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特定技能「農業」完全ガイド|最新情報・要件などを解説

農業分野における人手不足は深刻化しており、その解決策として「特定技能」制度への関心が高まっています。特に農業分野は派遣が認められるなど独自の側面を持ち、技能実習制度との違いを理解することが重要です。
本記事では、特定技能「農業」の基本的な仕組みから、対象となる業務内容(耕種・畜産)、1号・2号の取得要件、派遣を含む受入企業の基準(最新の雇用経験要件緩和も解説)、採用プロセスまで、専門家の視点で網羅的に解説します。

CONTENTS

  1. 1. 特定技能「農業」とは? 制度概要と農業分野の現状
  2. 2. 【農業分野の特長】派遣での受け入れは可能?雇用形態を解説
  3. 3. 特定技能「農業」で従事可能な業務内容と注意点
  4. 4. 外国人材が特定技能「農業」資格を取得するための要件
  5. 5. 受入企業(農家・農業法人・JA等)が満たすべき基準
  6. 6. 特定技能「農業」2号とは?要件とメリット
  7. 7. 採用プロセスと想定される費用
  8. 8. 採用後の定着支援:長く活躍してもらうために
  9. 9. 【まとめ】特定技能「農業」活用のポイントと専門家への相談

1. 特定技能「農業」とは? 制度概要と農業分野の現状

1. 農業分野の現状

農業分野における労働力不足は、農林水産省の統計からも明らかです。例えば、農林水産省が発表した基幹的農業従事者(普段仕事として自営農業をしている人)の統計を見ると、農業従事者の平均年齢は65歳を超えており、人手不足や労働力の高齢化の深刻さを物語っています。


出典:農林水産省 「農業労働力に関する統計」基幹的農業労働者(個人経営体)

その労働力不足を補うため、農業分野での外国人材の受け入れが増加の一途を辿っています。


出典:農業分野における外国人材の受け入れ

過去、農業分野での外国人労働者の大部分を占めていた技能実習生は、技能実習制度がそもそも“日本で習得した技術を母国に持ち帰り、その国の経済発展に役立てる”という「国際貢献」を目的として創設された制度であることから、農繁期などの一時的な人手不足を補うために「期間限定で働いてもらう」という働き方はできません。また、従事できる業務にも制限があり、外国人労働者との直接雇用契約だけではなく、必ず監理団体を通さなければならない点も事業者にとっては手間がかかる要因となります。
そのため、近年、特定技能制度を利用した特定技能外国人の受け入れが急増しています。

2. 特定技能制度の背景

特定技能制度とは、日本における労働力不足を解消するために創設された在留資格の一つです。この制度は、2019年4月に施行され、特に労働力が不足している業種に対して、一定の技能や知識を有する外国人を受け入れることを可能にしました。農業分野もその受け入れ対象に含まれています。

3. 特定技能1号と2号の基本的な違い

特定技能制度は、「特定技能1号」と「特定技能2号」に分かれます。それぞれの特徴は以下の通りです。



図表のように、特定技能1号は、外国人労働者が日本で働くための在留資格で、最長5年間の就業が可能です。この期間内に家族の帯同は認められず、就業中は支援を受ける必要があります。また、1号の資格は比較的低い技能レベルを持つ労働者が対象で、労働力不足を補う目的で導入されています。逆に、特定技能2号は、より高度な技能を持つ労働者向けで、就業期間の制限がなく、更新も無制限です。2号では家族の帯同が認められ、自己管理で働くことが求められます。2号は専門性の高い職種に対応しており、外国人労働者が長期的に日本で活躍できる道を開くことを目的としています。

4. 技能実習制度との違い

特定技能制度と技能実習制度の大きな違いは、その目的と位置づけにあります。

技能実習制度:本来は、発展途上国の技能向上を目的とした「国際貢献型」の制度です。外国人が日本で技能を習得し、帰国後にその技能を生かすことを求められます。そのため、技能実習生は労働者としての役割も果たしますが、教育的な側面が強いです。

特定技能制度:労働力不足の解消を目的としており、外国人労働者は日本で働くことを前提に就業します。特定技能は、短期的な労働力補填だけでなく、一定の技能を有する労働者の受け入れを目指しています。

5. 育成就労制度への移行

育成就労制度は、技能実習生が日本で習得した技術や知識を元に、特定技能制度へ移行し、長期的に日本で働けるようにする仕組みです。この制度により、技能実習生は一定の技術を身につけた後、特定技能1号や2号に移行して、より安定した労働条件や職業選択の自由が得られます。

2. 【農業分野の特長】派遣での受け入れは可能?雇用形態を解説

農業分野における派遣の受け入れについて

1. 農業分野で派遣が認められている理由

農業分野では、季節ごとの生産量の変動や繁忙期、閑散期による労働力の需要が大きく異なります。そのため、農業分野における派遣は、柔軟に対応できる労働力の確保手段として認められています。例えば、収穫期などの繁忙期には多くの人手が必要ですが、閑散期にはそれほど多くの労働力を必要としないため、派遣を活用することで、必要な時に必要な分だけ労働力を確保することが可能になります。

2. 派遣形態のスキーム

  • ● 派遣元(派遣事業者): 労働者の雇用契約を結び、労働者に対する給与や福利厚生を管理します。派遣元は、農業事業者に対して労働者を派遣します。

  • ● 派遣先(農業事業者): 農業分野での実際の業務指示を出し、作業の監督を行います。派遣先は労働者に対して指示を出し、業務内容を管理します。

  • ● 外国人労働者: 派遣元との契約で農業事業者で働きます。給与や福利厚生の管理は派遣元が行い、業務指示は派遣先が行います。

3. 労働者派遣事業者(派遣元)となるための要件

農業分野で派遣事業を行うためには、派遣元となる事業者がいくつかの要件を満たす必要があります。


  • ● 農業関連事業者であること 派遣事業者は農業に関連する事業を行っていることが求められます。これにより、農業分野に特化した労働力派遣が行えるようになります。

  • ● 協議会への加入 農業に関する派遣事業を運営するためには、農業協議会(または農業支援団体)に加入している必要があります。これにより、農業分野特有の問題に対応できる体制が整います。

  • ● 労働者派遣事業の許可取得 派遣元としての業務を行うには、労働者派遣事業の許可を取得する必要があります。これは厚生労働省からの認可を得ることが求められます。

4. JA(農業協同組合)が派遣事業者になる場合の注意点

JAが派遣事業者となる場合、以下の注意点があります。


  • ● 純資産要件 JAが派遣事業を行うには、一定の純資産を保有している必要があります。これにより、財務基盤が安定していることを証明し、事業運営の信頼性を確保します。

  • ● 労働者派遣事業の許可 JAも、一般の派遣事業者と同様に、労働者派遣事業の許可を取得しなければなりません。これは、派遣先である農業事業者との契約に基づき、適切な労働条件を提供するために必要です。

5. 直接雇用と派遣雇用のメリット・デメリット比較


項目 直接雇用 派遣雇用
柔軟性 労働力の調整が難しく、繁忙期の対応に時間がかかる。 季節的な需要に応じて柔軟に労働力を確保可能。
労働者の管理 事業者が直接管理・指導する。 指揮命令系統が複雑(派遣元との調整が必要)。
コスト 長期的には安定するが、コストが高くなることも。 派遣元への手数料がかかるためコストが増加。
労働条件 労働契約で詳細に定められる。 派遣元が労働条件を管理。
長期的安定性 労働者との信頼関係が築きやすい。 労働者が短期間で入れ替わる可能性が高い。
法的義務 労働契約法に基づく責任がある。 派遣法に基づく責任を負う。

農業分野での派遣雇用は、繁忙期や季節ごとの需要に対応するための有効な手段です。ただし、派遣形態の雇用契約では、直接雇用に比べて労働力の管理が複雑でコストがかかる場合があります。農業事業者が派遣事業者としての要件を満たすことが前提となり、特にJAなどの農業関連団体が派遣事業を行う場合は、財務基盤や許可取得などの規制を遵守する必要があります。



3. 特定技能「農業」で従事可能な業務内容と注意点

特定技能「農業」で従事可能な業務内容と注意点

1. 主たる業務①:耕種農業全般

特定技能「農業」で従事する主たる業務の一つは「耕種農業全般」です。具体的には、以下の業務が含まれます。

施設園芸:温室やビニールハウスなどで、野菜や花などを栽培する業務。例えば、苗の植え付け、温度管理、湿度調整、収穫など。

畑作・野菜栽培:畑での作物栽培に関わる業務。例として、種まき、育苗、施肥、収穫、収穫後の処理(選別、袋詰めなど)など。

果樹栽培:果物を育てるための栽培管理。剪定(枝の整理)、果実の収穫、施肥、病害虫の管理など。

これらの業務では、農作物が適切に育つように管理する「栽培管理」が重要な職務です。特定技能「農業」の外国人労働者は、これらの栽培業務を実施する際に、日本の農業技術や方法に基づいて作業を行います。

2. 主たる業務②:畜産農業全般

特定技能「農業」のもう一つの主たる業務は「畜産農業全般」で、これには以下の業務が含まれます。

養豚:豚の飼育・管理。具体的には、豚の給餌、体調管理、健康チェック、環境管理(温度や湿度の調整)、清掃作業など。

養鶏:鶏の飼育・管理。卵の採取、鶏の給餌、健康管理、鶏舎の清掃など。

酪農:牛を飼育し、乳製品を生産する業務。主な業務は搾乳、飼育管理、乳牛の健康管理、飼料の管理、牛舎の清掃など。

これらの業務では、「飼養管理」が求められます。飼料や水の管理、家畜の健康状態のチェック、適切な飼育環境の維持など、動物の健康を維持するための重要な役割を担います。

3. 関連業務として認められる作業例

特定技能「農業」の外国人労働者が従事できる関連業務には、次のような作業が含まれます。

農畜産物の製造・加工:収穫した作物や生産物を、加工施設で製造・加工する業務(例:野菜の加工、乳製品の製造)。

運搬:農作物や畜産物の運搬業務。畑から倉庫、または出荷先へ移動する作業など。

販売:直売所や市場などで、農畜産物の販売に従事することも含まれます。

冬場の除雪:冬期に農作業ができない時期に、農業施設周辺の除雪作業を行うことがあります。

これらの関連業務は、メイン業務(栽培管理や飼養管理)に付随する作業として位置付けられます。したがって、関連業務だけで主に従事することはできません。

4. 業務遂行上の必須ルールと注意点

農業分野の特定技能に従事する場合、業務内容や規則を守ることが大切です。

栽培管理」または「飼養管理」への従事義務:
特定技能「農業」の外国人労働者は、必ず「栽培管理」または「飼養管理」の業務に従事する義務があります。これは、農業の技能や知識を身につけるために必須の業務であり、これを省略した業務への従事は認められません。

耕種・畜産の兼務は原則不可:
特定技能「農業」において、耕種農業と畜産農業を兼務することは原則として認められていません。ただし、例外として、農業経営が複合的なものであり、農業事業者が両方の業務を一括して管理し、日本人従業員も兼務している場合など、状況に応じて例外的に認められる場合があります。

関連業務はあくまで付随的であること:
農業分野においては、関連業務(製造・加工、運搬、販売など)は付随的な業務として認められます。これらの作業は、主たる業務(栽培管理・飼養管理)を補完するものであり、メイン業務として従事することはできません。

養蜂業、きのこ栽培、GPセンターなど、個別ケースの判断基準:
養蜂業(蜂蜜の生産)やきのこ栽培、または農業法人の管理センター(GPセンター)での業務は、特定技能「農業」の対象業務に含まれるかどうかは個別の判断に基づきます。これらは通常の農業作業とは異なるため、個別に農林水産省や労働局への確認が必要となります。

特定技能「農業」で従事する外国人労働者は、耕種農業や畜産農業を中心に、栽培管理や飼養管理を担うことが求められます。また、関連業務はあくまで補助的な作業として位置付けられ、主たる業務をしっかりとこなす必要があります。農林水産省や厚生労働省が発行する「特定技能農業分野の受け入れガイドライン」や、農業協同組合の手引きなどを参考に、正しい理解を持って業務に取り組みましょう。



4. 外国人材が特定技能「農業」資格を取得するための要件

外国人材が特定技能「農業」資格を取得するための要件

特定技能「農業」資格を取得するためには、主に以下の2つのルートがあります。どちらのルートを選んでも、一定の要件を満たす必要があります。

1. 資格取得の2つのルート

ルート①:試験合格
ルート②:技能実習2号(良好)修了からの移行

これらのルートを通じて、外国人は特定技能「農業」の資格を取得することができます。以下に、それぞれのルートの詳細と要件について説明します。

2. ルート①:試験合格

特定技能「農業」の資格を取得するための最初の方法は、農業技能測定試験に合格することです。この試験は、耕種農業と畜産農業の2つの分野に分かれて実施されており、それぞれで異なる試験が行われます。


2.1 農業技能測定試験
  • ● 試験分野

    • ○ 栽培農業:畑作物(野菜、果樹、作物栽培)に関する知識と技能が試されます。

    • ○ 畜産農業:養豚、養鶏、酪農などの動物飼育に関する知識と技能が問われます。

  • ● 試験内容
    • 試験は実技(作業に基づいた評価)と筆記試験(農業に関する知識を測る)で構成されています。実技は基本的な農業技術、作業の流れ、注意点などを学び、実際の作業環境で試験を受けます。

  • ● 合格基準
    • 試験の合格基準は、70%以上の得点が目安とされています。合格者には、特定技能「農業」資格が付与され、農業分野で働くための在留資格が与えられます。

2.2 日本語能力試験(JLPT)

特定技能「農業」を取得するには、日本語能力試験(JLPT)またはJFT-Basicで一定の日本語能力を証明する必要があり、JLPT N4レベル以上または、JFT-Basic A2レベル以上の日本語能力が求められます。これは、日常会話や業務に必要な基本的な日本語を理解し、使いこなせる能力を意味します。

2.3 試験実施団体と日程確認

農業技能測定試験は、全国農業会議所が実施しています。最新の日程や詳細な情報については、以下の方法で確認できます。

  • ● 公式サイトの確認
    • 全国農業会議所の公式ウェブサイトでは、試験日程や場所、申込方法などが公開されています。

  • ● 学習用テキストの入手
    • 農業技能測定試験のための教材や問題集は、全国農業会議所のオンラインショップや主要な書店で入手可能です。

3. ルート②:技能実習2号(良好)修了からの移行

もう一つのルートは、技能実習2号(良好)修了を経て特定技能に移行する方法です。この場合、技能実習制度を経て、日本の農業分野での技術を一定期間学んだ外国人が、特定技能に移行できます。


3.1 移行可能な技能実習の職種・作業名

特定技能「農業」に移行できる技能実習の職種・作業は以下の通りです。農業関連の2つの職種における6つの作業が対象です。

職種1:耕種農業
作業例:野菜栽培、果樹栽培、作物栽培、温室栽培など

職種2:畜産農業
作業例:養豚、養鶏、酪農など

これらの職種に従事した後、特定技能へ移行することができます。


3.2 「良好に修了」とは

技能実習2号を「良好に修了」とは、以下の基準を満たす状態を指します。

実習期間中に良好な成績を収める:上司の評価、作業技能、勤務態度、職場でのコミュニケーション能力などが良好であること。

日本での滞在に問題がない:在留資格に関して、違法な滞在歴や犯罪歴がなく、滞在中にトラブルがないこと。

実習生が「良好に修了」した場合、特定技能「農業」への移行が可能となります。


3.3 試験免除のメリットと業務区分一致の重要性

試験免除のメリット:技能実習を通じて、すでに農業の技術を学んでいるため、農業技能測定試験の免除が可能です。

業務区分の一致:技能実習で行っていた作業内容が、特定技能における業務区分(耕種または畜産)と一致している必要があります。例えば、技能実習で「養豚」に従事していた場合、特定技能でも畜産分野で働くことが求められます。

4. 全ての特定技能外国人に共通する基準

特定技能「農業」を取得するためには、以下の基準を満たす必要があります。

年齢:18歳以上であること。

健康状態:特定技能外国人は、健康診断を受け、健康に問題がないことが求められます。重大な健康問題がある場合は、資格取得が認められません。

退去強制歴がないこと:過去に日本で退去強制や不法滞在などの問題があった場合、特定技能資格の取得は難しくなります。



5.受入企業(農家・農業法人・JA等)が満たすべき基準

受入企業(農家・農業法人・JA等)が満たすべき基準

特定技能「農業」の外国人労働者を受け入れるためには、企業が一定の基準を満たす必要があります。以下に、受け入れ企業が遵守すべき要件について詳しく説明します。

1. 全分野共通の受入機関(特定技能所属機関)基準

1.1 適切な雇用契約

受け入れ企業は、外国人労働者と適切な雇用契約を結ぶ必要があります。この契約には以下の点が求められます。

同等以上の報酬:日本人労働者と同じ条件で、最低賃金を守ることが求められます。

労働条件の明示:労働時間、休暇、給与、業務内容など、明確に労働条件を示し、外国人労働者に理解させる必要があります。


1.2 企業の適格性

企業は法令を遵守している必要があります。特に、以下の要件を満たしていることが求められます。

法令遵守:労働基準法や雇用契約に関する法律を遵守すること。

欠格事由非該当:過去に不正行為(不法滞在の斡旋、賃金未払い、労働基準違反など)がないこと。


1.3 外国人支援体制

外国人労働者が日本で安心して働けるように、企業は外国人支援体制を整える必要があります。支援計画は10項目にわたる具体的な支援内容を含んでおり、以下のいずれかの方法で実施されます。

自社支援:企業自身が支援体制を整える。

登録支援機関への委託:企業が、外国人支援の専門機関に支援業務を委託することも可能です。

2. 農業分野特有の受入基準

農業分野で特定技能外国人を受け入れる企業には、農業特有の基準も存在します。これらをしっかりと理解し、準備を整える必要があります。


2.1 農業特定技能協議会への加入

農業分野における受け入れ機関は、農業特定技能協議会への加入が義務付けられています。協議会への加入により、企業は最新の法令や支援情報を得ることができ、外国人労働者の受け入れに関するサポートが受けられます。

申請方法:農業特定技能協議会への加入申請は、協議会の公式ウェブサイトまたは所定の申込フォームから行います。

会費無料:農業特定技能協議会への加入に関して、会費は無料であるため、経済的な負担はありません。


2.2 【直接雇用の場合】労働者の雇用経験要件

農業分野で特定技能外国人を直接雇用する場合、企業には以下の雇用経験要件が課せられています。

原則:過去5年以内に、1人の労働者を6ヶ月以上継続して雇用した経験が必要です。この雇用経験には、アルバイトや技能実習生、日本人労働者も含まれますが、複数人の累積では認められません。


2.3 【雇用経験要件の緩和措置】

雇用経験の要件に関しては、一定の緩和措置があります。過去5年以内に、労務管理に関する業務に6ヶ月以上継続して従事した場合でも、特定技能外国人を受け入れることができます。この場合、複数人の労働者を対象にした累積や合算が可能です。

労務管理経験:労務管理とは、労働者の給与や勤務条件の管理、労働環境の改善、就業契約の管理など、労働者の働く環境を整える業務を指します。

上記の通り、特定技能「農業」の外国人労働者を受け入れるための企業基準は、法令遵守や労働契約の適正化に加えて、農業特有の支援体制や雇用経験要件が求められます。企業は、農業特定技能協議会に加入し、外国人労働者の受け入れに向けて準備を整え、適切な支援を提供することが求められます。
また、労働者の雇用経験に関しては、過去の雇用歴や労務管理経験に基づいて、企業が必要な要件を満たすことが大切です。企業がこれらの要件を理解し、しっかりと実施することが、特定技能外国人の受け入れを成功させるための鍵となります。

6. 特定技能「農業」2号とは?要件とメリット

特定技能「農業」2号とは?要件とメリット

特定技能2号は、特定技能1号の外国人労働者が一定の要件を満たすことで、ステップアップできる在留資格です。これにより、農業分野での熟練した技能を持つ外国人労働者が、より長期的に日本で活躍できるようになります。以下に、特定技能2号の要件やメリット、企業にとっての意義について詳しく説明します。

1. 2号への移行に必要な要件

特定技能1号から特定技能2号に移行するためには、農業分野の特定技能2号試験に合格し、一定の実務経験を積む必要があります。


1.1 農業分野の特定技能2号試験合格

2号への移行には、まず、農業分野における特定技能2号試験に合格する必要があります。試験は、農業の高度な技術や知識を問う内容で、1号からさらに進んだ業務を遂行できることを証明するものです。


1.2 実務経験

試験合格に加えて、実務経験が求められます。具体的には以下の2つの要件が設定されています。

管理者レベル2年以上の経験:農業の現場でリーダーシップを発揮し、管理業務に従事した経験が2年以上あること。

現場経験3年以上:農業の現場での実務経験が3年以上あること。この場合、管理職でなくとも、現場作業を行いながら十分な技能を身に付けていることが重要です。

これらの実務経験を通じて、農業の専門技術を深く理解し、実務を指導できるレベルに達することが求められます。

2. 2号取得のメリット

特定技能2号に移行することには、外国人労働者と受け入れ企業の両方にとって、いくつかの重要なメリットがあります。


2.1 在留期間の上限撤廃(無期限就労の可能性)

特定技能2号に移行すると、在留期間に上限がなくなります。これにより、外国人労働者は無期限で日本に滞在し、働き続けることが可能になります。これは、長期的に日本で生活し、キャリアを築く上で大きなメリットです。


2.2 家族帯同が可能

特定技能2号を取得すれば、一定の条件を満たすことで、家族の帯同が許可されます。これにより、外国人労働者が家族と共に日本で生活できるようになり、安定した生活基盤を築くことができます。


2.3 キャリアアップ

2号は、特定技能1号に比べて高度な技能が求められるため、キャリアアップの機会が広がります。特定技能2号に移行することで、より高い賃金を得ることが可能となり、将来的には日本での定住や自営業の開業など、新たな選択肢が広がります。

3. 企業にとって2号人材を育成・活用する意義

特定技能2号の外国人労働者を受け入れ、育成することには企業にとっても多くのメリットがあります。


3.1 熟練人材の確保

特定技能2号は、実務経験を積んだ熟練の外国人労働者を企業に提供することができます。これにより、農業分野での熟練技能を持つ人材を確保することができ、安定した生産体制を支えることができます。


3.2 現場リーダーの育成

特定技能2号に移行する外国人労働者は、管理者レベルの技能を有しているため、現場リーダーとして活躍できる人材です。農業分野では、現場での指導・監督が求められることが多いため、2号の外国人労働者が現場リーダーを務めることで、労働力の効率的な管理が可能になります。

3.3 長期的な雇用関係の確立

特定技能2号の外国人労働者は無期限に働けるため、長期的な雇用関係を結ぶことができます。これにより、企業は人材の流動性を減らし、人手不足の解消や生産性の向上を図ることができます。

このように、特定技能2号は、特定技能1号からのステップアップであり、農業分野の熟練技能を持つ人材として、より高度な業務を遂行できるようになります。2号に移行することで、外国人労働者は無期限で日本に滞在し、家族の帯同が可能となり、キャリアアップのチャンスも得られます。
企業にとっては、特定技能2号の外国人労働者を活用することで、熟練人材の確保や現場リーダーの育成が可能になり、長期的な雇用関係を築くことができます。農業分野での人手不足解消に向けて、特定技能2号は非常に重要な役割を果たします。



7. 採用プロセスと想定される費用

特定技能「農業」採用プロセスと想定される費用

特定技能「農業」の外国人労働者を採用する際には、いくつかの段階を経て、適切な手続きと準備を行う必要があります。また、その過程で発生する費用についても、事前に把握しておくことが重要です。以下に、採用から就労開始までの流れと、関連する費用項目を概算で示します。

1. 採用決定から就労開始までの基本的なステップ

採用のプロセスは、以下のように進行します。全体的には、6〜8段階に分かれますが、企業の状況や手続きのスムーズさにより若干前後する場合があります。

1.1 募集

最初のステップは、外国人労働者の募集です。企業は、自社のニーズに合った人材を確保するために、人材紹介会社や求人サイトを利用することが一般的です。

1.2 選考

選考では、面接やスキルチェックが行われ、候補者の能力や適性を確認します。特定技能2号を希望する場合は、特定技能2号試験合格者を選定する必要があります。

1.3 契約

選考を通過した外国人労働者と雇用契約を結びます。契約内容には、労働条件や給与、業務内容、福利厚生などが明記されます。

1.4 支援計画作成

外国人労働者に対して、支援計画を作成します。支援計画には、生活支援や日本語教育、相談窓口などが含まれます。支援内容を明確にしておくことが求められます。

1.5 在留資格申請

雇用契約と支援計画が整ったら、在留資格申請を行います。特定技能1号の場合、申請には一定の書類や証明が必要となります。

1.6 入国準備

在留資格が認められた後、入国準備を行います。これには、ビザ取得や渡航手配が含まれます。また、事前に住居を確保する必要もあります。

1.7 入国

外国人労働者が日本に入国します。入国後には、住居の準備や必要な手続き(健康保険、税金関連など)を行います。

1.8 入社

すべての準備が整い次第、入社となります。入社後は、企業内でのオリエンテーションや業務の引き継ぎが行われます。

2. 主な費用項目とその目安

採用に伴い、以下のような費用が発生します。費用はケースバイケースで異なるため、目安として参考にしてください。

2.1 人材紹介手数料

人材紹介会社に依頼する場合、紹介手数料が発生します。手数料は、年収の20~30%程度が一般的です。たとえば、年収300万円の場合、手数料は60万〜90万円程度となります。

2.2 在留資格申請費用

在留資格の申請費用は、法務省に対する申請費用として発生します。申請料は、数千円〜数万円程度で、具体的には申請内容や地域によって異なることがあります。

2.3 渡航費

渡航費は、外国人労働者が日本に入国するための航空券代です。往復で10万円〜20万円程度が目安ですが、地域によってはもっと高くなることがあります。

2.4 登録支援機関への委託費

外国人労働者の支援計画を作成・実行するために、登録支援機関に委託する場合があります。委託費用は、月額5万円〜10万円程度が一般的です。また、支援内容によっては追加費用がかかる場合があります。

2.5 初期の住居費

外国人労働者が日本に来る際の住居費は、事前に準備する必要があります。一般的には、敷金・礼金や初期の家賃が発生します。住居費は月額5万円〜10万円程度が目安です。

2.6 日本語教育費用

日本語能力が不十分な場合、日本語学校に通うことになります。費用は、1ヶ月あたり5万円〜10万円程度です。企業がサポートする場合、この費用がかかることもあります。

2.7 その他の手続き費用

その他、健康診断費用や交通費、保険加入費用(社会保険など)などが発生する場合もあります。これらを合計すると、数万円〜十数万円程度の追加費用がかかることがあります。

3. コストを抑えるための工夫やポイント

費用を抑えるために、以下の点を工夫すると良いでしょう。

3.1 人材紹介手数料を抑える方法

直接募集:人材紹介を利用せず、自社で求人を出すことで手数料を節約できます。これには、求人サイトやSNSなどを活用する方法があります。

紹介手数料の交渉:人材紹介会社との契約時に、手数料を交渉して、少しでもコストを抑える方法を検討します。

3.2 支援機関の選定

コストパフォーマンスの良い支援機関を選定することで、委託費用を削減できます。複数の機関から見積もりを取るのも良い手段です。

3.3 住居の確保を効率化

シェアハウスや、社員寮の利用を検討することで、住居費用を抑えることができます。特に初期の住居費用は大きな出費になるため、工夫が必要です。

3.4 日本語教育の最適化

オンライン日本語学習など、低価格で学べる方法を活用することで、教育費用を抑えることができます。



8. 採用後の定着支援:長く活躍してもらうために

長く活躍してもらうための採用後の定着支援

特定技能「農業」の外国人労働者を長期間にわたって活躍させるためには、採用後の支援体制が不可欠です。農業分野では季節や天候の影響を受けるため、外国人労働者が日本で長く働き続けるためには、環境面やコミュニケーション面、キャリア支援など、さまざまな取り組みが必要です。以下、定着支援の具体的な取り組みとそのポイントを解説します。

1. 農業分野ならではの配慮点

1.1 季節変動に応じた柔軟な働き方の相談

農業分野では、季節変動や作業の繁閑差が大きいため、労働者の働き方が安定しにくいことがあります。例えば、収穫期や植え付け期には多くの労働力が必要になりますが、閑散期には仕事が少なくなるため、働き方に柔軟性を持たせることが求められます。そのため、繁忙期と閑散期に合わせた勤務時間調整を行うことで長期間働けるようなシフトを組んだり、繁忙期に労働時間の延長や休日出勤が必要になった際は適切な休養日や調整日を提供し、働きやすい環境を整えることが重要です。

1.2 住環境の確保・サポートの重要性

特に外国人労働者にとって、住環境の安定は大きなポイントです。生活基盤が不安定だと、仕事への集中度も下がります。そのため快適な住居の提供や、家賃補助を支給することで、住環境に対する不安を解消し、住居探しが困難な場合は農業法人が社員寮やシェアハウスを提供する方法もあります。

2. 円滑なコミュニケーションのための工夫

外国人労働者と円滑にコミュニケーションをとることは、長期的な定着にとって非常に重要です。言葉の壁や文化の違いがある中で、相手を理解し、信頼関係を築くことが求められます。

2.1 やさしい日本語の使用

日本語が得意でない外国人労働者には、やさしい日本語を使って話しかけ、理解しやすい言葉で指示を出すように心がけます。また、文章やマニュアルは、簡単な言葉や図解を交えて説明することで作業の理解度を高めます。

2.2 定期的な面談

定期的な面談を設けることで、問題点や悩みを早期に把握できます。面談は、単に業務の進捗を確認するだけでなく、外国人労働者が抱える生活面や文化的な悩みを聞く場にもなります。長期的に活躍してもらうにはこうした面談を通じて、彼らの不安やストレスを軽減し、安心感を提供することが大切です。

2.3 相談しやすい雰囲気づくり

開かれたコミュニケーションを促進するために、相談窓口を設け、社員が気軽に相談できる環境を作ることが大切です。職場内のリーダーや先輩社員がサポート役となり、外国人労働者が困ったときにすぐに相談できる関係を築きましょう。

3. キャリアパスの提示やスキルアップ支援によるモチベーション維持

3.1 キャリアパスの提示

外国人労働者に対して、将来のキャリアビジョンを明確に示すことは、モチベーションの維持につながります。特に、農業分野でのキャリアアップは、重要なポイントとなります。

特定技能2号への移行や、現場リーダーとしての成長の機会を提示し、キャリアの幅を広げ、また、農業技術やマネジメントスキルの習得をサポートし、将来的には独立支援や農業経営に進む道も提供すると良いでしょう。

3.2 スキルアップ支援

スキルを高めることで仕事に対する自信がつき、長期的に働く意欲を増進しましょう。例えば、研修や教育プログラムを提供し農業に必要な専門技術を学べる環境を整えたり、日本語の学習支援を通じて業務上のスムーズなコミュニケーションを図ると良いでしょう。日本語能力の向上は、生活や仕事全般の自信にもつながります。

4. 地域社会への橋渡し、孤立防止の取り組み

外国人労働者が地域社会に溶け込み、孤立しないような取り組みも非常に重要です。

4.1 地域社会との連携

地域のイベントや交流活動に参加することを奨励し、外国人労働者が地域住民と関わる機会を増やしましょう。また、地域住民と積極的なコミュニケーションを図るのも良いでしょう。

4.2 孤立防止の取り組み

定期的なサポートを行い、外国人労働者が孤立しないよう配慮します。特に、初めての日本生活で不安を感じることが多い外国人にとっては、孤独感が大きな問題です。例えば、社会的なつながりを作るための場を提供する(例えば、社内の交流イベントや食事会、文化交流会)ことで孤立感を軽減できるでしょう。

9. 【まとめ】特定技能「農業」活用のポイントと専門家への相談

特定技能「農業」の導入メリットは、労働力確保や季節変動への対応が可能となる点と言えるでしょう。特に繁忙期に必要な労働力を柔軟に確保でき、派遣形態での雇用も可能な点は非常に魅力的です。一方で、業務には制限があり、耕種農業や畜産農業など従事できる作業が決まっているため、業務範囲に注意が必要です。また、受入要件として、農業特定技能協議会への加入や、雇用経験要件などが求められるため、企業側には準備が必要です。
例えば、外国人材の選定から在留資格の申請、支援計画の作成、さらには農業特定技能協議会への加入など、多くのステップがあります。これらの手続きは、法律や制度に精通していないと難易度が高く、誤った手続きを行うと後々問題が生じる可能性もあります。

業務範囲の把握や契約内容の正確性を確認するためには、詳細な知識が必要です。特に技能実習生からの移行や特定技能2号へのステップアップの際の要件をクリアするには慎重な対応が求められますので、専門家の支援があると安心でしょう。



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