外国人の在留資格「高度人材」とは?ポイント制・申請方法を解説
2025.09.12
近年、日本の国際競争力強化やイノベーション創出の鍵として、優秀な外国人「高度人材」の受け入れが重要視されています。そのための「高度人材ポイント制」や在留資格「高度専門職」には、様々な優遇措置がありますが、制度が複雑です。
この記事では、高度人材の定義からポイント制の仕組み、具体的な優遇内容、申請手続き、企業の採用方法まで網羅的に解説していますので参考にしてください。
CONTENTS
- 日本が求める「高度人材」とは?その定義と重要性
- 「高度人材ポイント制」の仕組み:ポイント計算と基準
- 高度専門職ビザで受けられる優遇措置【1号・2号別】
- 高度専門職ビザ(在留資格)の申請手続きの流れ
- 企業が高度人材を採用するためのアプローチ
- 高度人材受け入れにおける企業側のメリットと留意点
- まとめ:高度人材ポイント制を活用し、優秀な外国人材を確保するために
日本が求める「高度人材」とは?その定義と重要性
高度人材(高度外国人材)の定義:専門知識・技術を持つ優秀な人材
高度人材(高度外国人材)とは、日本の経済成長やイノベーション創出に貢献が期待される高い専門性や能力を持つ外国人のことです。代替が難しく、国内労働市場を補完する質の高い人材像を想定しています。具体的には研究者や技術者、経営者や専門的な職務に就く方などが当てはまります。
なぜ日本は高度人材の受け入れを推進するのか?(国家戦略と背景)
日本が高度人材の受け入れを推進する背景には、グローバル化に対応する国際競争力の維持と向上という目的があります。新たな技術革新や産業創出の促進と、少子高齢化による専門分野の労働力不足への解決策となり得る高度人材は、政府の成長戦略における重要課題と位置づけられています。
在留資格「高度専門職」の種類:1号(イ・ロ・ハ)と2号
高度人材を対象とした優遇措置のある在留資格が「高度専門職」です。「高度専門職」には1号と2号があり、1号は活動内容により次の3つに分類されます。
【高度専門職1号の種類】
- ● 高度専門職1号(イ):高度学術研究活動
○ 対象:大学教授、研究者など
- ● 高度専門職1号(ロ):高度専門・技術活動
○ 対象:エンジニア、医師、弁護士、コンサルタントなど
- ● 高度専門職1号(ハ):高度経営・管理活動
○ 対象:企業の経営者、役員、管理職など
なお、高度専門職2号は1号から移行が可能な上位資格であり、1号で3年以上活動した人が対象になります。より広範な活動と無期限の在留が認められています。
「高度人材ポイント制」の仕組み:ポイント計算と基準
高度人材ポイント制とは?目的と概要
高度人材ポイント制とは、外国人材の能力を学歴、職歴、年収などの項目に分け、ポイントで評価する仕組みです。一定基準(70点以上)を満たす人材を「高度外国人材」と認定し、出入国在留管理上の優遇措置を与えています。
ポイント評価の対象となる活動(1号イ・ロ・ハ)
ポイント評価の対象となるには、高度専門職1号(イ)(ロ)(ハ)のいずれかの活動に従事または従事予定であることが前提です。ただし、活動類型に応じて評価項目や配点に若干の違いはあります。
ポイント計算の仕組み:学歴、職歴、年収、年齢、研究実績、資格など
ポイント評価項目は主に以下のようなカテゴリーに分かれています。
【主な評価項目】
- ● 学歴(学位)
- ● 職務経歴(実務年数)
- ● 年収(年齢別基準)
- ● 年齢(若年層加点)
- ● 研究実績(特許、論文など)
- ● 地位(役職)
- ● 保有資格(国家資格、IT資格など)
ポイント計算表の見方と具体的な計算例
では、出入国在留管理庁HPに掲載されているポイント計算表の見方について具体的に見ていきましょう。

まず、「高度学術研究分野」「高度専門・技術分野」「高度経営・管理分野」のうち、いずれかの分野を選択します。次に、分野ごとの評価項目および配分されるポイントを確認し、自身の経歴に該当する項目にポイントを付与していきます。すべてのポイント合計点が70点以上になれば合格です。
以下に、最も件数の多い「高度専門・技術分野」(高度専門職1号ロ)のポイント算出プロセスを具体例付きで紹介しますので、参考にしてください。
■モデルケース①
「29歳エンジニア。日本の大学(加点対象大学)を卒業し、現在年収410万。N1(JLPT)取得。」
(加算項目内訳)
- ● 29歳・・15ポイント(基本)
- ● 日本の大学(加点対象大学)を卒業・・10ポイント(基本:大卒)+10ポイント(ボーナス:日本の大学)+10ポイント(ボーナス:加点対象大学)
- ● 年収410万・・10ポイント(基本)
- ● 日本語能力N1・・15ポイント(ボーナス)
合計:70ポイント
■モデルケース②
「33歳コンサルタント。海外の大学(加点対象大学)を卒業し、実務経験5年以上で現在の年収は550万。N1(JLPT)保持者。」
(加算項目内訳)
- ● 33歳・・10ポイント(基本)
- ● 海外の大学(加点対象大学)を卒業・・10ポイント(基本)+10ポイント(ボーナス:加点対象大学)
- ● 実務経験5年以上・・10ポイント(基本)
- ● 年収550万・・15ポイント(基本)
- ● 日本語能力N1・・15ポイント(ボーナス)
合計:70ポイント
特別加算項目(ボーナスポイント)について
評価項目には、基本ポイントに加えて、特定の条件を満たす場合に加算される特別加算項目(ボーナスポイント)があります。
【特別加算項目(ボーナスポイント)の例】
- ● 先端産業に従事している
- ● 日本の大学を卒業した
- ● 日本語能力(N1など)を取得している
- ● 世界大学ランキングでトップの大学を卒業した
- ● 投資運用業関連の業務に就いている など
高度専門職として認定されるための基準点(70点以上)
加点項目の合計ポイントが70点以上で「高度外国人材」と認定され、優遇措置の対象となります。
高度専門職ビザで受けられる優遇措置【1号・2号別】
高度専門職ビザを取得するとさまざまな優遇措置が享受できます。1号と2号で重複するものもありますが、2号の方がより優遇されている項目もあります。
高度専門職1号(70点以上)の主な優遇措置
①複数の在留資格にまたがる活動(複合的な活動)の許可
就労ビザは本来、在留資格で許可されているひとつの活動しか行えませんが、高度専門職1号なら複数の在留資格にまたがる活動が可能です。例えば、研究活動をしながら関連事業の経営をするというような両立もできます。
②在留期間「5年」の一律付与
最長の在留期間である「5年」が一律で付与されます(期間満了後は更新も可能)。
③永住許可申請に必要な在留期間の短縮(70点以上で3年、80点以上で1年)
高度人材としての活動を引き続き行っている場合、永住許可申請に必要な在留期間が大幅に緩和されます。通常10年の要件が、ポイント70点以上で3年、80点以上で1年に短縮されます。
④配偶者の就労要件緩和
配偶者が一定の職種※で働く際は、配偶者自身も学歴・職歴要件を満たす必要がありますが、高度人材の配偶者はそれらの要件が免除される可能性があります。
※「教育」「技術・人文知識・国際業務」などに該当する活動
⑤一定要件下での親の帯同許可(世帯年収、子の養育等)
通常、就労ビザでは認められない親の帯同が、7歳未満の子を養育する場合など一定の条件下に限り、年収などいくつかの要件を満たすことで可能になります。
⑥一定要件下での家事使用人の帯同許可(世帯年収等)
一部の在留資格でしか認められない家事使用人の帯同が、年収その他いくつかの要件を満たすことで可能になります。
⑦出入国在留管理手続きの優先処理
ビザ申請などの審査が他の在留資格に優先して行われるため、早期に終わります。
高度専門職2号(1号で3年以上活動)の主な優遇措置
1.1号で認められた活動のほぼ全てが可能+就労資格の活動も可能
高度専門職1号で3年以上活動すると高度専門職2号の取得が可能になります。2号では1号よりも活動可能範囲が大幅に拡大し、一部資格除くほぼ全ての就労資格の活動が可能です。
2.在留期間が無期限に
在留期間に期限がなく、更新手続き不要で永続的な滞在が可能になります。
※永住権とは異なります。
3.1号の優遇措置③~⑦も引き続き適用
1号の優遇措置である永住申請の要件緩和や配偶者の就労、親・家事使用人の帯同、在留申請に係る優先処理は2号でも継続して適用されます。

高度専門職ビザ(在留資格)の申請手続きの流れ
申請パターンの確認(新規入国か、国内での変更・更新か)
高度専門職ビザの申請方法は、外国人材を海外から呼び寄せる場合と、国内で資格変更・更新する場合とで手順が異なります。
【海外から呼び寄せる場合】在留資格認定証明書交付申請の流れ
- ● Step1: ポイント計算と立証資料の準備
○ 事前計算で70点以上あることを確認のうえ、学歴証明などのポイント証明資料を収集します。
- ● Step2: 地方出入国在留管理局へ申請
○ 在留資格認定申請書・ポイント計算表・立証資料を受け入れ機関などが管轄局へ提出します。
- ● Step3: 審査・認定証明書交付
○ 入管の審査で許可が下りると認定証明書が交付されます。(※高度人材の在留申請は優先処理されるため、一般よりも早く進みます。)
- ● Step4: 本国でビザ(査証)申請・取得
○ 認定証明書を本人に送付し、現地の日本公館でビザ申請をします。
- ● Step5: 来日・上陸審査
○ ビザと認定証明書を持って来日し、上陸審査を経て在留カードを受領します。
【国内で変更・更新する場合】在留資格変更・期間更新許可申請の流れ
- ● Step1: ポイント計算と立証資料の準備
○ 海外から呼び寄せるケースと同様にポイント計算と立証資料を準備します。
- ● Step2: 地方出入国在留管理局へ申請
○ 申請する本人などが管轄局へ変更/更新申請書・ポイント計算表・立証資料を提出します。
- ● Step3: 審査・許可(在留カード交付)
○ 入管審査を経て(優先処理)、許可が下りた後に新在留カードが交付されます。
申請に必要な主な書類(申請書、ポイント計算表、立証資料など)
在留申請にはそれぞれの申請内容に応じた申請書様式を使用します。加えて、高度人材はポイント計算表とその加点項目を裏付ける証明書類が必要です。他にも証明写真、活動内容に応じた補足資料(雇用契約書、事業計画書など)を添付します。変更や更新で日本国内から申請する場合はパスポートと在留カード原本の提示も求められます。
企業が高度人材を採用するためのアプローチ
国内外の高度人材データベース・人材紹介サービスの活用
高度人材を採用したいのなら、外国人専門エージェントや海外ネットワークを持つ紹介会社の利用がおすすめです。
WEB求人媒体での専門職募集
高度人材は専門職が多いため、専門職向け、グローバル求人サイト、LinkedInなどのWEB媒体を活用するのも一つです。
自社採用サイトやリファラル採用によるダイレクトソーシング
自社の採用サイトを多言語対応にすれば、外国人向けに企業の魅力を発信して採用することも可能です。また、社員紹介制度(リファラル採用)を活用したダイレクトソーシングという方法もあります。
留学生向けキャリアイベント・合同説明会への参加
留学生向けキャリアイベントや企業合同説明会へ参加することで、国内上位大学の優秀な外国人留学生へ早期に接触できる可能性が高まります。
大学・研究機関との連携
大学や研究機関との共同研究を通じて、研究人材の発掘や連携を受けるのも効果的です。
高度人材受け入れにおける企業側のメリットと留意点
メリット:イノベーション創出、グローバル競争力強化、専門知識・技術の獲得
高度人材の受け入れにより、新規事業の開発や研究開発力の向上が進みます。海外市場への展開も加速し、グローバルな競争力が強化されるでしょう。また、社内における専門性の向上や多様な人材と一緒に働くことによる組織活性化も期待できます。
留意点:採用競争の激化、適切な処遇・評価制度の必要性、受け入れ環境整備
高い専門知識と技術を持つ高度人材の採用には、世界レベルでの熾烈な人材獲得競争を勝ち抜く必要があります。そのためには高度人材に見合う報酬と透明度の高い評価制度の構築、そして専門性を活かせる業務や権限の付与が不可欠です。あわせて、言語・文化・生活面においても万全のサポート体制を組み、他社との差別化を図りましょう。
まとめ:高度人材ポイント制を活用し、優秀な外国人材を確保するために
優秀な外国人誘致を考えるなら、高度人材ポイント制を活用しない手はないでしょう。ポイント制の仕組みと優遇措置を正しく理解し、活用に向けて検討してください。受け入れにあたっては企業側の採用戦略と受け入れ後の環境整備の両輪が必要です。制度の適切な活用で企業の成長を促進し、日本の国際競争力強化へ貢献することを期待します。
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