海外人材Times

外国人労働者の雇用・採用WEBメディア

検索
海外人材Times

注文を取りに来てくれない店員さんは意地悪?
キャリアアドバイザー伊能ゆりなの見聞録Case12

生活関連

2025.01.01

20XX年。
少子&超高齢社会を迎えた日本。
国内企業は、人材不足解消のため外国人材の活用に活路を見出していることだろう。

しかし、外国人材の活用については、労働環境の整備や異文化理解・コミュニケーションなど、課題であふれている。

果たして、企業が外国人労働者から選ばれるには?

本コラムは、外国人材の背景にある“異文化”への理解の第一歩として読んでいただきたいノンフィクションストーリーです。

キャリアアドバイザー伊能ゆりなの見聞録Case12
注文を取りに来てくれない店員さんは意地悪?

私、伊能ゆりなは、日本で働きたいと願うひとりでも多くの海外の方に、負担のないクリーンな就職環境を提供できるよう日々、さまざまな業務にあたっている。

日頃は外国人材を雇用する企業や雇用される外国人の皆さんをサポートするキャリアアドバイザーとして、メンバーとともに全国各地で起こる珍事を紐解き、解決しているのだが(これまでの「青山智香の解明」はこちら)、現在、弊社ではベトナム、インドネシアなど外国人材市場の開拓にも力を入れており、海外での業務も増えてきた。 今回は、ベトナム出張に際して、見聞き、体験した記録を紹介していきたいと思う。

店員さんに無視された?!

ついに、ベトナムに来て1週間が経った。黄色い壁の家々やカラフルなランタンが飾られた街並みにもすっかり慣れてきた頃、弊社他部署の松下さんがベトナム入りするとの情報が入り「せっかくなのでお茶でも」という予定が組まれていた。



真夏の昼下がり。ちょうど私たちの商談が終わったタイミングで松下さんから『無事に着いた』との連絡があったため各々、現地集合でカフェに向かうことにした。指定したカフェは、レトロな雰囲気で2階席からダナンの街並みが見下ろせる、私のお気に入りに店だ。

ランチタイムからティータイムへと移行した店内は、人々が立ち去った形跡だけが残り静まり返っている。こちらのカフェは比較的、午後の時間帯は落ち着いていて、ちょっと仕事をするのにも良い。



「お待たせしましたー!」

少し道が混んでいて松下さんと待ち合わせた時間より20分ほど遅れての到着となった。

カチャカチャカチャ…………。

静まり返った店の中央で、こちらに気づいた松下さんが手を挙げてくれた。さらに奥のキッチンではお店のスタッフさんがせわしなく洗い物などをする姿が見え、2階からは人々の足音や笑い声が響き、独りぼっちでいかにもビジネスマン然としたスーツ姿の松下さんの異質さが際立っている。



「松下さん、その格好、暑いでしょう?」

「いやあ、本当に…。ネクタイをしてないだけマシですが東京に負けず劣らずこちらもめちゃくちゃ暑いですねー」

「こんなに暑いんじゃあ、もう、昼間っからビールいきたくなりますよね(笑)」

あはは…。

それとなく会話を続ける私たち。松下さんが机上を占領していたパソコンや書類をどけると、何もないテーブルが表れた。

「あれ、松下さん。喉も乾いているでしょうに…何も頼まれてないんですか?」

「いやあ、それがいくら待っても店員さんが注文を取りに来てくれなくて。声はかけたつもりだけど…。忙しいのかなあと思ったけど、私の存在が薄かったりして。ははは!」

「あら、そうじゃないですよ。お店にもよると思うんで一概には言えないんですけどね。そしたらベトナムコーヒーでいいですか?せっかくだから経験として飲んでみるといいですよ。独特な味わいなのでね」

そう前置きをして、私はキッチンに向かった。

注文を取りに来てくれない店員さんは意地悪なの?

「ありがとうございます…、なんかすみません」

席に戻ると松下さんが申し訳なさそうな顔をしている。

そういえば、松下さんは初めてのベトナムだと聞いている。もしかしたら海外旅行などもあまり行かれないのかもしれない。

「いえいえ、とんでもない!こういうのってカルチャーショックですよね。私も『もしかして、意地悪されてるのかな?』って思ったこともあります。まあ、それはヨーロッパ、アメリカとかに行ったときの話ですが…」

「なるほど、私は海外旅行もしませんし、今回のベトナム出張のためにパスポートを作りました」

「ベトナム…というより海外は日本と違って、ちゃんと主張しないと注文を取りに来てくれる、お水やお茶を出してくれる…ことはないと思っていた方がいいです。日本は空気を読むことが一種の美徳というか『言わなくても伝わるでしょう』っていう、暗黙の了解がありますよね。でも、海外じゃそれは通用しない。片言でもいい、ボディーランゲージを使ってもいい。オーバーなぐらい、きちんと主張するのが大事です。恥ずかしいなんて言ってたら居ないも同然。もちろん、彼らは無視してるつもりはないでしょうけど(笑)」

「そうかー!勉強になります。主張をするって大事ですね」

「ええ。なんか、主張っていうとオーバーな感じもしますが、とにかく『こうしたい』『こうがいい』って伝えようとする姿勢があれば、親切に応えてくれます。松下さんは3日間いらっしゃるんでしたっけ?ぜひ、ここからの数日、がんばってみてください!」



熱弁をふるっていると、キッチンにいたスタッフさんがやってきた。スーツとアロハシャツが議論を交わす様子が物珍しかったのか、ニヤッと笑い、注文したコーヒーを配膳してくれた。私たちの前をふわっと甘い香りが通り過ぎ、小皿に入ったクッキーがテーブルの真ん中に置かれた。

「…Service!」

「わ、ありがとうございますー!」

立ち去る店員さんに顔を向けると、OK(いいのよ)というように手をひらひらさせ、足早にキッチンへと戻って行く背中が見えた。



『外国人材を競争力に変える法-日本企業が外国人から「選ばれる力」を持つために』 2024年6月25日より順次発売(ダイヤモンド社)
こちらのサイトにて予約受付中
団塊の世代にあたる800万人全員が後期高齢者となる「2025年問題」を目前にした今、超高齢化社会で人材不足大国となる日本で、企業が目指すべきは「外国人活用」だ。外国人の労働環境やコミュニケーションの壁を克服し、企業の成長へと導くための方法を伝授する。

外国人採用に関するオンライン無料相談やってます!

  • 雇用が初めてなのですが、私たちの業務で採用ができますか?
  • 外国人雇用の際に通訳を用意する必要はありますか?
  • 採用する際に私たちの業務だとどのビザになりますか?
  • 外国人の採用で期待できる効果はなんですか?

上記に当てはまる企業様は、ぜひ一度ご相談ください。

× 教えてタイムスくんバナー画像