毎年夏になると耳にする「お盆」。多くの人が故郷へ帰省し、お墓参りをするこの期間ですが、「お盆とは一体何をする行事なの？」と聞かれると、意外と詳しく説明できない方も多いのではないでしょうか。お盆は、単なる夏休みではなく、ご先祖様の霊をご自宅にお迎えし、感謝を伝えて供養するとても大切な日本の伝統文化です。
本記事では、「お盆とは何か」という基本的な意味や由来から、2025年の具体的な期間、準備、日ごとの過ごし方まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。お盆の知識を深め、心を込めてご先祖様をお迎えしましょう。

CONTENTS

• 1. そもそも「お盆」とは？意味と由来をわかりやすく解説
• 2. 【2025年】お盆の時期はいつ？地域による3つのパターン
• 3. お盆の過ごし方ガイド｜準備から片付けまでの流れ
• 4. お盆飾りの意味を知る｜なぜ、あれを飾るのか？
• 5. お盆にまつわるQ&A｜タブーや素朴な疑問
• 6. 日本全国・世界のお盆
• 7. 【まとめ】お盆は故人を偲び、命の繋がりを感じる大切な時間

1. そもそも「お盆」とは？意味と由来をわかりやすく解説

お盆とは、亡くなったご先祖様の霊がこの世に戻ってくるとされる時期に、感謝と供養の気持ちを込めて迎える日本の伝統行事です。一般的には家族が集まり、お墓参りをしたり仏壇を整えたりして、故人に想いを馳せる期間でもあります。

この行事は単なる長期休暇ではなく、命のつながりを感じる精神的な意味合いを持っています。忙しい日常から一歩立ち止まり、自分がどこから来たのか、誰のおかげで今ここにあるのかを見つめ直す大切な機会です。

1.1 ご先祖様の霊をお迎えし、感謝を伝える期間

お盆の期間は、ご先祖様や故人の霊が現世に戻ってくるとされる特別な時期です。家族は精霊棚（しょうりょうだな）を飾ったり、迎え火・送り火を焚いたりして霊を迎え、数日間ともに過ごしたあと、再びあの世へと送り出します。

1.2 語源は仏教の「盂蘭盆会（うらぼんえ）」

「お盆」という言葉の語源は、仏教行事の「盂蘭盆会（うらぼんえ）」です。この語はサンスクリット語の「ウラバンナ」（＝逆さ吊りの苦しみ）に由来し、地獄で苦しむ母親を救いたいと願ったお釈迦様の弟子・目連尊者（もくれんそんじゃ）の逸話に基づいています。供養を行うことで、苦しみから救われた母の霊に感謝する、という教えが始まりとされています。

1.3 日本古来の祖霊信仰との融合

実はお盆のルーツは仏教だけではありません。日本には古くから、夏に祖先の霊を祀る「祖霊信仰」が存在していました。これが仏教の盂蘭盆会と融合し、現在のような日本独自の「お盆」という文化が形成されたのです。

2. 【2025年】お盆の時期はいつ？地域による3つのパターン

お盆の時期は全国共通と思われがちですが、実は地域によって異なる3つのパターンがあります。ここでは、2025年のお盆の日程と、その違いの理由をわかりやすく解説します。

2.1 ①【8月盆】全国の多くの地域（2025年8月13日～16日）

もっとも一般的なお盆は8月13日から16日までの4日間です。13日に「迎え火」で霊を迎え、16日に「送り火」で送り出す流れです。この時期にあわせて「お盆休み」が設定される企業や自治体も多く、帰省ラッシュのタイミングともなります。

2.2 ②【7月盆】東京・神奈川などの一部地域（2025年7月13日～16日）

東京や神奈川、静岡の一部などでは、7月13日〜16日にお盆を行う「新盆（しんぼん）」が一般的です。これは明治時代に新暦が採用された際に、旧暦7月15日を新暦の7月15日にそのまま置き換えた結果とされています。

2.3 ③【旧暦盆】沖縄など（2025年は8月7日〜9日）

沖縄や奄美地方などでは、今も旧暦の7月13日〜15日を基準にお盆を行います。そのため、毎年日付が変動します。2025年の旧暦盆は、新暦で8月7日（迎え盆）〜9日（送り盆）にあたります。

2.4 なぜお盆の時期は地域で違うのか？

お盆の時期に地域差がある理由は、明治時代の暦の切り替え（旧暦から新暦へ）にあります。もともとは全国で旧暦7月15日前後にお盆が行われていましたが、暦の変更に対応する形で、地域ごとに次のように分かれました。

地域によって異なるのは、文化の違いを柔軟に受け入れてきた日本らしさのひとつとも言えるでしょう。

3. お盆の過ごし方ガイド｜準備から片付けまでの流れ

お盆は、ご先祖様の霊をお迎えし、数日間家で過ごしていただいた後、再びあの世へとお見送りする行事です。では、実際にどのような準備や流れがあるのでしょうか。ここでは、時系列に沿ってお盆の過ごし方をわかりやすく解説します。

3.1 【準備期間：〜12日】ご先祖様を迎えるための支度

お盆を迎える前には、ご先祖様が安心して帰ってこられるよう、住まいや祭壇の準備を整えます。

• お墓・仏壇の掃除
  ご先祖様に失礼のないよう、普段以上に丁寧にお墓や仏壇を掃除します。仏具も磨いて、清らかな空間を整えましょう。
  
  
• 盆棚（精霊棚）の設置
  ご先祖様の霊が滞在する場所として、真菰（まこも）のゴザを敷いた盆棚を用意します。仏壇とは別に祭壇を設ける家もあります。
  
  
• 盆提灯の飾り付け
  霊が迷わずに帰ってこられるよう、玄関先や仏壇のそばに提灯を飾ります。初盆（故人が亡くなって初めて迎えるお盆）の場合は、白提灯を用意します。
  
  
• お供え物の準備
  果物やお菓子、季節の野菜、故人が好んでいたものを供えます。きゅうりの馬・なすの牛（精霊馬・精霊牛）もこの時期の定番です。
  
  

3.2 【13日：迎え盆】ご先祖様のお迎え

お盆の初日は、ご先祖様をこの世にお迎えする大切な日です。

• 午前中にお墓参り
  家族でお墓を訪れ、お花や線香を供えて手を合わせます。このタイミングで、盆棚にお供え物を並べる家庭もあります。
  
  
• 夕方に迎え火を焚く
  玄関や庭先で「おがら（麻の茎）」を焚き、その煙を目印にご先祖様の霊をお迎えします。同時に、盆提灯にも明かりを灯します。
  
  

3.3 【14日〜15日：中日】ご先祖様との時間

お盆の中日は、ご先祖様が家で過ごしているとされる期間。家族や親戚でゆっくりと過ごす時間です。

• 家族・親族との会食
  故人の思い出を語り合いながら、食事を囲むのも大切な供養です。仏壇に料理を供える家庭もあります。
  
  
• 僧侶による読経（棚経）
  自宅にお寺の僧侶を招き、お経を読んでもらいます。地域によってはお寺へ赴いて合同で読経を受けるケースもあります。
  
  

3.4 【16日：送り盆】ご先祖様のお見送り

お盆の最終日、ご先祖様をあの世へと送り出す儀式を行います。

• 夕方に送り火を焚く
  迎え火と同様に「おがら」を焚き、ご先祖様が迷わず帰れるように煙で道しるべを作ります。
  
  
• お盆飾りの片付け
  ご先祖様をお見送りしたあと、盆提灯や盆棚を片付け、使った供物や飾りは地域の習慣に従って処分します。

4. お盆飾りの意味を知る｜なぜ、あれを飾るのか？

お盆では、独特な飾り付けやお供え物が使われます。こうした風習には一つひとつに意味が込められており、背景を知ることで供養の気持ちもより深まります。

4.1 盆提灯：霊が迷わないための目印

盆提灯は、ご先祖様の霊が自宅へたどり着くための灯りの道しるべです。霊が滞在する間の依り代（よりしろ）ともされ、仏壇の前や玄関に飾ります。

特に故人が初めて迎えるお盆（初盆／新盆）では、白提灯を使うのが慣習です。白は清浄を表し、特別な意味が込められています。

4.2 精霊馬・精霊牛：「早く来て、ゆっくり帰って」の願い

きゅうりやなすに割り箸や爪楊枝を刺して作る「精霊馬・精霊牛」。ただの飾りではなく、それぞれ意味を持ちます。

• きゅうりの馬：ご先祖様ができるだけ早く帰ってこられるようにとの願い。
  
  
• なすの牛：供物をたくさん積んで、ゆっくりと名残を惜しみながらあの世へ戻っていただくための乗り物。
  
  

この「馬」と「牛」の組み合わせは、日本独自の優しさとユーモアのある風習と言えるでしょう。

4.3 お供えする食べ物の意味

• そうめん
  長く細い形状から、「幸せが長く続くように」との願いを込めて供える家庭もあります。また、荷物を結ぶ「綱」としての意味もあります。
  
  
• お団子
  お盆の初めに供える「お迎え団子」、最終日に供える「送り団子」など、タイミングによって意味合いが異なります。霊をもてなす食事とされ、地域ごとの特色もあります。

5. お盆にまつわるQ&A｜タブーや素朴な疑問

お盆には、地域や家庭で様々な言い伝えやタブーが存在します。ここでは、よくある迷信や疑問について、その背景や理由を解説しながらわかりやすくお答えします。

5.1 お盆に海や川で遊んではいけない？

「お盆の間、海や川で遊ぶと霊に足を引っ張られる」という迷信があります。これはご先祖様の霊を敬い、穢れ（けがれ）を避けるための戒めとも言われています。また、お盆過ぎはクラゲの発生や海の波が高くなる時期でもあり、事故が起きやすいという現実的な理由もあります。安全面の観点からも注意が必要です。

5.2 結婚式などのお祝い事は避けるべき？

お盆はご先祖様を供養する仏事の期間です。そのため、「祝い事を避けるべき」という考え方があります。しかし、絶対的な禁止ではなく、現代では結婚式や誕生日をこの時期に行うことも少なくありません。大切なのは、親族間で理解を得て、場の雰囲気や地域の慣習に配慮することです。

5.3 お盆に神社へお参りに行っても良い？

お盆は仏教の行事であり、神道の神社は別の宗教です。そのため、神社への参拝自体は問題ありません。ただし、身内が亡くなって間もない「忌中」の期間は、神社の鳥居をくぐることを控えるのが一般的なマナーです。地域や家族の慣習に合わせることが望ましいでしょう。

5.4 「新盆（初盆）」とは何が違う？

「新盆（初盆）」とは、故人が亡くなってから四十九日を過ぎ、初めて迎えるお盆のことです。通常のお盆よりも丁寧で手厚い供養が行われ、親族や故人と親しかった知人を招いて法要を営むことが多いです。また、専用の白提灯を飾るなど準備にも特別な意味があります。家族にとっては特に重要な節目となる行事です。

6. 日本全国・世界のお盆

お盆は日本全国で行われる重要な行事ですが、地域ごとに特色があり、また世界にも類似した文化が存在します。ここでは、日本のお盆行事や海外の関連文化を紹介します。

6.1 京都五山送り火（大文字焼き）など各地の行事

• 京都五山送り火（大文字焼き）
  8月16日に行われる有名な行事で、山の斜面に大きな文字の火文字を灯し、ご先祖様の霊をあの世へ送ります。
  
  
• 長崎の精霊流し
  精霊船を川に流して霊を送り出す独特の風習です。
  
  
• 全国の盆踊り
  お盆の夜に踊りながら霊を慰め、地域の絆を深める伝統行事です。
  
  

これらは、お盆の送り火や供養が発展した形であり、地域の文化として親しまれています。

6.2 宗派による考え方の違い（浄土真宗など）

仏教の宗派によってお盆の捉え方には違いがあります。例えば浄土真宗では、亡くなった方はすぐに極楽浄土に往生するとされ、「霊が家に帰ってくる」という考えはありません。したがって、お盆は仏様の教えに感謝する「歓喜会（かんぎえ）」として法要を行います。宗派の違いを知ることで、より多様な信仰の理解につながります。

6.3 海外にもお盆はある？中国・ベトナムの事例

• 中国
  春にお墓参りをする「清明節（せいめいせつ）」や、日本のお盆のルーツの一つとも言われる「中元節（ちゅうげんせつ）」があります。
  
  
• ベトナム
  旧暦7月15日に「ブラン祭」と呼ばれる先祖供養の行事があり、日本のお盆と似た精神性があります。
  
  
• その他
  キリスト教圏の「ハロウィン」やメキシコの「死者の日（Día de Muertos）」も、死者の魂が帰ってくるとされる点で共通する文化的テーマがみられます。
  
  

こうした比較を通して、死者を敬い供養する文化が世界中に広く存在することがわかります。

7. 【まとめ】お盆は故人を偲び、命の繋がりを感じる大切な時間

お盆は、単なる休暇や行事ではなく、私たちの先祖や故人を敬い、感謝の気持ちを伝える日本の大切な伝統文化です。ご先祖様の霊が家に帰ってくるとされるこの期間は、家族や親族が集い、命の繋がりを改めて感じる貴重な時間でもあります。

お盆の時期は地域によって異なり、8月盆、7月盆、旧暦盆の三つのパターンがありますが、そのどれもが先祖供養の精神に基づいています。迎え盆の準備から送り盆の見送りまでの過ごし方には、それぞれ意味や願いが込められており、こうした伝統を知ることでより深く心を込めて供養ができます。

現代社会の変化とともにお盆の形式や過ごし方も変わってきていますが、ご先祖様への感謝や家族との絆を大切にするという本質は変わりません。お盆を通じて、過去と今をつなぐ命の大切さを感じ、周囲の人々との絆を深める機会にしていただければ幸いです。