【専門家コラム】どうなるベトナム送出機関
2021.12.24
今や日本国内で技能実習を行うベトナム人は20万人を超えました。
それを支えるベトナム送出機関も本日時点で500社を超えています。
ただし、この内、100社以上の送出機関が近々削除されることをご存じでしょうか?
ご説明の前に、本年のベトナム送出機関にかかるニュースを整理しましょう。
2021年6月13日に大手新聞朝刊に“ベトナム大手5社の実習生、失踪多数で受入れ停止へ”という報道が出ましたが、送出機関名が記載されていなかったため、ベトナム人を主として受け入れている監理団体や実習実施者の間では様々な情報が飛び交う騒ぎとなりました。
翌週6月18日には外国人技能実習機構より「ベトナム送出機関5社について“2021年8月18日から2022年2月17日”まで新規受入れ停止」との内容が公表されました。 これは“2018年と2019年における“失踪率”が全体平均(1.2%)より3~5倍ほど高かったこと“が理由とされています。
(受入れ停止措置対象送出機関)
OTIT NO. | 略称 | 送出機関名 |
---|---|---|
11 | HOGAMEX | HOA BINH IMPORT-EXPORT JOINT STOCK COMPANY |
77 | BATIMEX | Thai Nguyen Import Export Joint Stock Company |
99 | MH VIET NAM., JSC | MH Vietnam Investment Promotion Joint Stock Company |
132 | ITC | International ITC Joint Stock Company |
※下記送出機関は、2021年4月23日をもって既に停止済み | ||
141 | SONG HONG HR.,JSC | Song Hong International Human Resource and Trading Joint Stock Company |
本措置は対象送出機関との求人・求職情報のやり取りはおろか、既に日本国内にて技能実習を行う技能実習生にかかる送出し管理費を実習実施者から徴収することすらも法令違反にするという非常に厳しいものでした。
これまで認定送出機関として認めるかの判断はベトナム労働・傷病兵・社会省(MOLISA)の下部組織である海外労働管理局(DOLAB)が担ってきたのに対し、初めて日本側から“問題が多い送出機関の受入れは停止する”という強い意志を示したことは、今後への牽制含め大きな意味があるものと思われます。
続く6月22日にはDOLABから、送出機関“4社のライセンス取り消し”および“4社のライセンス再申請”が公表されました。
(ライセンス取り消し対象送出機関)
OTIT NO. | 略称 | 送出機関名 |
---|---|---|
116 | VIET NHAT HR, JSC | VIET NHAT HUMAN RESOURCE ASSOCIATE JOINT STOCK COMPANY |
169 | JV-SYSTEM | JV-SYSTEM TRADE AND INVESTMENT JOINT STOCK COMPANY |
250 | HUTRASERCO | HUU NGHI BAC GIANG JOISTOCK COMPANY |
255 | TRANSMECO | Transport Material Equipment Joint Stock Company |
(ライセンス再申請対象送出機関)
OTIT NO. | 略称 | 送出機関名 |
---|---|---|
66 | SAIGON INSERCO | Saigon International Service Co., Ltd |
74 | ALSIMEXCO | Aviation labour Supply and Import – Export Js Company |
277 | CIENCO NO-1 | Civil engineering construction corporation No1 – JSC |
187 | VINALINES | Vietnam National Shipping Lines |
また6月30日には、外国人技能実習機構とDOLABが取り決めた“送出機関の停止基準”が公表されました。
(停止基準)
①1年以内に100人以上が失踪した送出機関
②2016年~2019年に、2年連続で50人/年以上が失踪した送出機関
この内、2018年に失踪率が6%を超えた送出機関については技能実習計画認定の一時停止
※2018年の失踪率については、
「2018年と2019年の合計失踪者数」÷「2018年の送出総数」によって計算される
DOLABからは4社のライセンス取り消し理由については正式な発表はありませんでしたが、この基準等に抵触したものと思われます。
(ライセンス再申請については、後半でご説明いたします)
なお、上記8社(ライセンス取り消し4社+再申請対象4社)は、本日時点で既に認定送出機関から削除されています。
更に7月1日にはDOLABより送出機関に対して下記の通知が行われました。
①8月15日以降、ライセンスの有効期限を過ぎた送出機関には推薦状を発行しない
②11月15日以降にライセンスが取り消しとなった送出機関を公表する
これを受けて12月6日にはDOLABより33社の送出機関が有効期限切れとして公表され、12月21日付で外国人技能実習機構の認定送出機関(ベトナム)リストから、内20社が取り消されました。
以上が本年に起こった動きです。
日本の監理団体許可と同様に、ベトナムの送出機関も定期的に実績や決算関係および組織変更について報告を行い、失踪や技能実習生からの訴訟等の問題点がなければライセンスが更新されます。
また、送出機関として本店移転・役員変更・支店設置等があった場合には投資局への申請に加えDOLABへの変更届が必要です。これらの手続きが正確に行われていなかった、または失踪が多発している等があれば、ライセンス停止または取り消しとなります。
ここで本題に戻ります。
冒頭で100社以上の送出機関がライセンス取り消しとなることに触れました。
また、6月22日にライセンス再申請を言い渡され、結果として認定送出機関から外れた
4社についてご紹介しました。
これらはそれぞれの送出機関がベトナム投資局またはDOLABに対する必要な手続きを踏んでいなかったことが原因であり、失踪率が高かった等の事業運営のコンプライアンスに関わるような問題ではありません。 だから問題がないという訳ではありませんが、根本的に異なる理由によりライセンスが取り消しとなることをご理解頂ければと思います。
御存じの方も多いと思いますが、昨年11月13日にベトナムの国会において、「契約に基づいて外国で働くベトナム人労働者に関する法律」が成立し、2022年1月1日から施行されることとなっております(これにより現行法である“派遣契約によるベトナム人労働者海外派遣法”は失効します)。
また労働法改正に伴い、“監理団体の年間受入人数による提携送出機関数の制限(~100人までは3社まで/~200人までは5社まで)の廃止”や“介護労働者の送出しライセンスの廃止(=どの送出機関でも介護労働者を送出し可能となる)”といった噂が以前から流れておりますが、どれも確定した情報はございません。職種によっては候補者が非常に集まりにくくなっている現状があるものの、ベトナムが今後も主要な送出国の一つであることは間違いありません。
実習実施者であれば監理団体任せにせず、また、監理団体であれば送出機関が現地でやることを見て見ぬふりするのではなく、今一度自らが主体的に送出機関や技能実習生の選定に関わる姿勢が求められているのではないでしょうか。
宮谷 聡
株式会社FIVEGATE 代表取締役
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