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インドネシアの文化|民族・宗教・国民性の特徴やタブー

2億7千万人以上の人々が1万7千以上の島々で暮らす、世界最大の島嶼国家インドネシア。その魅力は「多様性」という一言に集約されます。
300を超える民族、イスラム教を主軸とした多宗教、そして島ごとに異なる豊かな自然が、複雑で奥深いインドネシア文化を育んできました。近年、日本で働くインドネシア人も急増しており、彼らを理解することは円滑なコミュニケーションやビジネスの成功に不可欠です。
本記事では、インドネシアの文化、民族、国民性の特徴を、宗教観や生活習慣、日本との違いを交えながらわかりやすく解説します。

CONTENTS

1. インドネシアの基本情報

まず、インドネシアの基本情報について、客観的なデータを用いて整理します。

1.1 国の概要:多様性のある島しょ国家

インドネシアの正式名称はインドネシア共和国(Republic of Indonesia)であり、東南アジアに位置する国家です。首都はこれまでジャカルタが中心都市として機能してきましたが、環境や人口集中などの問題を背景に、ボルネオ島東部に建設中の新首都ヌサンタラ(Nusantara)への移転計画が進められています。

地理的には、インドネシアは世界最大の島嶼国家として知られ、約1万7千もの島々から構成されています。主要な島にはジャワ島、スマトラ島、カリマンタン島、スラウェシ島、バリ島などがあり、それぞれ異なる民族や文化を抱えています。陸地面積は約191万平方キロメートルにおよび、これは日本の約5倍にもなります。排他的経済水域も含めた総面積では約806万平方キロメートルに達し、その広大さと多様性は世界でも際立っています。
人口は約2億8,400万人(2025年6月時点の推計)で、世界第4位の人口規模を誇ります。また、平均年齢は31〜32歳と比較的若く、労働力人口の豊富さが経済成長を支える要因となっています。

このように、インドネシアはその地理的・人口的スケールの大きさに加え、民族や文化の多様性に富んだ国であり、「多様性の中の統一」という国家理念のもとに成り立っています。

指標数値・内容
面積約1,904,600km²(陸地)
人口約284.4百万人(2025年推計)
平均年齢約31.5歳(2024年)
GDP(名目・2025年 est.)$1.43兆(約¥225兆)
GDP成長率(2024年)約5.03%
主要産業農業、鉱業(石炭・ニッケル等)、製造、サービス、観光


また「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)のデータによると、日本で働くインドネシア人は169,539人と推定され国籍別増加率で見ると、2022・2023年に1位、2024年は2位と急成長しており、ベトナム人材が得意とする産業はもちろん、医療・福祉業などでの活躍が顕著で、労働者数の内訳のうち「特定技能」の構成比が25.8%と最も高い水準となっています。

1.2 多様な民族構成

  •   ● 約300民族以上が共存する多民族国家

  •   ● 主な民族構成比(2024年推計):

    •     ○ ジャワ人:約40.2%

    •     ○ スンダ人:約15.5%

    •     ○ その他:マレー系・バタック・マドゥラ系・バリ人など

  •   ● 独自の言語文化を各地域が保持し、それぞれの民族が強いアイデンティティを持つ。
        →「インドネシア人」で一括りにできない、文化・習慣・言語の多様性が顕著。

1.3 多宗教国家

  •   ● 国民の約90%がイスラム教徒で、世界最大のイスラム教人口を有する国。

  •   ● その他、キリスト教(プロテスタント・カトリック)、ヒンドゥー教(主にバリ島)、仏教などが国家により承認されている。

  •   ● 国是「パンチャシラ(Pancasila)」の一要素である「多様性の中の統一(Unity in Diversity)」に基づき、宗教間の共存が重視されている。

1.4 日本で働くインドネシア人の現状

【在留目的・資格別の内訳(2024年末時点)】

出入国在留管理庁および専門調査のデータから、在留資格別人数は以下の通りです 。

在留資格人数構成比
技能実習約100,754人約50%
特定技能(1・2号合計)約53,538人約27%
技術・人文知識・国際業務約8,371人約4%
永住者約7,960人約4%
留学(学生)約7,783人約4%
その他(家族滞在等)残り約10,000人 

背景として、日本国内の労働力不足(特に介護・建設・製造など)をインドネシア人が担っており、インドネシア側でも技能実習経験の評価、日本語を活用した就職チャンスの増加などが進んでいることが要因として挙げられます(例:ジャカルタでの経験者向け職業紹介イベントなど)。

2. インドネシア人の国民性・価値観

以下は一般的な傾向をまとめたものであり、個人差・地域差が大きいことをご理解いただき参考にしてください。

2.1 楽観的でおおらか:「Tidak apa-apa(問題ない)」の精神

インドネシア人の口癖のひとつに「ティダ・アパアパ(Tidak apa-apa=大丈夫/問題ない)」があります。これは、「小さなことは気にしない」「なるようになる」といった、楽天的でおおらかな気質をよく表しています。

  •   ● トラブルが起きても深刻に捉えず、ポジティブに受け止める姿勢

  •   ● 怒りや不満を表に出さず、笑顔でやり過ごすことも多い

この精神は日本の「きっちり・正確」を重視する文化とは対照的で、文化的ギャップにもつながる場面があります。

2.2 家族・共同体(ゴトン・ロヨン)を最優先

インドネシアでは、個人の成功よりも家族や共同体の調和を優先する文化があります。「ゴトン・ロヨン(Gotong Royong)」という言葉は、助け合いや相互扶助の精神を象徴しています。

  •   ● 結婚式、葬儀、親の看病など、家族の行事や事情が最優先される

  •   ● 職場でも「家族を大切にしたい」という価値観が強く反映される

この価値観は、個人主義が強まりつつある日本とは異なる社会的な支え合いの形です。

2.3 宗教心が日常に深く根付いている

インドネシア人の多くは、宗教を生活の中心的な価値観として持っています。イスラム教が約87%を占めますが、キリスト教・ヒンドゥー教・仏教なども共存しています。

  •   ● 公的な身分証(KTP)には宗教記載欄があり、無宗教は原則認められていない

  •   ● 1日5回の礼拝や宗教行事が生活に強く組み込まれている

宗教がモラルや行動の軸になっているため、職場でも食事(ハラール)や勤務時間への配慮が必要になる場面があります。

2.4 人前での対立を避ける:メンツと調和

インドネシア人は、人前での対立や批判を避ける傾向があります。他人の「メンツ(名誉)」を重んじる文化であり、調和を壊さないことが重要とされます。

  •   ● 「No」と明言せず、曖昧な返答をする(断りにくい)

  •   ● 相手を立てる、気まずい空気を避ける努力が強い

日本の「本音と建前」にも通じる部分がありますが、対立回避の傾向はインドネシアの方がより強く、外国人マネジメント上の注意点でもあります。

2.5 目上の人や年長者を敬う文化

インドネシアでは、年長者や上位者に対する敬意が非常に重視されます。これは、イスラム教や儒教の影響による社会的ヒエラルキーの意識からきています。

  •   ● 年齢や職位に応じた言葉遣い・態度を求められる

  •   ● 職場でも「指示待ち」の姿勢や、上司への過度な遠慮が見られることもある

日本にも敬語文化はありますが、インドネシアではより上下関係を明確に意識する点が特徴です。

2.6 時間感覚:「ジャム・カレット(ゴムの時間)」とは

インドネシアでは、時間に対して柔軟な感覚があり、「ジャム・カレット(Jam Karet)=ゴムのように伸びる時間」という表現があります。

 

  •   ● 約束の時間に遅れてくることも珍しくなく、理由として「交通渋滞」や「家族の用事」などが挙げられる

  •   ● 厳格な時間管理に慣れていない人も多い

日本のように「時間=信頼」と捉える文化とは異なり、インドネシアでは柔軟性と人間関係重視の時間感覚が一般的です。

2.7 親切で人懐っこいフレンドリーさ

インドネシア人は人懐っこく、初対面でもフレンドリーに接する傾向があります。

  •   ● 笑顔で話しかける、困っている人に声をかける

  •   ● 職場でも助け合い・協力し合う姿勢が根付いている

この「人と人の温かさ」は、日本人にとっても安心感のある特性として評価されています。ただし、あまりにフランクすぎて誤解される場面もあるため、文化差の理解が重要です。
インドネシア人の特徴や国民性・性格・宗教などの詳細はこちらをご覧ください!

3. 宗教を理解する

インドネシア人の生活と宗教は密接に結びついており、特に多数派を占めるイスラム教への理解は、円滑な人間関係・職場環境づくりのために欠かせません。インドネシアでは国民の約87%(約9割)がイスラム教徒です(インドネシアの貿易と投資 2023年版)。イスラム教は日常の食事・服装・働き方・時間の使い方にまで深く関わっています。

3.1 イスラム教の5つの義務(五行)

イスラム教の「五行(ごぎょう)」とは、ムスリム(イスラム教徒)が人生を通じて実践すべき5つの基本的義務のことです。これはイスラム教の信仰と行動の柱であり、信仰を具体的に「行い」として体現するための指針とされています。

 アラビア語解説
1. シャハーダ(信仰告白)Shahada「アッラーのほかに神はなく、ムハンマドはその使徒である」と信じ、公言すること。これがイスラム信仰の根本。
2. サラート(礼拝)Salat1日5回、メッカの方角を向いて祈る。礼拝は心身の清めと、神とのつながりを確認する行為。
3. ザカート(喜捨)Zakat財産の一部(通常は2.5%)を貧しい人々に施す。社会的連帯と平等の実現を目指す。
4. サウム(断食)Sawmラマダン月に、日の出から日没まで飲食や喫煙、性行為などを断つ。自己鍛錬と神への服従の証し。
5. ハッジ(巡礼)Hajj経済的・身体的に可能な者は、一生に一度、イスラムの聖地メッカを訪れる義務がある(ヒジュラ暦12月)。


3.2 1日5回の礼拝

イスラム教徒は1日に5回、決められた時間にアッラー(神)に祈りを捧げる礼拝(サラート/Salat)を行います。これは日常生活の中で最も重要な宗教行為のひとつであり、信仰の実践として欠かすことができません。

礼拝の時間帯と名称

時間帯(目安)アラビア語名内容・タイミング
夜明け前(早朝)ファジュル(Fajr)一日の始まりを告げる礼拝。空が明るくなる前に行う。
正午頃ズフル(Dhuhr)日中最初の礼拝。仕事や授業の途中に行うこともある。
午後(15時頃)アスル(Asr)午後の活動中に行う礼拝。職場で配慮が必要な時間帯。
日没直後マグリブ(Maghrib)太陽が完全に沈んだ直後に行う礼拝。
夜(就寝前)イシャー(Isha)一日の締めくくりとして行う礼拝。

礼拝時間は地域や季節により多少変動します。各礼拝には「清浄な場所」と「簡単な水での洗浄(ウドゥ)」が必要です。礼拝には清潔なスペースと短時間の中断が必要なので、職場に簡易礼拝スペースを用意する企業も増えています。

3.3 ラマダン(断食月)とレバラン(断食明け大祭)

  •   ● ラマダンはイスラム暦の第9月にあたる約1か月間の断食期間。日の出から日没まで一切の飲食を断つことが義務付けられています(病人・妊婦などは免除)。

  •   ● 断食後の日没には「イフタール」と呼ばれる食事をとる。

  •   ● ラマダン終了後には「レバラン(イド・アル・フィトリ)」という断食明けの祭典があり、多くの人が帰省(ムディック)するため、日本の年末年始のように職場が一時的に人手不足になることもあります。

3.4 食事の戒律:ハラルとハラム

イスラム教では、摂取してよいもの(ハラル)と、禁じられたもの(ハラム)が明確に定められています。

3.4.1 豚肉とアルコール飲料の禁止

  •   ● 豚肉や豚由来の成分(ラードなど)

  •   ● アルコール飲料(酒・みりん・料理酒も含む)

これらはすべて「ハラム」=禁忌とされ、摂取することは信仰上許されていません。調味料や加工食品に含まれている場合もあるため、周囲の理解と配慮が重要です。

3.4.2 ハラル認証の基本

  •   ● 「ハラル」とはアラビア語で「許されたもの」という意味。

  •   ● ハラル認証を受けた食品・飲料は、イスラムの教義に従って適切に製造・処理されています。

  •   ● 外食や加工品を選ぶ際、「ハラルマーク」が表示されているかが重要な判断基準になります。

3.5 服装に関する考え方(ヒジャブなど)

イスラム教徒の女性は、体と髪を覆う服装を重視します。

  •   ● 「ヒジャブ(ジルバブ)」:頭髪を覆うスカーフ

  •   ● 肌の露出を控える長袖・長ズボン、ゆったりとした服を好む

企業や施設では、服装規定に対して柔軟に対応する姿勢が求められます。特に制服や作業着を指定する場合は、宗教上の服装への配慮が必要です。

3.6 信仰には個人差がある

「イスラム教徒」と一口に言っても、信仰の強さや戒律の守り方には大きな個人差があります。宗教は個人の内面に深く関わるものであり、地域や世代、育った環境、本人の考え方によってその実践のあり方はさまざまです。

  •   ● 都市部の若者の中には、比較的自由な服装や食生活を選ぶ人もおり、必ずしもすべての戒律を厳密に守っているとは限りません。

  •   ● 一方で、地方出身者や年配の方は、ラマダンの断食や1日5回の礼拝を厳格に守るなど、伝統的な信仰を大切にする傾向が強いことがあります。

また、同じ職場にいるイスラム教徒同士でも、礼拝の頻度やハラル食へのこだわりに違いがある場合があります。こうした違いは、信仰の「強さ」や「正しさ」の問題ではなく、「それぞれの信じ方・向き合い方の違い」として尊重すべきものです。

宗教や文化は、個人のアイデンティティの一部であると同時に、一人ひとり異なる形で表れるものなのでそうした多様性を理解し、相手の立場や背景に耳を傾ける姿勢が信頼関係の土台となります。

4. 日常生活に見る文化と習慣

日本とは異なるインドネシア独自の生活習慣を知ることは、互いの文化を尊重し、誤解や摩擦を避ける第一歩となります。
ここでは、特に生活の中でよく見られる特徴を、文化的背景を交えて紹介します。

4.1 食文化:右手で食べる/辛い味が基本

■ 手食文化(右手)

インドネシアでは、伝統的に右手を使って直接食べる「手食」の習慣があります。
フォークやスプーンを使う人も増えていますが、特に家庭やローカル食堂では今も一般的です。なお、左手は不浄とされ、食事や握手には使いません(詳細は4.2参照)。

■ サンバル(辛味調味料)

「サンバル」と呼ばれる唐辛子ベースの調味料を日常的に使用します。多くの料理が辛口で、辛さに対する耐性は日本人より高い傾向があります。

■ 主食は米

日本と同様、米が主食です。ただし、油で炒めた「ナシゴレン」や、ココナッツ風味の「ナシウドゥック」など、調理方法が多彩です。

4.2 身体に関する習慣:左手は不浄、頭は神聖

■ 左手は不浄

トイレ後の清拭に左手を使う習慣から、左手は不浄(清潔でない)とされています。握手・食事・物の受け渡しなどは必ず右手を使用するのが礼儀です。

■ 頭を触るのはNG

インドネシアでは、頭は「魂」や「精霊」が宿る神聖な場所とされます。子どもや他人の頭を無意識にポンと叩いたり、なでたりするのは禁物です。

4.3 金銭感覚:割り勘より「ごちそう」

グループでの食事では、年長者・誘った人・経済的に余裕がある人がまとめて支払うのが一般的です。日本のような1円単位の割り勘は「ケチ」と受け取られることもあります。お金に関するやり取りはあいまいに保たれることが多く、「貸し借り」にも寛容です。

4.4 衛生観念:1日2回の水浴び(マンディ)

インドネシアでは高温多湿の気候のため、朝と夕の2回「マンディ(水浴び)」をするのが日常で、バスタブに浸かる文化は一般的でなく、桶やシャワーで体を洗い流すスタイルが主流です。
「清潔さ=体を頻繁に洗うこと」と捉えられ、日本のように「湯に浸かってリラックス」はあまり見られません。

4.5 コミュニケーション:挨拶は「もうご飯食べた?」

インドネシア人は相手との距離を縮める言葉かけを大切にします。例えば、以下のような挨拶が、日常的に使われます。

インドネシア語意味実際の意図
Sudah makan?もうご飯食べた?=元気?/調子はどう?
Mau ke mana?どこ行くの?=こんにちは(特に用はない)

これらは深い意味を持たない「会話のきっかけ」であり、日本人が「詮索された」と誤解しないことが重要です。

5. 知っておきたいインドネシアのタブー

インドネシアでは、日本とは異なる宗教・文化的背景により、日常の行動や会話にも「してはいけないこと(タブー)」が存在します。

ここでは、代表的な例を行動・食事・会話・贈り物の4つの観点から紹介します。

5.1 行動のタブー:無意識のしぐさが失礼に

タブー行為理由/背景
左手で物を渡す・受け取る左手はトイレで使用する「不浄の手」とされ、礼儀に反する
感情的に怒鳴る公の場で怒りを露わにすることは恥とされ、敬遠される
子どもの頭をなでる頭は魂が宿る神聖な場所とされ、触るのは無礼とされる
人に足の裏を向ける/足で物を指す足は身体の中で最も低い・汚れた部位とされ、極めて無礼
握手の際に左手を使う/ポケットに手を入れる礼儀に欠けると見なされる

ポイント:怒りを表に出さず、敬意ある態度とジェスチャーを心がけましょう。

5.2 食事のタブー:宗教への配慮が不可欠

タブー行為理由/背景
豚肉やアルコールを提供するイスラム教では豚とアルコールは「ハラム(禁忌)」
ラマダン中の日中に飲食をする/食事に誘う断食をしている人の前での飲食は配慮を欠く行為とされる

ラマダン期間中は、レストランが昼間閉店していたり、目立たないように間仕切りをして営業していることもあります。

ポイント:食事は信仰と深く結びついているため、本人に確認する姿勢が大切です。

5.3 会話のタブー:宗教・政治・動物に関する注意

タブー話題理由/背景
宗教に対する批判や軽視宗教は生活の中心であり、批判は深刻な侮辱にあたる
政治体制への否定的な発言政治は慎重に扱うべきセンシティブな話題
動物(犬・豚)を侮辱的に使う言葉これらの動物は不浄・侮辱と結びつく場合があり、要注意
身体的特徴や家族構成を話題にするプライバシーへの配慮が求められる

ポイント:気軽な雑談でも、相手の宗教観・政治観を尊重し、慎重な話題選びを心がけましょう。

5.4 贈り物のタブー:意図しない不快感を避ける

贈ってはいけない物理由/背景
アルコール類イスラム教徒にはハラム(禁忌)
豚肉・豚由来の加工品(豚皮の財布など)豚はイスラム教で完全に禁じられている
犬の絵柄がついた雑貨など犬は不浄な存在とされ、絵や図柄も敬遠されることがある
香水(特に別れの意味を含む文化圏も)場合によっては「距離を置きたい」という意味にとられることがある
左手で渡す贈り物たとえプレゼントでも左手で渡すのは無礼とされる

ポイント:贈り物は、相手の宗教・文化的背景に配慮しつつ、右手で丁寧に渡しましょう。

6. インドネシア人材と働く上でのポイント

インドネシア人材は、労働力不足が深刻化する日本において貴重な戦力となり得ます。ただし、宗教や文化の違いを理解せずに採用・運用すると、トラブルや離職につながることもあります。
ここでは、インドネシア人材を雇用・活用するために企業が知っておくべき実務ポイントを解説します。

6.1 採用するメリット

■ 若く活力のある労働力

インドネシアの平均年齢は約29歳(日本は約49歳)と、アジアの中でも特に若年層の比率が高い国の一つです。これは、労働力としての活力・持久力・柔軟性に優れた人材が豊富に存在していることを意味します。
若いからこそ期待できるポイントとして、以下が挙げられます。

 

  •   ● 体力があり、現場での作業にも適応しやすい

  •   ● 学習意欲や向上心が高く、技術習得もスムーズ

  •   ● 長期的な育成を視野に入れた雇用が可能

技能実習や特定技能などの分野では、短期間で現場に慣れ、即戦力として活躍できる若年人材を確保できることは、企業にとって大きな利点です。また、多くの若者が「日本で技術を学び、経験を積みたい」という明確な目的意識を持って来日しており、仕事に対して前向きな姿勢が期待できます。

■ 親日的・温厚な国民性

インドネシア人の多くは、日本に対して親しみを持ち、尊敬の念を抱いている親日的な国民性が特徴です。日本文化やアニメ、技術、礼儀正しさへの関心が高く、来日前から日本にポジティブなイメージを持っている人が少なくありません。

採用現場でのメリット
  •   ● 日本語や日本文化への適応意欲が高い
        → 来日前から日本語を学んでいる人も多く、現場への定着がスムーズです。

  •   ● 温厚で協調性があり、人間関係のトラブルが少ない
        → 職場のルールを尊重し、チームワークを大切にする傾向があります。

  •   ● 上司や年長者への礼儀を重んじる文化背景
        → 年功序列や上下関係がある日本企業でも受け入れやすい性格特性です。

現場の声からも評価が高く、実際にインドネシア人材を受け入れた企業からは「まじめで前向きな姿勢に助けられている」「明るく穏やかな性格で、職場の雰囲気が良くなった」といった声も多く寄せられています。

■ 高い学習意欲と技術習得への関心

インドネシアから来日する多くの人材は、「日本で技術を学び、将来に活かしたい」という強い目的意識を持っています。来日前から日本語や日本文化を学び、将来的には母国での起業・就職・家族の生活向上を目指すなど、明確な目標を持っている人が少なくありません。

採用の現場で見られる特徴
  •   ● 新しい知識やスキルの習得に積極的
        → 研修やOJT(実務訓練)にも真剣に取り組み、職場での成長が期待できます。

  •   ● 丁寧に教えれば確実に吸収する姿勢
        → 指導に対する感謝の気持ちが強く、粘り強く取り組む傾向があります。

  •   ● 「教える側」の意識改革にもつながる
        → 教育の成果が見えやすく、教える側のモチベーション向上にもつながることがあります。

技能実習制度や特定技能制度では、業務スキルだけでなく「継続的な学習態度」が問われますが、インドネシア人材はこの点でも高い適性を持っています。例えば、技能試験や日本語試験にも前向きに取り組む姿勢や成果を出すことで日本に貢献したいという意識が強いことが挙げられます。

このように、「教えがいのある人材」を求める企業にとって、インドネシア人は非常に魅力的な存在といえるでしょう。

6.2 職場での配慮事項

採用後の定着率を高めるためには、宗教・文化に配慮した就労環境の整備が重要です。

6.2.1 礼拝の時間と場所の確保

配慮内容解説
就業時間中の礼拝昼(12時頃)や午後(15時頃)の礼拝が勤務時間と重なることがあるため、5~10分程度の中断が可能な体制づくりが理想。
礼拝スペース更衣室の一角や空き会議室など、清潔で静かな場所を確保することで安心感につながる。

礼拝はイスラム教徒にとって欠かせない義務。理解を示すことで信頼関係が築けます。

6.2.2 食事・飲み会でのハラル対応

配慮内容解説
社員食堂・弁当の配慮豚肉・アルコールを含まないハラル対応メニューを選択肢として用意。原材料の情報提供も有効。
懇親会・飲み会アルコールが苦手な人もいるため、飲酒の強要はNG。ソフトドリンクや別メニューを用意し、参加の自由度を高めることが大切。

「共に食べる場」も職場の絆づくりの一環。無理なく参加できる配慮をしましょう。

6.2.3 レバラン休暇(断食明け大祭)への配慮

配慮内容解説
長期休暇の希望ラマダン終了後の「レバラン(イド・アル・フィトリ)」は、家族との再会・祈りの時間として非常に重要。
調整の工夫この時期に1週間以上の休暇申請が集中する可能性あり。事前にスケジュールを共有し、チーム内で計画的に調整を。

日本の「年末年始」や「お盆」に相当する宗教行事として認識しましょう。

6.3 マネジメントのコツ

インドネシア人材の能力を最大限に活かすには、文化的背景を理解した指導・管理が不可欠です。

6.3.1 指示は具体的かつ明確に

NG例OK例
「いい感じにやっておいて」「この資料を15時までにA4で2部印刷して渡してください」

曖昧な表現は誤解を招きやすいため、「いつまでに」「何を」「どうやって」を明確にしましょう。

6.3.2 人前での叱責を避ける

インドネシアでは、「人前で叱られる」ことは非常に恥ずかしいこととされ、個人の尊厳(メンツ)を傷つけられたと感じることがあります。これは、調和や対面を重んじる文化背景に根ざした価値観であり、怒鳴ったり、大勢の前で注意することは逆効果になりやすい点に注意が必要です。

効果的な指導のポイント
  •   ● 指導や注意は、できるだけ1対1の場で行う
        → 周囲の目がない場所で、冷静かつ穏やかに伝えることで、受け入れられやすくなります。

  •   ● 感情的に叱るのではなく、事実ベースで伝える
        →「なぜそれが問題なのか」を丁寧に説明することで、納得と改善につながります。

  •   ● 人格を否定せず、行動にフォーカスする
        →「あなたが悪い」ではなく、「このやり方はこう改善しよう」という伝え方が効果的です。

信頼関係のカギは「敬意」と「対話」

インドネシア人材は、目上の人や指導者に対して敬意を払う文化を持っていますが、それは「感情的な叱責を受け入れる」という意味ではありません。むしろ、誠実で丁寧なコミュニケーションを通じて信頼関係を築こうとする姿勢を高く評価します。「叱る」ではなく「育てる」ための対話を重視することが、チーム全体の関係性向上と長期的な定着にもつながるでしょう。

このように、誠実で丁寧なコミュニケーションが信頼関係を築く鍵となります。

6.3.3 家族の事情への理解を示す

インドネシアでは、「家族は何よりも大切」という価値観が非常に強く根付いています。冠婚葬祭、病気、出産、宗教行事など、家族に関わる出来事が発生した際には、仕事よりも家族を優先するのが自然な考え方です。

職場での配慮ポイント
  •   ● 家族の病気や緊急事態での急な休暇申請にも、できる限り柔軟に対応する
        →「なぜその日に休むのか」を問い詰めるのではなく、まず理解を示す姿勢が大切です。

  •   ● 宗教行事や冠婚葬祭は「家族全員が参加するもの」という認識
        → 日本とは異なり、兄弟や親戚の行事にも参加が求められる場合があります。

  •   ● 事前に「どういう場合に申請が必要か」「誰に連絡すればよいか」などルールを明確に
        → 柔軟な対応と同時に、基本的な社内ルールは丁寧に説明し、共有しておきましょう。

「理解しようとする姿勢」が信頼につながる

このような文化的価値観に配慮し、会社が家族を大切にする姿勢を理解してくれていると感じることが、インドネシア人材の安心感や職場への定着につながります。「家庭の事情で休むこと=無責任」ではなく、文化的な違いとして受け止めることが、健全なマネジメントの第一歩です。

6.3.4 時間感覚のギャップに対処する―「ジャム・カレット」と日本の時間厳守をどう橋渡しするか

インドネシアの「ジャム・カレット(ゴムの時間)」

インドネシアでは、時間に対して柔軟でおおらかな感覚が一般的です。「ジャム・カレット(JAM KARET)」とは直訳すると「ゴムの時間」、つまり時間が伸びたり縮んだりする感覚を意味し、多少の遅刻は許容される文化的背景があります。

この背景には

  •   ● 気候(雨季や渋滞などで遅延が日常的)

  •   ● 人間関係重視の価値観(「時間よりも人との関係が大事」)

  •   ● 厳密な時間管理に慣れていない社会インフラ

といった要因があります。

対応:ルールを丁寧に説明し、繰り返し伝える

一方、日本では「時間を守ること」が信頼や責任感の証とされ、ビジネスの前提条件です。このギャップを埋めるためには、単に「時間を守れ」と伝えるのではなく、その理由や背景を丁寧に共有することが重要です。対応のポイントは以下の通りです。

  •   ● 日本では「時間=相手への礼儀」であり、遅刻は信頼を損なうことを説明

  •   ● 就業規則やシフト表に基づいて、「何時に何をするか」を明文化

  •   ● 初期研修やOJTで繰り返し伝え、体感として慣れさせる

  •   ● 遅刻があった場合も、頭ごなしに叱るのではなく理由を確認し、対話で改善を図る

インドネシア人材にとって「日本式の時間管理」は最初は戸惑うこともありますが、理由がわかれば順応していく人も多い印象です。受け入れ側が「文化の違い」を理解しつつも、職場のルールとして明確にし、根気よく伝えることが、良好な職場づくりの鍵となります。

インドネシア人材の活用は、単なる「労働力の確保」にとどまらず、多様性を受け入れ、育てていく職場文化の第一歩でもあります。時間感覚ひとつとっても、一方的な「指導」ではなく「理解と対話」をベースにしたアプローチが、彼らのモチベーションと定着率を大きく左右すると理解しましょう。

7. 多様なインドネシア文化を尊重し、良好な関係を築こう

インドネシア文化を理解するうえで、欠かせないキーワードは「多様性」と「宗教」です。世界最大の島嶼国家であるインドネシアには、数え切れないほどの民族、言語、宗教が共存しており、その社会には一つの型にはまらない多様な価値観が息づいています。また、国民の多くがイスラム教徒であり、宗教は日常生活や行動様式に深く根ざしています。こうした文化背景を知らずに接すると、思わぬ誤解や摩擦を生むこともあります。しかし逆に言えば、相手の文化や宗教への理解と配慮をもって接することで、信頼関係を深める大きなチャンスにもなります。

大切なのは、ステレオタイプで人を判断せず、一人ひとりの個性と向き合う姿勢です。文化の違いを「間違い」や「非常識」と捉えるのではなく、「なぜその行動が生まれるのか」という背景に目を向けることで、相互の理解と尊重が育まれていきます。これは、職場や地域での円滑な人間関係の構築にもつながる重要な姿勢です。

インドネシア人と良好な関係を築くには、まず私たち自身が「違いを受け入れる力」を身につけることが求められます。異文化との出会いは、ときに戸惑いを伴いますが、それを乗り越えた先には、お互いの成長と豊かな関係性が待っています。

文化の違いを障壁とするのではなく、可能性と捉えて、共により良い未来を築いていきましょう。

 

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