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技能実習制度の廃止はいつから?育成就労への変更点と企業の対策

技能実習制度の廃止が決定し、新たに「育成就労制度」が創設されることになりました。「具体的に何が変わるのか?」「受け入れ企業として何を準備すればよいのか?」など、多くの企業担当者様が具体的な情報を求めているのではないでしょうか。

本記事では、制度変更の背景となった3つの課題から、新制度の5つの重要なポイント、そして企業が取るべき具体的な対策までを分かりやすく解説しました。本記事を最後まで読むことで、制度変更へのスムーズな対応方法が明確になります。

CONTENTS

1. 技能実習制度が廃止された理由──これまで指摘されてきた3つの課題

制度の廃止という重大な決断に至った背景には、以下のような深刻な課題があったからです。

1.1 課題①:制度目的と実態のズレ

当初、技能実習制度は開発途上国への技術移転を通じた国際協力を目的としており、これは技能実習法第1条にも明記されています。しかし、実態としては日本の人手不足を補う「労働力確保」の手段として運用されるケースが多く、制度設計と運用の根本的なズレが様々な問題の温床となっていました。

1.2 課題②:人権・安全保障の観点からの問題

技能実習生には、転籍(転職)が原則認められないという制限があります。そのため、低賃金や劣悪な労働環境に置かれた実習生が逃げ出すしか選択肢がない状況が生まれ、ある年には年間9,000人以上の失踪者が報告されていました。これは社会的に見過ごせない問題でした。

1.3 課題③:国際的評価と批判の高まり

米国国務省が毎年発表する「人身取引報告書(Trafficking in Persons Report)」では、日本の技能実習制度が強制労働の一形態と長年にわたり指摘されてきました。国際社会からの信頼を損ねる事態に直面し、制度変更の要請が高まりました。

2. 技能実習制度廃止と育成就労制度開始のスケジュール

改正出入国管理・難民認定法が2024年6月に可決・成立したことで、技能実習制度に代わる新たな制度「育成就労制度」が導入されることが確定しました。その施行時期と、現在技能実習中の方々への扱いを解説します。

2.1 2027年までに段階的な移行が進行

2024年6月に成立した改正法により、育成就労制度は法の公布(6月21日)から3年以内に施行されることが法律上定められており、現時点では遅くとも2027年中、政府は2027年4月のスタートを目指しており、本格的な制度の移行が行われる見通しです。

この間、2025~26年にかけて具体的な制度設計のための政省令の整備や、受け入れ対象分野や管理体制などの詳細が策定される予定です。

2.2 現在の技能実習生には経過措置が適用される

新制度開始後も、施行時点で既に来日し技能実習中の方々は、旧制度の在留資格のまま、技能実習2号まで含めた在留を継続することが可能です。

さらに、制度施行前に技能実習計画の認定申請を行い、施行から3か月以内に実習が開始される予定の方についても、旧制度での入国および技能実習継続が認められるため、新制度の施行後もしばらくは技能実習生と育成就労制度利用者が併存する移行期間となります。

結果として、2027年〜2030年頃までが移行期間として想定されており、その最中に段階的に旧制度から新制度へ切り替わることになります。

このように2019年に制定された育成就労制度は、技能実習制度の目的と実態の乖離、人権問題、国際的評価からの見直しの流れを受け、2024年6月の改正法可決を経て、2027年までに実施される予定となっています。施行後も既に来日している技能実習生には旧制度での在留継続を認める経過措置が設けられるため、企業もなだらかな移行期間のなかで受け入れ準備と人材支援を計画できる状況です。

3. 新制度「育成就労制度」とは?技能実習制度との違いを5つのポイントで比較

技能実習制度が抱えていた問題を是正するために、政府は2027年までに「育成就労制度」への完全移行を進めています。ここでは、何がどう変わるのかを5つの観点から解説します。

3.1 目的の転換:「国際貢献」から「人材確保」へ

従来の技能実習制度は、建前上「開発途上国への技術移転」を目的としていましたが、実際には人手不足を補うための労働力確保が主な目的でした。新たな制度では、この現実に合わせて目的が明確に見直され、「国内での人材育成と確保」が制度の中核に据えられました。これにより、外国人材を単なる「実習生」ではなく、正面から「労働者」として受け入れる仕組みに変わります。

3.2 転籍(転職)が可能に:条件付きで自由度を拡大

技能実習では、原則として転職が認められておらず、職場環境に問題があっても逃れられない構造が問題視されてきました。育成就労制度では、一定の条件(1年以上の勤務、日本語と技能の試験合格など)を満たすことで、本人の希望による転職が可能になります。これにより、労働者の人権保護が強化されると同時に、企業側も「選ばれる職場」であることが求められるようになります。

3.3 対象分野の見直し:特定技能制度との連携強化

技能実習制度では、90以上の職種が対象でしたが、管理が煩雑で実態との乖離が生じていました。育成就労制度では、対象分野が「特定技能制度」と同じ産業分野(現在16分野)に絞られ、制度間の連携が強化されます。これにより、3年間の育成期間を経て、スムーズに「特定技能1号」への移行が可能になり、中長期的なキャリアパスが明確になります。

3.4 日本語要件の導入:一定のコミュニケーション力を前提に

技能実習制度では、日本語能力に明確な要件がありませんでした。一方、育成就労制度では、入国時に「日本語能力試験N5相当」、制度終了時には「N4相当」の合格が求められます。これにより、最低限のコミュニケーション能力が担保されるため、企業にとっても業務指導がしやすくなるという利点があります。

3.5 管理体制の厳格化:「監理支援機関」への転換

これまでの「監理団体」は、十分な監視・支援ができていないケースも多く、制度の形骸化が問題となっていました。育成就労制度では、これを「監理支援機関」に改め、中立性の確保や外部監査の導入など、運用面での信頼性が高まります。外国人労働者に対するサポートの質向上が期待され、企業側にもより高い倫理的責任が求められるようになります。

以上のように育成就労制度は、「実習生」ではなく「労働者」として外国人を受け入れる制度へと大きく舵を切るものです。転籍の自由、日本語能力の明確化、管理体制の厳格化など、制度全体が実態に即した内容へと刷新されており、企業にとっては 長期的な人材確保の可能性と同時に、より高い受け入れ準備の必要性が生じていることを意味します。

4. 育成就労制度が企業に与える影響:メリットと注意点

4.1 企業側の3つのメリット

① 長期雇用の実現

特定技能への移行がスムーズになるため、最長5年の技能実習制度を超えて定着する可能性が広がります。特定技能2号を取得すれば、在留延長や家族帯同も視野に入ります。

② 人材の質の担保

入国時に日本語能力(JLPT N5相当)や技能要件が設定されており、日本語コミュニケーション力のある人材を受け入れやすくなります。これにより指示の誤解が減り、教育の効率も向上します。

③ コンプライアンス体制の強化

管理体制の厳格化により「監理支援機関」が導入され、外部監査も義務化されます。これにより、適正な雇用環境の整備と、制度遵守を通じた社会的信用の向上が期待できます。

4.2 企業が注意すべき3つのポイント

① 人材流出リスクの顕在化

一定条件を満たせば転籍も可能なので、待遇や環境で魅力がなければ、育成した人材が他社に移る可能性があります。特に地方企業では対策が不可欠です。

② 受け入れコストの増加

渡航費用や送り出し機関への手数料を企業が負担する必要があるほか、日本語教育や在留サポートの準備など、初期コストと運用負担がこれまでより増加します。

③ 運用負荷の増大

育成計画の策定、育成進捗の記録、教育体制の構築、法令遵守対応などが必要となり、事務作業や体制整備の負担が増えることにも留意が必要です。

5. 制度変更に向けて企業が今から準備すべき3つのこと

制度導入を前に、企業として備えておくべきステップを以下にまとめました。

① 労働環境・待遇の再点検

転籍リスクに備え、給与、休暇、評価制度、コミュニケーションの質などを見直し、自社が「選ばれる職場」であることを目指しましょう。

② 日本語教育やキャリア支援体制の構築

日本語研修(eラーニングや教材提供)、学習費用補助などで語学力向上を支援し、キャリアパスを明確にし、定期的な面談によってモチベーション維持を図りましょう。

③ 信頼できる監理支援機関の選定

複数の機関を比較し、「実績」「対応力」「費用透明性」などを総合的に評価しましょう。制度の複雑化に対応できるパートナー選びは、導入後の安定運用に不可欠です。

これらの準備を進めることが、制度の恩恵を最大限に引き出し、外国人採用の成功と定着に直結します。

6. 技能実習制度の廃止に関する Q&A

6.1 Q1. 育成就労制度の在留期間は何年ですか?

A1. 原則として 3年間です。この期間は、特定技能1号相当の技能習得を目的とした育成期間となります。もし、期間内に特定技能移行のための試験に不合格の場合でも、最長1年までの在留延長が認められています。

6.2 Q2. 育成就労から特定技能への移行は容易になりますか?

A2. 移行の道筋は明確化されており、対象分野も特定技能制度と一致しています。ただし、移行には「特定技能評価試験」と「日本語能力試験(N4相当)」の合格が必要であり、試験に合格しない限り自動的には移行できません。

6.3 Q3. 転籍が可能になることで、人材の引き抜きは起きませんか?

A3. そのリスクは確かに存在します。制度では転籍が認められるようになりましたが、これまで以上に 魅力ある労働環境や待遇、評価制度の整備が不可欠になります。彼らが自発的に定着したいと思える職場づくりが重要です。

6.4 Q4. 受け入れ人数の上限は変わりますか?

A4. 現時点では確定していませんが、特定技能制度と同様に、人手不足の状況を踏まえて分野ごとに受け入れ上限が設定される予定です。これにより全体のバランスが図られる可能性があります。

6.5 Q5. 悪質なブローカー等に対する国の対策は進むのでしょうか?

A5. はい、対策は強化される見込みです。特に 不法就労助長罪による罰則が厳罰化され、さらに 監理支援機関とハローワークの連携による適正な雇用の支援体制も整備される予定です。

7. 制度変更への対応は“専門家への相談”が効果的です

育成就労制度は大きく制度設計が刷新されるため、企業ごとに最適な対応が変わります。業種、規模、現状の外国人採用状況などに応じた「個別戦略」が必要です。

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