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失踪が少ないのは国民性?技能実習生の失踪を防ぐには
キャリアアドバイザー伊能あやめの見聞録Case36

生活関連

2025.06.18

20XX年。
少子&超高齢社会を迎えた日本。
国内企業は、人材不足解消のため外国人材の活用に活路を見出していることだろう。

しかし、外国人材の活用については、労働環境の整備や異文化理解・コミュニケーションなど、課題であふれている。

果たして、企業が外国人労働者から選ばれるには?

本コラムは、外国人材の背景にある“異文化”への理解の第一歩として読んでいただきたいノンフィクションストーリーです。

キャリアアドバイザー伊能あやめの見聞録Case36
失踪が少ないのは国民性?技能実習生の失踪を防ぐには

私、伊能あやめは、日本で働きたいと願うひとりでも多くの海外の方に、負担のないクリーンな就職環境を提供できるよう日々、さまざまな業務にあたっている。

日頃は外国人材を雇用する企業や雇用される外国人の皆さんをサポートするキャリアアドバイザーとして、メンバーとともに全国各地で起こる珍事を紐解き、解決しているのだが(これまでの「青山智香の解明」はこちら)、現在、弊社ではベトナム、インドネシアなど外国人材市場の開拓にも力を入れており、海外での業務も増えてきた。

今回は、特別編。ラオス出張に際して、見聞き、体験した記録を紹介していきたいと思う。

育成就労制度と技能実習制度

技能実習制度が育成就労制度に変わろうとしていることは皆さんもご存じだろう。現行の技能実習制度は2027年以降は育成就労制度と併存し、徐々に育成就労制度への移行が進む予定。今後3年間の移行期間を経て、2030年までに廃止されるとされている。

ではなぜ、技能実習制度が問題視されているかというと、本制度は本来、外国人労働者の受け入れを通じて技術や知識を習得させることを目的としているのだが、過酷な労働環境や低賃金、長時間労働、労働条件の不透明さ、総じて実習生に対し教育的な目的が達成されていないケースが多数報告されているからだ。
要するに、技能実習生らを単なる労働力として搾取する事例や制度が不正に利用され、技能実習生が失踪する事態が多発しているため制度改革が急務となっているというわけだ。

ここで一度、技能実習制度と育成就労制度の違いについて概要をまとめてみる。

【育成就労制度と技能実習制度の比較】

育成就労制度 技能実習制度
目的 我が国における人材確保・人材育成 国際貢献・途上国への技術継承
受入れ可能な職種 特定技能と同じ職種 (16分野)と幅広い 90職種(165作業)
在留期間 基本3年 1号が1年/2号が2年/3号が2年(通算5年間)
転籍 同一企業で1年以上働いた後なら可能※分野により2年。その他、諸条件あり 原則不可
支援体制 外国人技能実習機構を改編、 外部監査人が入る監理支援機関などが介入する 外国人技能実習機構、国際人材協力機構、監理団体との連携にとどまる
特定技能への移行 移行分野・職種が一致+試験に合格すれば可 移行分野・職種が一致しなければ不可
民間の職業紹介業者の介入 当分認めない方針 可能


現状、制度移行準備期間のため細部は決定していないものの、技能実習制度で問題とされていた部分は改善しそうな制度設計となっている。



一方で、雇用企業においては以下のような問題が挙げられている。

【育成就労制度移行により想定される企業の負担】

・費用負担の増加:外国人材にかかる渡航費用や日本語教育費用が企業の負担となり、年間50~100万円のコスト増加が予想される。

・受入職種の制限:職種が16分野に限定され、多くの業界で人材確保が困難になる可能性がある。

・人材流出リスク:転籍条件が緩和され、特に地方企業や低給与企業で人材流出のリスクが増加する。

・日本語教育支援の負担:企業は外国人材の日本語教育支援を義務付けられ、学習環境整備や進捗管理に新たな負担が発生する。



実際、制度上の問題はあるのだが私たちが外国人雇用の現場で見聞き、経験してきた感覚でいえば、雇用上の問題はその人それぞれの人となり、性格、国民性に起因するものが多い。もちろん、劣悪な労働環境により技能実習生が失踪するという話もあるが、労働者本人が何を目的に働いているかや性格(国民性)によるところが大きい。本メディアはそうした意味でも、国ごとのタブーや珍事を取り上げ啓蒙活動に取り組んできた。

前置きが長くなってしまったが、今回はタイとベトナムに挟まれたラオスの人々について触れていきたい。

離職者が多い企業におすすめしたいラオスの技能実習生

ラオスは東南アジアに位置し、タイ、ベトナム、カンボジア、中国、ミャンマーと隣接した内陸国。豊かな自然環境を誇り、メコン川が国を貫流。人口は約700万人で、仏教が主な宗教だ。経済は農業を中心に成長しており、観光が盛んである。



ラオスからの技能実習生は、主に農業、建設業、製造業などで働く若者が多いようだ。ラオスは農業が国の中心産業で、農村部からの移住者が増加しているが、都市部でも若い世代が技能実習生として日本に来るケースが増えている。一人当たりGDPは2022年の統計で2088ドル。ミャンマー、カンボジアに次いでASEAN10カ国の中で下から3番目。ただ、生活実態として悲惨な感じというよりは、のんびりとした田舎生活を送る人々といった印象だ。

これは、ラオスの送り出し機関の方に聞いた話だが、ラオスの人々は元来、温厚で内気な子が多く「もっと稼ごう」といった欲のない国民性。冒険心も低く、同じ会社で長く働きたいと考えるTHE安定思考の実習生が多いらしい。

ただし、大半の人々が農業従事者ということで、難しい作業のある現場(企業)での雇用は難しいが、転職率が高い企業や、熱心に働いてくれる人を探している企業には、ラオス人技能実習生をおすすめしたいところなのだとか。タイとベトナムに挟まれた国であるものの、国民性はタイに近いということだった。

実際、ミャンマーやベトナムなど他国に比べてネックになることがほとんどない(例えばミャンマーだと国の情勢により入国困難な状況になることが時々ある)。また、横のつながりが強く悪さや失踪といった事案もない(実際、弊社でも失踪は現在までで0)。他、送り出し機関の話でもラオス人失踪はほとんどないとのことで、今後の人材確保の参考になればと思う。

以上、特別編「ラオス見聞録」でした!



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団塊の世代にあたる800万人全員が後期高齢者となる「2025年問題」を目前にした今、超高齢化社会で人材不足大国となる日本で、企業が目指すべきは「外国人活用」だ。外国人の労働環境やコミュニケーションの壁を克服し、企業の成長へと導くための方法を伝授する。

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