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アジア諸国はハイコンテクスト文化と言われるが…
キャリアアドバイザー伊能あやめの見聞録Case37

生活関連

2025.06.25

20XX年。
少子&超高齢社会を迎えた日本。
国内企業は、人材不足解消のため外国人材の活用に活路を見出していることだろう。

しかし、外国人材の活用については、労働環境の整備や異文化理解・コミュニケーションなど、課題であふれている。

果たして、企業が外国人労働者から選ばれるには?

本コラムは、外国人材の背景にある“異文化”への理解の第一歩として読んでいただきたいノンフィクションストーリーです。

キャリアアドバイザー伊能あやめの見聞録Case37
失踪が少ないのは国民性?技能実習生の失踪を防ぐには

私、伊能あやめは、日本で働きたいと願うひとりでも多くの海外の方に、負担のないクリーンな就職環境を提供できるよう日々、さまざまな業務にあたっている。

日頃は外国人材を雇用する企業や雇用される外国人の皆さんをサポートするキャリアアドバイザーとして、メンバーとともに全国各地で起こる珍事を紐解き、解決しているのだが(これまでの「青山智香の解明」はこちら)、現在、弊社ではベトナム、インドネシアなど外国人材市場の開拓にも力を入れており、海外での業務も増えてきた。

今回は、ラオス出張に際して、見聞き、体験した記録を紹介していきたいと思う。

ハイコンテクスト文化って知ってる?

皆さんはハイコンテクスト(=high context)文化についてご存じだろうか。コンテクストとは、文脈、背景、状況などを指す言葉であり、ハイコンテクスト文化とは、言葉以外の要素(文脈・空気・非言語的なサインなど)に強く依存するコミュニケーションが特徴の文化を指す。中でも日本はトップレベルのハイコンテクスト文化で、察することや非言語的な表現が重視される。言葉は控えめで沈黙や曖昧な表現にも意味があるといわれている。以下に、ハイコンテクスト文化の特徴をまとめてみよう。

【ハイコンテクスト文化の特徴】

特徴 説明
言葉が少なくても通じる 共有された価値観・背景知識が多いため、詳細に説明しなくても伝わる
「察する」ことが重要 相手の意図や気持ちを言葉に頼らず、読み取ることが期待される
曖昧な表現が多い 明言を避ける傾向があり、「空気を読む」ことが重視される
非言語コミュニケーションが多用される 表情、沈黙、間(ま)、声のトーンなどで意味を伝える
集団や関係性を重視 長期的な人間関係や役割、立場がコミュニケーションに影響する


アジア諸国はハイコンテクスト文化と言われるが、例えば日本や韓国、中国、インドネシアなどはその典型だ。“ハイ(high)”コンテクスト文化があるのとは対照的に“ロー(low)”コンテクスト文化もある。

【ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化の比較】

ハイコンテクスト文化 ローコンテクスト文化
情報伝達 背景や暗黙の了解に依存 明確で直接的な言葉で伝える
コミュニケーション 間接的・曖昧
含みを持たせる
直接的・率直
重要な要素 文脈・人間関係・非言語(その場の空気、立場など) 言語・事実・論理(証拠)
日本、韓国、中国、中東諸国など アメリカ、ドイツ、オーストラリア、北欧など


日本語は、状況によって意味が変わる言葉が多い。例えば一口に「足」と言っても「ももから足首まで(leg)」を指す場合もあれば「足首から下(foot)」を指す場合もある。また、日本語には同音異義語が多く存在し「あし」には「足」や「脚」「芦」などがあり、文脈なしでは意味を特定しにくい。このような曖昧さや多義性が、言外の情報に頼るハイコンテクストなコミュニケーションを支えていると考えられる。

逆に、英語には日本語における「見る」という視覚動詞について「see」「look」「watch」と、それぞれ意味や使い方に明確な違いがある。日本人にとっては、それ(「見る」という動作)を、状況や文脈で正確な意味を判断しようとする。

このように、ハイコンテクスト文化におけるコミュニケーションは、共通の価値観や長期的な人間関係が前提となっており、特にローコンテクスト文化圏の人々とのコミュニケーションで誤解が生じやすい。

ここで、誤解が生じてしまうシーンを例を挙げてみてみよう。



【CASE1. 学校にて】

先生
来週の授業は自習にします。でも、出欠は取りませんので各自、時間になったら自習を始めてください。念のため復唱しますが『来週の出欠は取りません』ので。

—ハイコンテクスト文化の学生の受け取り方
先生は授業を自習にする上に、出欠を取らないと言った。教室に来ても来なくても一緒ということだから、自宅で勉強しよう。

—ローコンテクスト文化の学生の受け取り方
先生は授業には来れないようだ。だから出欠を取ることもできない。時間になったら教室で静かに自習してよう。

【CASE2. 職場の仲間内にて】

Aさん
仕事も終わったし、今から飲みに行かない?

Bさん
………すみません。今日は用事があるのでまた今度行きましょう。

Aさん
わかった。またね!

—Aさんの受け取り方について/ハイコンテクスト文化の場合
本音は行きたくないので「用事がある」と遠回しに断られたのかもしれない。その気があれば、今度はBさんから誘ってくれるだろうから自分から誘うのはいったんやめよう。

—Aさんの受け取り方について/ローコンテクスト文化の場合
今日は用事があるようだから、また日を改めて誘ってみよう。

ハイコンテクストな意味で捉えれば、学校の例は「出欠を取らない」ということは暗に翌週の授業は休みであると伝えている。体裁上、授業は休みと言いづらいので「出欠を取らない」という言い方をしていると考えられる。同様に、飲み(食事)の誘いについてはBさんは実は最初から行くつもりがなく、相手の気分を害さないようやんわりと断ったと考えられる。要するに、本音と建前を前提とした“察する文化”ならではのコミュニケーションなのだ。



もちろん、常に本音と建前があるわけではなく、言葉通りの意味合いで意思疎通を図っている場合もある。ただそれが、あくまでも個人の感覚であることから体系化しづらく、会話の際に想像していることが違うとすれ違いが起きやすくなる。

外国人雇用を始める際によく注意点として挙げることだが

・基本的に会話はゆっくりと行うこと
・平易な単語を使い、曖昧な表現を避け、難しい言い回しに気をつけること(文章が難しい場合は箇条書きでもOK)
・時間がかかっても細かく丁寧に話し、相手に正確な意味を伝えようとする姿勢

が肝要だ。

語彙数の過多の弊害

さて、前置きが長くなったがコンテクストの観点から見ても、各国の言語は地域によって大きな差がある。

今回、私はラオスを訪問し、送り出し機関の方にお話を伺って、そもそも語彙数が少ないことを知った。日本語はおおよそ4.5-5万語の語彙を持っているが、ラオスは2万語程度とのこと(正確な数値は計測されていないが、タイ語やミャンマー語と同じタイ・カダ語族に属する言語でありタイ語の語彙数から推測して2万語程度と想定される)。さらに、識字率が低い(男性73.5% 女性47.9%/2010年頃のデータによる)こともあり、日本語を教える際にラオス語に近い言葉や表現を選んで説明する必要があるため、雇用の際はそうした点に配慮が必要なのだそうだ。

ただ、実際に雇用するとなるとコミュニケーション面だけでなく本人の人柄(国民性)も重視したいところだろう。



日頃、コミュニケーションを取っている皆さんの情報によれば、ラオスの人々は温厚で内向的な性格の人が多く、仕事面においては冒険するよりもひとつの会社で長く安定的に働きたいという意識が強いそうだ。また、前述したように言語面の課題や母国の主要産業が農業のため、高度な技術や複雑な作業を求められる現場への適応は難しい可能性がある。一方で、離職率の高い職場や、まじめに継続して勤務してくれる人材を求める企業にとっては、非常に相性の良い人材とも考えられる。

さらに、不正行為や失踪といった問題が極めて少ない。実際に、弊社でのラオス人実習生の失踪件数は現在までにゼロである。ほかの送り出し機関でも同様の傾向が報告されており、非常に信頼性の高い人材層といえる。

今後、安定した人材確保を考える企業にとってラオス人技能実習生は有力な選択肢となりそうだ。




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