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技能実習生(介護)とは?受入れ要件・育成法などを解説

深刻な人材不足に直面する介護業界において、「技能実習生」の受け入れは重要な選択肢の一つです。しかし、介護分野特有の要件や、適切な育成・支援方法について、不安や疑問を持つ事業者も多いのではないでしょうか。
この記事では、介護分野における技能実習制度の基本から、受け入れに必要な詳細な要件、準備プロセス、現場での指導ポイント、そして特定技能や介護福祉士へのキャリアパスまでを解説していますので今後の「育成就労」制度への移行も見据え、適切な受け入れと育成計画を策定しましょう。

CONTENTS

  1. 1.介護現場における技能実習制度の基本と現状
  2. 2.介護技能実習生を受け入れるための詳細要件
  3. 3.介護技能実習生の受け入れプロセス:準備から実習開始まで
  4. 4.介護現場での技能実習内容と指導・支援のポイント
  5. 5.介護技能実習生のキャリアパス:特定技能や介護福祉士への道
  6. 6.介護分野における技能実習制度の課題と今後の展望(育成就労)
  7. 7.【まとめ】介護技能実習制度の理解と適正な運用と将来への備えを

介護現場における技能実習制度の基本と現状

介護分野で技能実習制度が導入された背景と目的

介護分野で技能実習制度が導入された背景には、日本における介護人材不足という深刻な社会的課題があります。このような状況を受け、我が国では国際貢献としての技能移転を目的としつつ外国人材の受け入れを通じた人材確保の一環として、2017年に介護職種が技能実習の対象に追加しました。運営していくにあたり、さまざまな議論を呼んでいる技能実習制度ですが、本来は日本の介護現場で実習を行い技術や知識を身につけた実習生が帰国後に母国でその経験を生かすことを前提としています。



「技能実習生(介護)」の位置づけと役割

技能実習生(介護)は、技能実習計画に基づき、介護施設などで実践的な介護スキルを習得することを目的とした外国人材です。彼らは労働者として雇用されており、日本人同様に労働基準法や最低賃金法などの労働関連法令が適用されます。ただし、その位置づけは単なる労働力ではなく、「技能等を学ぶ実習生」としてのものであり、日本の介護技術や知識を計画的に学び、将来的には母国でその技能や経験を生かすことが嘱望されています。

介護分野で外国人材を雇用できる4資格

介護業界で外国人材を雇用できる在留資格は、以下の4種類です。

  • ● 在留資格「介護」
  • ● 特定活動(EPA介護福祉士)
  • ● 在留資格「技能実習」
  • ● 在留資格「特定技能1号」
介護分野の在留資格比較
介護分野の在留資格4種類の比較
在留資格「介護」 EPA(経済連携協定) 技能実習 特定技能1号
在留期間 なし 4年 5年 5年
必須資格 介護福祉士 なし なし なし
日本語能力 日本語能力試験N2 日本語能力試験N3程 日本語能力試験N4程度 日本語能力試験N4以上
外部機関との連携 なし 公益社団法人国際厚生
事業団 JICWELS
監理団体 登録支援機関(任意)
訪問サービス できる できない できない できない

在留資格「介護」

在留資格「介護」は、介護福祉士の養成専門学校に通う留学生を対象に、学校を卒業してから介護福祉士の資格を取得して就職することができます。
また、在留資格「技能実習」で入国してから、介護事業所で3年以上実務経験を積んだ後、介護福祉士の国家試験に合格することで在留資格を得ることができます。

特定活動(EPA介護福祉士)

EPA(経済連携協定)を締結した国「インドネシア、フィリピン、ベトナム」から、日本の介護業界で就職できる在留資格です。
取得条件として看護学校の卒業資格や、本国での介護士資格などが必要になります。入国後、4年目までに介護福祉士の国家試験に合格すれば、在留資格「介護」に移行して在留制限なく介護業界で働くことができます。介護福祉士の試験が不合格の場合は帰国することになります。

在留資格「技能実習」

日本で学んだ介護の知識や技術を、帰国してから役立てることを目的とした在留資格です。
日本に入国してから介護の講習を受けた後、監理団体を通して、介護施設などで実習を受けるようになります。
技能実習1号、2号、3号があり、それぞれ在留期間が1年、2年、2年となっています。

在留資格「特定技能1号」

人手不足の産業分野12業種を対象に外国人に付与される在留資格です。就労期間は最長5年で、日本語能力N4以上と介護実技試験の合格が条件となります。
技能実習生やEPA介護福祉士候補者とは違って、特定技能は、一人夜勤や服薬介助の業務に従事できます。


介護分野での技能実習生の受け入れ状況

近年、介護分野における外国人技能実習生の受け入れ状況は急速に拡大しています。

「外国人雇用状況」の届出状況のまとめによれば、2024年(令和6年)10月末時点で、医療、福祉のうち社会保険・社会福祉・介護事業で働く外国人労働者は85,537人と発表されており、介護士として働くことができる在留資格をもつ外国人の人数は以下のようになっています。


  • ● 特定活動(EPA介護福祉士):11,610人(2023年6月末時点)
  • ● 在留資格「介護」 8,093人:(2023年6月末時点)
  • ● 在留資格「技能実習」:15,011人(2022年6月末時点)
  • ● 在留資格「特定技能」:44,367人(2024年12月末時点)




また、出入国在留管理庁による特定技能制度運用状況(令和6年12月末)(PDF : 953KB)によれば、国別に見るとベトナム、インドネシア、フィリピン、ミャンマーが上位国で、特にベトナムとインドネシアからの受け入れが多くなっています。


技能実習生の区分(1号・2号・3号)と介護分野での在留期間

介護分野における技能実習生は、技能実習制度の3つの区分(1号・2号・3号)に従い、最長5年間の在留が可能です。

  • ● 技能実習1号(1年目):入国時に日本語能力試験N4相当の合格が求められます。
  • ● 技能実習2号(2〜3年目):実技と学科の技能評価試験に合格する必要があります。
  • ● 技能実習3号(4〜5年目):2号修了後、さらに実技試験に合格し、受け入れ施設も所定の基準を満たすことが求められます。

介護技能実習生を受け入れるための詳細要件

【技能実習生側】満たすべき要件

介護分野の技能実習生が受け入れられるためには、以下の要件を満たす必要があります。


1. 日本語能力要件

  • ● 入国時(1年目):日本語能力試験N4相当以上が求められます。N4は「基本的な日本語を理解することができる」レベルです。

  • ● 2号移行時(2年目):N3相当の日本語能力が必要です。N3は「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」レベルとされています。

介護業務では利用者とのコミュニケーションが重要であり、適切な日本語能力が求められます。


2. 職務経験や学習経験

母国での介護関連業務経験や養成コース修了が要件となる場合があります。具体的には、高齢者や障がい者の介護施設での従事経験や看護課程の修了、看護師資格の取得などが該当します 。


3. 健康状態や年齢などの基本要件

  • ● 年齢:原則として18歳以上であり、その他各国や監理団体の基準を満たす必要があります。

  • ● 健康状態:介護業務に耐えうる心身の健康状態が求められます。

これらの要件は、実習生が安全かつ効果的に業務を遂行するために重要とされるポイントです。

【受け入れ企業(実習実施者)側】満たすべき要件

介護分野で技能実習生を受け入れる企業(実習実施者)には、以下の要件が求められます。

1. 対象施設・事業所の範囲

受け入れ対象となるのは、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、グループホーム、デイサービスなどの入所・通所系介護保険サービス事業所です。訪問介護や訪問入浴などの訪問系サービスは、適切な指導体制の確保が困難であるため受け入れ対象外となっています 。

2. 実習指導員・生活指導員の配置義務と要件

● 実習指導員:技能実習生5名につき1名以上の実習指導員を配置する必要があります。そのうち1名以上は、介護福祉士の資格を有する者、または看護師などの同等以上の専門的知識と技術を有すると認められる者でなければなりません 。

● 生活指導員:実習生の生活面の相談役として、生活指導員を配置する必要があります。具体的な資格要件は示されていませんが、実習生の生活支援に関する経験や知識が求められます。


3. 受け入れ可能な人数の上限

受け入れ可能な技能実習生の人数は、事業所の常勤介護職員の総数に応じて設定されています。例えば、常勤介護職員が1名の場合、受け入れ可能人数は1名となります。常勤介護職員が301名以上の場合、受け入れ可能人数は常勤介護職員の20分の1となります 。


4. 経営状況や労働保険・社会保険への加入状況

受け入れ事業所は、安定した経営を行っていることが求められます。また、労働保険や社会保険への適正な加入が必要です。これにより、実習生の労働条件や福利厚生が適切に保障されます。


5. 技能実習計画の作成能力

受け入れ事業所は、モデル計画等を参考にしつつ、実習生一人ひとりに合わせた個別具体的な技能実習計画を作成する能力が求められます。これにより、実習生が計画的に技能を習得できる環境が整備されます。

これらの要件を満たすことで、介護分野での技能実習生の受け入れが可能となります。

監理団体の要件(介護分野での実績等)

介護分野で技能実習生を受け入れるための監理団体には、以下の要件が求められます。

介護職種の監理団体として認められる法人形態は、商工会議所、商工会、中小企業団体、職業訓練法人、公益社団法人、公益財団法人などです。これらの法人は、実習実施者が組合員または会員であることが条件となります。また、介護、医療、社会福祉の発展に寄与することを目的とする全国的な団体も対象となります 。


監理団体は、介護福祉士や看護師など、介護分野で5年以上の実務経験を有する専門職を配置し、技能実習計画の作成や指導を行う必要があります。また、過去3年間の初級および専門級・上級の介護技能実習評価試験の合格率など、実績に基づく評価が求められます 。


これらの要件を満たす監理団体は、介護職種の技能実習を適切に実施する体制が整っていると認められます。




介護技能実習生の受け入れプロセス:準備から実習開始まで

主に団体監理型を想定した流れについて解説します。


Step1: 信頼できる監理団体の選定と加入

介護分野の実績、サポート体制、費用等を比較検討し、監理団体を選定・加入する。


Step2: 求人申込みと候補者の選考(面接等)

監理団体を通じて送出機関へ求人提出、候補者の募集・選抜。書類選考や面接(現地/オンライン)による適性確認(日本語、意欲等)を行う。


Step3: 技能実習計画の作成と認定申請(OTITへ)

内定者に基づき個別技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)へ計画認定を申請する。


Step4: 在留資格関連手続き(入管へ)

計画認定後、入管へ在留資格認定証明書を申請し交付後、本人へ送付し現地でビザ(査証)申請を行う。


Step5: 実習生の入国前後の講習(日本語、介護導入等)

入国前後で以下の講習を実施する。


入国前講習:送出機関による日本語・介護基礎

入国後講習:監理団体等による法定講習:日本語、生活、法的保護、介護導入


Step6: 配属と介護現場での技能実習開始

講習修了後、企業(施設)へ配属、技能実習計画に沿ったOJTを実施する。




介護現場での技能実習内容と指導・支援のポイント

ここで、介護現場における技能実習内容と指導や支援のポイントについてみていきましょう。

技能実習計画に基づくOJT(具体的な介護業務内容)

技能実習計画に基づくOJTでは、食事・入浴・排泄介助などの身体介護、生活援助、レクリエーション支援、記録作成などを行い、段階的に介護スキルを習得できるよう計画的に指導します。

技能実習指導員の役割と効果的な指導方法

技能実習指導員は、介護技術の直接指導や安全管理、実習日誌の確認を行い、手本を示しながら分かりやすく丁寧な指導とフィードバックを行うことが求められます。

生活指導員の役割と生活面でのサポート(住居、相談対応)

生活指導員は、技能実習生に対し日本での生活ルールや習慣を指導し、健康管理や日常生活の悩みに対応します。また、住居の整備や地域との関係づくりを支援し、安心して暮らせる環境を整える役割を担います。

日本語能力向上のための継続的な支援

日本語能力を向上させるには、介護現場で使われる専門用語や適切なコミュニケーション方法の継続的な指導が重要です。あわせて、日本語学習の機会や教材情報を提供し、実習生の学習意欲を維持できるような配慮も求められます。

メンタルヘルスケアと異文化理解の促進

技能実習生が安心して働けるよう、慣れない環境でのストレスを軽減する取り組みや、悩みを相談しやすい雰囲気づくりが重要です。また、文化の違いを理解し尊重する意識を職場全体で共有し、異文化共生の環境づくりを進めることが求められます。



介護技能実習生のキャリアパス:特定技能や介護福祉士への道

技能実習から「特定技能(介護)」への移行プロセス

介護技能実習を修了した外国人労働者には、キャリアの選択肢として「特定技能(介護)」に移行する道があります。移行にあたっては、技能実習2号を「良好に修了」していることが条件で、これにより特定技能評価試験(介護技能・日本語)が免除されるという大きなメリットがあります。ただし、別途「介護日本語評価試験」への合格が必要な点には注意が必要です。特定技能に移行すると、在留期間が通算で最長5年に延長され、同一分野内での転職も可能になります。


技能実習ルートでの「介護福祉士」国家資格取得について

技能実習を経て、介護福祉士の国家資格を目指すことは、実習生にとって重要なキャリアパスの一つと言えるでしょう。介護福祉士の受験には、「実務経験3年以上」かつ「実務者研修(450時間)の修了」が必要であり、技能実習の期間もこの実務経験に含めることができます。実務者研修では、介護過程や認知症ケア、医療的ケアなど専門的な内容を学びますが、費用や受講時間の確保には企業の支援が欠かせません。介護福祉士資格取得後は、「介護」の在留資格へ変更でき、在留期間の更新上限がなくなり永続的な就労が可能になります。さらに、家族の帯同も認められ、訪問介護など従事できる業務範囲も広がるため、安定した生活基盤の構築にもつながります。


介護分野における技能実習制度の課題と今後の展望(育成就労)

介護現場特有の課題(コミュニケーション、夜勤、精神的負担など)

介護現場では、利用者の心身状況に応じた高度なコミュニケーションが求められます。また、夜勤業務は身体的・精神的負担が大きく、適応支援が必要です。さらに、看取りなど精神的に負荷の高い場面も多く、実習生へのメンタルケアや支援体制の充実が重要となります。


技能実習制度全体が抱える問題点と介護分野への影響

技能実習制度は低賃金や長時間労働、人権侵害といった問題を抱えており、介護分野でも同様のリスクが存在します。制度の本来の目的である技能移転と、現実の労働力確保の間に乖離(かいり)が生じているため、実習生の待遇改善や適正な運用が求められています。これにより介護分野での技能実習の質の向上が課題となっています。


新制度「育成就労」への移行と介護分野への影響予測

育成就労制度は、技能実習制度に代わる新たな在留資格制度であり、2025年3月時点で施行時期は未定ですが、介護分野への影響が注目されています。この制度は、人材育成と確保を両立させることを目的とし、実習生の人権保護を強化する点が特徴です。特に転籍制限の緩和により、介護人材の流動性が高まり、より良い労働条件を求めての転職が増加し、業界内での人材移動が活発化すると予測されます。これにより受け入れ企業には、単なる人材確保だけでなく、計画的な人材育成やキャリア支援の強化、そして魅力ある職場環境の整備が一層求められます。持続可能な介護人材の確保・育成のため、新制度への対応が不可欠となるでしょう。




【まとめ】介護技能実習制度の理解と適正な運用と将来への備えを

介護分野における技能実習生の受け入れは人材確保の重要な手段ですが、制度の正しい理解と適正な運用が不可欠です。実習生の権利保護や育成、キャリア形成支援に配慮し、法令遵守と良好なコミュニケーションを図ることが求められます。また、働きやすい環境づくりに取り組むことで、実習生が安心して技能を習得できる体制を整える必要があります。さらに、今後導入が予定される育成就労制度への円滑な移行を見据え、制度の変化に柔軟に対応できる準備と体制構築が重要となるでしょう。


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