やりがい」と「将来性」を両立できる仕事の舞台となっています。

建設業の人手不足解消に向けた企業の成功事例
【事例1】テクノロジー導入とプロセス改善による生産性大幅向上
導入技術と活用方法
- ● 建設ロボット(溶接・塗装・揚重・床仕上げなど)を自社開発や外部連携で導入
- ● AI活用による配筋検査・安全管理システムの実用化
- ● BIM/CIMを全面導入し、設計から施工、維持管理までを一気通貫で効率化
効果
- ● ロボット導入により、単純作業や危険作業から技能者を解放し、作業負担を大幅に軽減
- ● AI活用で検査時間を短縮しヒューマンエラーを削減
- ● BIM/CIMによる手戻り防止、材料ロス削減、工期短縮(例:工期短縮20%、材料ロス10%減少)
- ● 全体的に労働時間の短縮とコスト削減を実現
【事例2】働き方改革と手厚い福利厚生で若手・女性の定着に成功
制度と運用実態
- ● 全現場での完全週休2日制を実現するための工程管理強化と協力会社との連携
- ● 育児休業後の復職支援、時短勤務、企業内保育所の設置
- ● 資格取得費用全額補助、合格祝い金、資格手当の増額
- ● 独身寮・借り上げ社宅、社員食堂、レクリエーション活動の充実
成果
- ● 従業員満足度向上と離職率の大幅低下(例:離職率30%減少)
- ● SNSやメディアでのポジティブな企業イメージ発信により、応募者数が増加し優秀な人材を獲得
- ● 女性技術者・技能者の採用比率が顕著に向上
【事例3】外国人材の積極活用と多文化共生による新たな活力創出
受け入れ体制と定着支援
- ● 特定技能外国人や元技能実習生向けの専門的日本語教育プログラムの提供
- ● 住居手配、銀行口座開設、行政手続き、医療受診などの生活サポート体制の整備
- ● 日本人社員との交流イベントや母国文化紹介の機会を設ける多文化交流の促進
- ● 多言語対応の相談窓口や母国語メンター制度の導入
効果
- ● 外国人材の勤勉さと学習意欲が現場の士気向上に貢献
- ● 多様なバックグラウンドによる新しいアイデアや改善提案の創出
- ● 将来的な海外展開を視野に入れたグローバル人材育成の基盤構築
- ● 特定技能評価試験を活用し、技術レベルの客観的評価と向上を実現
これらの事例に共通するのは、「テクノロジー活用による効率化」「働きやすい環境づくり」「多様な人材の受け入れと育成」という3つの柱です。これらをバランス良く推進することで、人手不足という課題に対して持続可能な解決策を実現しています。
未来志向の取り組みで持続可能な産業へ
建設業の人手不足は、日本の社会インフラの維持や経済成長にとって極めて重要な課題であり、その解消は喫緊の対応が求められています。
少子高齢化の進展や働き方改革の推進、技術革新の加速といった外部環境の変化に柔軟に対応しながら、持続可能な産業へと転換を図ることが不可欠です。そのためには国や業界団体、そして個々の企業が連携し、多角的かつ継続的な対策を推進し続けることが求められます。従来の「きつい・汚い・危険」といったイメージを払拭し、若者や女性をはじめ多様な人材にとって魅力的な「新3K(給与が良い、休暇が取れる、希望が持てる)」産業へと変革することが重要です。
さらに、ICTやDXの導入による生産性の大幅な向上と、働きがいのある職場環境の整備は、建設業が持続可能な未来を築くうえで欠かせない両輪となります。これらの取り組みを通じて、建設業は社会から必要とされ続ける産業として、新たな価値を創造しながら成長を続けていくことが期待されています。
- ● 貴社の状況に合わせた最適な採用プランの提案
- ● 複雑な申請書類作成のサポート・代行
- ● 最新の法改正や運用状況に関する情報提供
- ● 採用後の支援体制に関するアドバイス
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